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図書館・情報学関連の雑記、読書ノート、音楽ノート、日常生活の愚痴など。

第三の場を公立図書館で、あるいは書架併設の多目的空間

2014-08-08 15:22:14 | 読書ノート
猪谷千香『つながる図書館:コミュニティの核をめざす試み』ちくま新書, 筑摩書房, 2014.

  日本国内の先進的な図書館の取組みのレポート。武蔵野プレイス、千代田図書館、小布施町まちとしょテラソ、鳥取県立図書館、神奈川県立図書館、伊万里市民図書館、武雄市図書館、船橋市や島根県海士町のマイクロライブラリーなどが紹介されている。そのほか指定管理者をめぐって図書館流通センター(TRC)に取材したり、電子図書館の動向なども伝えてくれる。旧来のイメージとは異なる、新しい図書館像を接することができる優れた著作である。

  紹介されている図書館の方向性は大ざっぱにいって三つ分けられる。一応「無料貸本屋批判を受けて課題解決型図書館が目指された」というストーリーがベースとしてあるが、ビジネス支援や調査研究支援に通常より多く資源配分する図書館の例として挙げられているのは上記の二つの県立図書館であり、鳥取は成功例として、神奈川は理解を得られなかった例としてである。千代田図書館もこの系統に入れることができるだろう。一方、伊万里市民図書館は人的資本を充実させた正統派の公立図書館のように見える。これら以外の事例は「ついでに本もある住民の人的交流の場」が目指されているようであり、ケースによっては「域外からの集客」への色気もあるというものである。

  個人的には、三つ目の「つながりの場」としての事例の方が興味深かった。アンニョリの言う「知の広場」(参考)やオルデンバーグの「サードプレイス」(参考)が基本コンセプトになるのだろうか。ただ、そういう場所がアメニティの良さだけで上手く維持できるとも思えないから、ファシリテーター的役割をこなす人物の関与は必要になるだろう。だが、そういう人にどのような知識やスキルが必要なのかよく分からない(人脈か?)。また、運営側は地域に人材が現れてボランティア的に施設に貢献してくれるのと考えているのだろうか。あるいはクリエイティブな交流は不要であり、カフェ的なたまり場というささやかな目標でよいのか。
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