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小売書店の苦境と再生案をインタビューを通じて伝える

2024-06-23 11:46:00 | 読書ノート
小島俊一『2028年街から書店が消える日』プレジデント社, 2024

  コロナ明け後、日本の小売書店の閉店のニュースが相次いている。本書は書店の置かれた状況について詳細に報告する一般向け書籍で、小売書店や出版社の関係者28人(取次関係者はいない)のインタビューによって構成されている。著者はトーハンの元営業部長で、出向して赤字経営だった地方の書店チェーンの社長となり、リストラ無しに立て直したという人。現在はコンサルをやっている。

  全体は、書店の現状、成功している小売書店の事例、出版流通まわりの問題点、改革のための提言の四部構成となっている。個々のインタビューの内容はさておき、全体を貫いているのは、出版流通の制度改革と書店の経営努力によって小売書店は甦ることができるという主張である。前者の制度改革の例としては、買切り書籍(すなわち返品不可)の拡大、価格に対する分配率の見直し(小売書店の取り分を現状の2割から3割にする)、雑誌の発売日協定の廃止(配送時の負担が減る)などである。後者の書店の経営努力に関しては、自店で書籍をセレクトする、著者のプロモーションなどイベント収入で稼ぐ、などである。数字の話も詳しい。定価のおよそ二割が書店の取り分なのだが、インフレもあって人件費と光熱費にほぼすべてが費やされてしまい、利益が残らないのだとか。

  以上。出版社と小売書店それぞれの考えがわかって興味深い。ただ、それぞれのインタビューが3~4頁にまで要約された記述となっていて、インタビュイーの人柄みたないなところまでは伝わらない。読み物ととしてはこの点に不満が残るのだが、28人と掲載人数が多くその業績と考えを伝える編集方針としたということなんだろう。とはいえ、貴重なレポートである。
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