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未消化に終わったコンセプトを、演奏の質の高さで克服

2013-06-17 15:49:29 | 音盤ノート
Art Lande "Pubisa Patrol" ECM, 1976.

  ジャズ。ピアノのアート・ランディ(参考)をリーダーに、Mark Isham (Trumpet, etc), Bill Douglass (Bass, Flute), Glenn Cronkhite (Percussion)というメンバー。ECM作品でこの編成、しかも1976年というと、キース・ジャレット、デイヴ・ホランド、ジャック・ディジョネットを従えたKenny Wheelerの名盤 "Gnu High"(ECM, 1976)を思い出す。このアルバムは、 "Gnu High"組ほどソロの技量はないけれども、代わりに楽曲上の工夫で勝負するというコンセプトである。

  中国、ロマ、ブルガリア、コリント式といった語を含む曲名やクレジットなどから、民族音楽を取り込もうとしていることがわかる。しかし、旋法の面でのみそれらを消化しているのだろう、実際のところサウンドからはエスニックな感覚はあまり伝わってこない。全体の印象は、いつものECMらしい熱気ゼロの室内楽風静穏モードジャズである。楽曲は際立ったものになっていないものの、ランディとアイシャムのソロは、キレはないけれど十分にリリカルで聴かせるものになっている。そういうわけで、当初の狙い通りにはいかなかったが、ジャズ演奏としては上手くいった作品というところだろうか。

  この作品、2008年になってようやくCD化されたと思ったら、以降重版されないままずっと廃盤になっている。中古LPを探した方が安く入手できるだろう、たぶん。
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