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全編英語による優雅なボサノバ作品。男女混声がとても良い

2016-06-20 14:32:15 | 音盤ノート
Marcos Valle "Samba '68" Verve, 1968.

  ボサノバ。マルコス・ヴァーリは1963年にボサノバ歌手としてデビューし、1966年に渡米、1968年にブラジルに帰国。以降1970年代前半にかけて、脱ボサノバ化してチャラ男ポップ路線で活動する。その後沈黙と復活を繰り返すが、1990年代にクラブ文脈で再評価されて世界的に知られるようになった。本作は短い渡米期に録音された、まだボサノバ期の作品である。

  曲はすべてヴァーリ作。11曲中8曲はセカンドアルバムの"O Compositor e o Cantor"(EMI/Odeon, 1965)からの再録音で、編曲も同じくEumir Deodatoが担当している。ただし、作詞は米国人によるもので、全曲英語詞となっている。かつ男女混声のデュエット(女声担当は奥さんのAmamaria Valle)で演奏されている。"O Compositor e o Cantor"と比べると、どちらも甘々で優雅なサウンドではあるが、本作にはテンポの速い曲が収録されており少々パーカッシブであり、またスローな曲はとことん甘くなっていて、全体にメリハリがある。ボサノバ系の控え目なボーカルスタイルによる男女混声というコンセプトもとても良い。新婚夫婦が結婚式で恥ずかしげに唱和しているみたいで、聴いていて幸福な気分になる。

  というわけで、よく完成されたボサノバ録音である。チャラ男路線での1970年代の作品、例えば"Previsao Do Tempo"(EMI/Odeon, 1973)などは、1990年代に再評価の対象となったが、少々癖があって好みが分かれるだろう。本作は誰からも愛されるだろう可愛らしい音楽となっている。
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