途中、旅行に行ったりして読み方が分断され、かなり日数もかかりましたが、無事に読了しました。読み終えて、「はぁ~~・・・」とため息です。ばかげた”国益”のために何と多くの命が失われたことか・・・。壮大なスケールの小説ですが、その分、虚しさ・絶望感が大きかったです。
【以下、ネタバレ多数。要注意】
ジャック、リーアン、サラ、ケリー、キム・・・。彼ら&彼女らはみんな若かっただけに余計にその死を無念に思ってしまった。そして運命の天才ピアニスト:ノーマン・シンクレア。彼が最後のコンサートで弾いた渾身のブラームス・ピアノ協奏曲第2番。シンクレアは交響曲としての雄大さ重厚さも合わせ持つこの協奏曲を亡きジャックの代わりにリヴィエラにぶつけて相対したのだが・・・。
それにしても、生き残った人も切ない。手島、モナガン、M・G。手島を除く2人は既に老いているし、若い手島も取り返しがつかないほどの心の傷を負ってしまった。明るくふるまう妻・時子が彼を支えてくれるとは思うが。
唯一の救いは手島の足下で恥ずかしげに戯れているくリトル・ジャックの存在だろうか。そいういえばキムの奥さんも無事に子供を出産したのだろうか・・・。この子供たちが大きくなったときに世界は果たして変わっているのか。いや、それを彼らに託すしかないのだが。手島「・・・もしそうなら、リトル・ジャックはまず恋をしなきゃ・・・」 良いセリフです。
この物語では人を想う気持ちや愛についても丁寧に描かれ、それが作品に深みと奥行きを与えていたように思う。私は特にジャック、”伝書鳩”ケリー、キム・バーキンの3人の奇妙な友情というか、敵のような味方のような微妙な立場にありながら相手を無駄には死なせないという感情と行動にしびれた。いやいや、それを言い出すと、M・Gやモナガンについても語らないといけないのだが。ジャックとシンクレアのボクシングシーンなども良かった。リーアンとサラの死はただただ切ない。しかし、彼女らにも不十分ではあれ、愛する人と時間を共有できた密やかな喜びはあったのだろう。そう思いたい。
結局、皆が恐れ、逆にその姿を追い続けたリヴィエラは追いかけるに足る人物だったのか。ジャックやケリー、キムの死は無駄ではなかったのか。リヴィエラが真に果たした役割は何だったのか。リヴィエラは虚像だったのか。全てはギリアムの策略だったのか。あるいはリヴィエラ(T・S)は稀代のスパイで、その本質を完全に隠し通していたのか(そんなことはないのかな・・・。読んでいる最中でもリヴィエラがそれほどの人物には思えなかったし)。ジャックたちの死に何とか意義を見いだそうとやっきになった自分がいました。それでないと、彼らの死が悲しすぎます。
自分の身に危険が迫っている・・・と気付いた直後には銃弾が降り注ぎ、爆弾で吹っ飛ばされるという非情な世界の恐ろしさは凄かった。○○○の長官が裏切り者というのもこれまた凄い。高村氏の豪腕ぶりが十分に発揮されたように思います。終盤に出てきた第三の人物には、「ん?」と思いましたが。
「マークスの山」と並んだ巨大な双耳峰と評価します。何か書き忘れている気も。まあ、いいか。
CIAの『伝書鳩』とともに、父の仇である『リヴィエラ』を追っていたジャック。複雑怪奇な諜報機関の合従連衡。二重・三重スパイの暗躍。躍らされる者たち。味方は、敵は誰か。亡命中国人が持ち出した重要書類とは?ジャック亡き後、全ての鍵を握るピアニストは、万感の思いと、ある意図を込めて演奏会を開く。運命の糸に操られるかのように、人々は東京に集結する。そして…。
参考ブログ:
拙ブログの紹介とTB、ありがとね♪
ひろさんの感想はとっても的確で、あ゛~、そうなの、そうなのと思いながら読ませていただきました。
私は、読後、すごくいろんな思いがごちゃ~っと自分を襲ってきて、何から話せばよいのやら、って感じになったのだけど、そうなのよぉ~!!!なのでした。
それでも、何か書き忘れている気がするんだね。
うんうん、分かるわ~^^
>壮大なスケールの小説ですが、その分、虚しさ・絶望感が大きかったです。
>この物語では人を想う気持ちや愛についても丁寧に描かれ、それが作品に深みと奥行きを与えていたように思う
うんうん、本当に。
私は、ジャックのリーアンへの想いが、とても心に残っています。今でも切なくなります。
う~、また読みたくなってきちゃった(苦笑)
コメントありがとう♪
いえいえ、敢えてきちんと読まなかったそらさんの感想には凄い想いが込められているし、私のなんかよりもよほど芯が通っていると思いましたよ。
「昨日は暴風の1日でした。・・・多くのことを感じます。・・・ドラマに途中参加した手島の諦観が、心に痛いです。」(途中、大幅省略失礼!)
再読しましたが、素晴らしい文章だと思いました。今までで一番良かった気も。
他の人が書いた感想で気付くことが多々あるということを今回も認識しました。お互いに新たなことに気付いたり、ウンウンとうなずいたりが面白いですね。これだから読書とブログはやめられない!
う~、私もまた読みたくなってきたなー(苦笑,too)
どもども♪です。
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ありがとうございました。
なぜか、気が付きませんでした。
高村さんのものでは、「李欧」が一番好きです。
「リビエラ」は、その次くらいかな。
また、寄らせていただきます。
ご丁寧にありがとうございます。
「大河スパイ小説」との表現になるほどなあと思いました。
多くの人物が運命のうねりの中で錯綜する、その描き方が見事でしたね。
「李欧」は未読ですのでいずれチャレンジしたいと思います。またお暇なときにでも遊びに来てください。