★★★★:80点
食べ物のことを描かせたら抜群の山本一力氏。魅力的な主人公”つばき”を中心に据えて、またまた心あたたまる人情話が出来上がりました。
主人公の”つばき”は良し。飯炊きが素晴らしくうまく、記憶力抜群で商才あり。器量・度胸良し、人を見る目あり、思いやりあり。とくに妹に注ぐ愛情は母親以上か。
恋についてだけがちょっと不器用(?)なのが可哀想だけど、それがまた可愛らしくもあります。
~ハードカバー帯より~
江戸に心から愛されている一膳飯屋がありました。
直木賞作家の魅力あふれる細腕繁盛記
知恵を使い、こころざしを捨てず、
ひたむきに汗を流したおんなの生き方
自分の才覚で店を繁盛させていくのですが、当然のことながらまわりの人々に支えられ、助けられて多くのことを学んでいく。とくに人生の先輩を大事にするところが素晴らしい。年寄りもまた、つばきから元気をもらうのが好ましい。
口入れ屋の番頭が教えてくれた「人定めのコツ」が良いです。
笑顔がきれいなひと。
骨惜しみをせず、腰が軽いひと。
声が明るいひと。
好き嫌いを言わず、出されたものは残さずなんでも食べるひと。
さて、自分を振り返ってみると?
まあ明るく楽しいとは言われますね。
好きなことであれば骨惜しみはしませんが、そうでないことに関してはめちゃめちゃ腰が重いです(^_^;
動かざること山のごとしか。
昔は好き嫌いが多かったけど、今はそうでもないですね。でも、牡蠣はダメです・・・。
それはさておき。
なかなか素晴らしい作品なのですが、ラストシーンがあっけなさ過ぎます。山本氏の作品には時折これがあるのですが、話の途中で唐突に終わってしまった感じです。結局、閻魔堂の弐蔵とつばきの関わりは過去だけのものとなったのも何となく不自然でした。雑誌で続編の連載が始まったらしいですが、それの完成を待って合わせて出版してほしかったと思います。
また、山本さんの作品は読みやすく心地いいのですが、若干深みに欠けるきらいがあります。「あかね空」などは、多少の暗さと共に物語に深みもあったと思うのですが。
いつも水準以上のできばえなのですが、全体的に悪役が弱いこともあって、もう少し毒がほしいなあなんて思ったりもします。贅沢かなあ。これって私だけ?
参考ブログ:
よしさん
ゆきうさぎさん
gracemomoさん
Rokoさん
トラキチさん
bamseさん