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薬指が長ければ長いほどよいというわけではないみたい

2016-06-08 08:12:22 | 読書ノート
ジョン・マニング『二本指の法則:あなたの健康状態からセックスまでを語る秘密の数字』村田綾子訳, 早川書房, 2008.

  薬指と人差し指の比から「男性」性について測るという内容。一般向け書籍であるが、あれこれの条件を付すとホルモンがこのように作用するという説明が中心で、わりと硬い印象である。著者は英国ランカシャー大学の心理学教授。原書はThe Finger Book (Faber & Faber, 2008)である。

  薬指が人差し指に比して長いということは、胎児期に男性ホルモンであるテストステロンを多く浴びたということ。そのような男性は、そうでない男性より「男性的」で、高い緊張を強いられる局面で強く、優秀な証券トレーダーやサッカー選手、あるいは優秀な音楽家に多く現われる。以上のような話は竹内久美子の本で知っていた。竹内本を読んだ限りでは、男として僕も胎児の頃にもう少しテストステロン浴びておきたかったという感想となる。だが、その種本たる本書むと少々印象が変わる。2章のデータを見る限りでは、薬指の長い男性が多い国は経済的に裕福ではない。女性的な男性の多い国ほうが国が成功している。マッチョな世界では協力行動が成立する頻度が低くなるからだろう。おそらく「男性的」な男性は、衝動的であったり、周囲と協調できないことも多いと推測される。「男性的」な男性は、成功した社会層だけでなく失敗した社会層にも多くいて、中間はあまりいないのではないだろうか。

  本書には、y軸に心臓疾患・がん・運動能力などを示す指標、x軸に指比とした散布図が数点収録されている。そのうちいくつかは、「これに回帰直線を引くのはおかしいだろう」というレベルの、無相関にしか見えないものだった(もちろん、もっともらしいものもある)。これらの図を見た印象は、指比はそれなりに男性性の指標になるのだろうが、健康や能力をはっきり弁別できるほどの強力な指標でもない、というもの。むしろ、国別のような集団の性格に適用したほうが理解しやすい結果が出ている。
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