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幸福すぎる人は十分に生産的ではないらしい

2012-12-26 11:34:56 | 読書ノート
大石繁宏『幸せを科学する:心理学からわかったこと』新曜社, 2009.

 「幸せ」に関する心理学研究のレビュー。著者は米国在住の心理学者で、紹介する研究も英語で発表されたものが多い。それらは日本人を対象としたものではないのだが、そうした文化の違いもちゃんと意識されている。

  180ページほどの本文に章が15も設けられており、かなり多岐にわたるトピックを扱っている。列挙すると、幸福の定義と文化差、幸福感の計測の問題、物質的豊かさと幸福感の関係、結婚、友人関係、性格、幸福感を高めるための操作法、幸福感が人生にもたらす影響、などである。その主張の一部をざっくりまとめると、物質的豊かさはある程度幸福感に影響するが、ある閾値を過ぎれば重要度は減り、それよりも家族や友人との良好な人間関係が大きく幸福感に影響するとのことである。

  ところが、幸福感が高すぎる人は、学業や仕事において必ずしも高い成績を得ているわけではないらしい。良い成績を納めるのは、適度な幸せを感じている人の方である。彼らは、現状に不満を持ち、仕事や学業で成功できるよう努力するからだろう。一方で、高い幸福感を感じている人は非常に人間関係が良好であり、離婚する確率も低いらしい。そこから、今の状況にとても満足しており、あまり努力もしないという人間像が思い浮かぶ。対人関係の良好さと仕事での成功は相反するところがあるのである。

  というわけで、幸福とは別に「良い生き方」とは何かと考えさせるところがあった。人間関係か仕事での成功か、どっちがいいのだろうか。
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