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映像ではこの本の魅力は伝わらない、たぶん

2011-11-14 23:01:12 | 読書ノート
マイケル・ルイス『マネー・ボール:奇跡のチームをつくった男』中山宥訳, ランダムハウス講談社, 2004.

  あるメジャーリーグ球団のゼネラル・マネージャーをした男の伝記。ゼネラル・マネージャー(略してGM)とは、メジャーリーグにおいては現場の監督とは別に、チーム構成や選手の獲得を行う業務である。日本のプロ野球界にも1990年代からそのようなポストが浸透しはじめ、現在では定着した観がある。

  この本の主人公、オークランド・アスレチックスのGMをしていたビリー・ビーンは、費用対効果を考えたチーム編成を究めることで、貧乏球団でもシーズンを勝ち抜けることを証明した人物として描かれている。彼は、従来の経験と勘に基づいた選手獲得を旧弊として、統計にもとづいた評価を導入する。しかも、勝利に貢献するデータのみを重視し、打点や本塁打の数よりも出塁率や長打率が高い打者を獲得しようとする。本書では、このような細かい評価ポイントの説明が多く、スポーツ紙の野球データのページを見ながらひいきの選手の成績について一喜一憂したことないような人には、読み切ることは難しいかもしれない。

  実のところ、アスレチックスの躍進がビリー・ビーンの手腕の結果かどうかには異論もあり、その説得力は微妙なところである。また、誰もが指摘するように、彼の時代のアスレチックスは地区優勝はできてもプレーオフを勝ち抜けていない。だが、本書の野球選手の能力に関する議論は面白く、野球界に一石を投じるものとして評価できるだろう。

  なお、本書は2006年に同出版社から文庫化されている。今年になって映画が公開されているが、原作の重要な部分である数字の話は、映像に反映されていないと推測する。
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