ひろの東本西走!?

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天下城(佐々木譲)

2007-08-06 23:51:08 | 12:さ行の作家

Tenkajou1_2Tenkajou2_2天下城(新潮文庫)
★★★★’:75点

最近、石垣や石組み・石積み(お城の石垣に限らず)に興味を持っているのですが、そういった意味では読んだのはタイムリーでした。

ただ、城造りという歴史小説として異色の題材が採り上げられ、技術系の人間としても興味深い内容だっただけに、石積みや城造りの細かな内容、苦悩と喜びをもっと突っ込んで書いて欲しかったとも思います。その意味では期待度対比で70点くらいかなという気もしますが、終盤はしみじみとした味わいもあってgood。

また、全体的に人の書き込みもやや食い足りない気がしました。その中では、かつて武人の子でありながら、主家が戦に敗れ、流れ流れて穴太(あのう)衆の石積み職人として真摯な生き方をする主人公の市郎太。そして、対照的に棟梁の息子に生まれながら、自分の能力・努力不足を認識せずにつまらないプライドにこだわり、狭い場にとどまって飛び出していこうとせず、常に悪い方の道を選び続けて棟梁としての道も自ら閉ざしてしまう源太郎。二人の描写は良かったです。源太郎の生き方・考え方にはイライラしますが、そういう生き方しかできない人間がいるのですね。

信長の野望のシンボルであり、市郎太も全精力をそそいだ安土城はそれはそれは奇抜&壮麗な城だったみたいで、往時の姿を見たかったです。難攻不落の天下城・安土城は何故焼け落ちたのか。それには築城時の事故のたたりがあったのか。。。堺の町にもかつては掘り割りなどにかなり凄い石積みがあったようですが、今も多少は名残があるのでしょうか?あまり見聞きしたことがありませんが。

なお、ぷにょさんがブログ”まちかど逍遙”で、坂本の町に残る「穴太(あのう)衆積みの石垣」について書いておられます。こちらも必見!です。

********************** Amazonより **********************

内容(「BOOK」データベースより)
我らの頼り、志賀城が落ちた。信濃での平穏な暮らしは武田軍に踏みにじられた―。その日こそが、戸波市郎太の原点となった。若者は軍師の弟子となり、戦国乱世に遍歴を続けた。だが師の逝去により、その道を絶たれてしまう。運命は、彼を名高き近江の石積み、穴太衆のもとへ導いたのだった。鍛えあげた戦略眼と最高峰の技術を受け継いだ男は、やがて、日本一の城造りとなる。

戦国武将たちは、自城の守りを固めるため、城造り・戸波市郎太の力を求めた―。織田信長の再三の要請を受け、市郎太は覇王の言う「天下城」を造ることを約束する。その機会が訪れる前にも多聞山城や合戦前の長篠城を手がけ、技術を磨いた。乱世を平定した信長は、近江に城を築くことを決めた。伝説となった安土城の栄枯盛衰。そして数奇な運命を生きた鬼才の生涯も幕を閉じる。

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