ひろの東本西走!?

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一瞬の風になれ 第2部(佐藤多佳子)

2007-09-04 23:00:00 | 12:さ行の作家

Satou2_1 一瞬の風になれ 第2部(講談社)
★★★★☆’:85点

感動の世界陸上・大阪大会と共に夏も終わり・・・いや、まだまだ暑いですが、やっとこさ図書館から回ってきて読了した第2部の感想を書く時間ができました。

ピュアで若さがまぶしい、ど真ん中の直球勝負の青春スポーツ小説。神谷新二と谷口若菜の恋心も良い。

第2部も新二と一ノ瀬連たちの走るシーン、レースのシーンが素晴らしいのですが、Amazonにも書かれていたように第1部よりも人と人の心の繋がりに重きが置かれています。特に部長の守屋、新二が胸キュンの谷口若菜とその弟が良いです。

俺をナメてんのか?・・・絶対に追いついてやるから、思いっきり出ろ!(守屋)
どうしても走りたい連の気持ち。----脚を故障した連が、あの超自己中心だった連が、守屋のためにどうしても南関東大会のリレーに出ると言い張るというその気持ち----。どうしても走ってほしいリレメンの気持ち。どんなに走らせたくても走らせるわけにはいかない先生の気持ち。この葛藤は読み応えあり。
引退する3年生が最後に自分の思いなどを語るサヨナラ・ミーティング。史上最高に短かった守屋の話。史上最高に長かった浦木の話。守屋の突然の絶句に部員全員が泣いた。ここ、良いですね。

谷口若菜と弟も非常に良いです(母を亡くし、父と3人暮らし)。
弟のことを褒められ、嬉しそうに笑う谷口。”お姉さん”の顔だ。「肉じゃが」というタイトルのメールがまた良い。「弟は初めてのメニューに挑戦!・・・おいしかった。まずいけど、おいしかった。弟にも言われた気がした。やってみろって。よく考えてみるね」
えらいっ、弟。見たことないけど、おまえはえらい(by新二)。

ジュビロ磐田に入団した兄を誇りに思う新二。年季の入ったサポーターのおじさんとの会話良し。

終盤、とある人物に悲劇が襲いかかりますが、これは何となく予想がついたというか何かが起こりそうな予感がしていました。新二が「自分の方がひどい目に遭えば良かったんだ」という気持ちもやや類型的と言え、わざわざこのような設定にしなくても良かったかなという気もしました。ただし、その後の精神的復活物語は感動的でした。

   「トリーッ!鳥沢ーッ、春高、ファイトーッ!」
   鳥沢圭子ははっきりと俺を見て、かまぼこ形の目を見開いて、
   誰をも魅了する明るい笑みをぱっと浮かべた。
   そして、あっという間に目の前から消えた。

結構笑えるシーンがあったのも良かったです。
みっちゃん(三輪先生)曰く「(連は)インターハイって言葉でハートに火がつかない珍しいアスリート」
そして、みっちゃんが冬季練習で連に与えたテーマは「小学生かね、まったく」と言う新二でなくても笑えました。

   その一:休まない、その二:風邪ひかない、その三:ちゃんと食う

お喋り好きの高梨君は意外とおとなし目になっちゃいましたね。やはり「バッテリー」の瑞垣の敵ではなかったかな。

第3部を読めるのはいつになるんだろう。。。

◎参考ブログ:

   苗坊さんの”苗坊の読書日記”

************************ Amazonより ************************

  冬のオフシーズンを経て、高校2年生に進級した新二。冬場のフォーム作りが実を結び、スピードは着実に伸びている。天才肌の連も、合宿所から逃げ出した1年目と違い、徐々にたくましくなってきた。新入部員も加わり、新たな布陣で、地区、県、南関東大会へと続く総体予選に挑むことになる。
   新二や連の専門は、100mや200mのようなショートスプリント。中でも、2人がやりがいを感じているのが4継(400mリレー)だ。部長の守屋を中心に、南関東を目指してバトンワークの練習に取り組む新二たち。部の新記録を打ち立てつつ予選に臨むのだが、そこで思わぬアクシデントが……。

   第2部に当たる本書では、人と人の繋がりに重点が置かれている。新二と連の友情、先輩・後輩の信頼関係、新二と谷口若菜の恋愛模様。第1部で個々の人物を丹念に描き、読者に感情移入をうながしているだけに、皆の気持ちが1つになっていく姿は強く胸を打つ。
   特に、一人ひとりがバトンをつなげていく4継の描き方が素晴らしい。自分勝手と思えるほどマイペースな連が見せる、4継への、仲間で闘うことへの執着、意気込み。連のまっすぐな言葉に新二たちがはっとする時、その言葉は読み手の心にもストレートに届くのだ。
   本書は、起承転結でいうところの、承句と転句。さまざまな事件、障害、葛藤を経て、スピードに乗った物語は、第3部のフィナーレへとなだれ込む。(小尾慶一)

出版社/著者からの内容紹介
何かに夢中にだった、すべての人へ贈る青春小説
「最高だ」
直線をかっとんでいく感覚。このスピードの爽快感。身体が飛ぶんだ……。
少しずつ陸上経験値を上げる新二と連。才能の残酷さ、勝負の厳しさに出会いながらも強烈に感じる、走ることの楽しさ。意味なんかない。でも走ることが、単純に、尊いのだ。
「そういうレースがあるよね。きっと誰にも。一生に一回……みたいな」
今年いちばんの陸上青春小説、第2巻!