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マーケットデザインの意義がよくわかる。書名の表記が混乱気味

2016-06-17 09:01:39 | 読書ノート
アルビン・E.ロス『Who Gets What : マッチメイキングとマーケットデザインの新しい経済学』櫻井祐子, 日本経済新聞出版社, 2016.

  経済学。マッチング理論およびマーケットデザイン研究についての一般向け解説書である。著者は2012年のノーベル経済学賞受賞者。本書でも説明されているように、もともとはゲーム理論家だったが、その後に腎臓移植ネットワークの設計や、ボストン市やニューヨーク市の公立学校の入学資格の割当制度の設計に関わってきたとのこと。原書はWho gets what - and why: The new economics of matchmaking and market design (HMH, 2015.)である。

  マッチングとマーケットデザインの位置づけと、実際の応用例の説明が本書の中心となっている。旧来の経済学は「コモディティ」すなわち価格がすべてのシグナルとなる財の市場を扱ってきた。これに対し著者は、価格システムの導入がはばかられるモノの取引もまた「市場」だとする。臓器や、医学生のインターシップ先や、特定の学校への入学資格がそうだ。これらにも最適な配分法がある。そうした方法が著者が定式化した「受入れ保留アルゴリズム」である。(のだが、アルゴリズムの説明は言葉だけによるもので、現実に応用できるほど詳しくない。この点は、新書ながら坂井著『マーケットデザイン』の方が詳細である)。とはいえ、本書はこの分野の可能性がよくわかる好著だろう。

  なお、本書の標題紙およびカバーのタイトル表記と、奥付のタイトル表記が異なっている。前者には微妙なフォントでどこにかかるのかわからない"and Why"の記載があるが、後者にはない。また、それぞれ"フー・ゲッツ・ホワット"というカタカナ表記も入っている。図書館情報学者という職業柄、この点を図書館の目録や販売書誌がどう処理しているのかが気になってしまい、ちょこっとだけ調べた。結果は下記。アルファベットを半角にするか全角にするかだけで決断を迫られる領域なのだが、それに加えて主副および相互の関係がわかりづらい語句が並んでおり、カタロガー泣かせの本である。

・版元(日経出版)"Who Gets What(フー・ゲッツ・ホワット)―マッチメイキングとマーケットデザインの新しい経済学―"
・国立国会図書館 "Who Gets What : and Why : マッチメイキングとマーケットデザインの新しい経済学"
・東京都立図書館 "Who Gets What : マッチメイキングとマーケットデザインの新しい経済学"
・さいたま市立図書館 "Who Gets What -マッチメイキングとマーケットデザインの新しい経済学 and Why-"
・楽天ブックス "Who Gets What and Why マッチメイキングとマーケットデザインの新しい経済学"
・Amazon.co.jp "Who Gets What (フー・ゲッツ・ホワット) ―マッチメイキングとマーケットデザインの新しい経済"
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