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個々の事件・人物よりも栄枯盛衰の理由を中心に記述する通史

2012-05-11 08:23:05 | 読書ノート
ウィリアム・H.マクニール『世界史』増田義郎, 佐々木昭夫訳, 中公文庫, 中央公論, 2008.

  大学生向けの世界史。さまざま大学で教科書として使われているのだろう、2008年の文庫版の出版ながら、今年4月に書店店頭でもアマゾンでもよく見かけた。原著初版は1967年で、この翻訳は1999年の第4版から。東欧・ソ連の崩壊あたりまでを収め、参考文献と索引も付されている。

  日本の高校の世界史では、事件や人物など事項をキーにして世界史の「流れ」を学ぶ。一方、本書は西欧人らしく因果関係重視の記述で、押さえておくべき固有名詞の量は多くない。中世あたりまでは、農耕民の生産力と遊牧民の軍事力を対照させながらの記述。鉄や馬具などの技術革新、伝染病による人口減少、宗教思想の影響などにも目配りしながら、世界各地の民族・王朝の栄枯盛衰の理由を探っている。その因果関係の解釈が面白く、高校世界史では不備だった部分が補われるだろう。

  ある程度の世界史の「流れ」がわかっていればすんなり読めるレベルの本である。文明間の力の差の原因についてジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』(草思社, 2000)と同じポイントを挙げているのだが、その点は米国の歴史学の世界ではコンセンサスとなっているのだろうか?
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