普天間基地問題の本批判


普天間基地に関係する本がまた出た。去年も何冊もでたが、本のほとんどが似たり寄ったりの内容だ。
このような類の本は、沖縄が日本唯一の地上戦になった悲劇の島であることを強調し、日本がアメリカを急襲して太平洋戦争を始めたことが沖縄の地上戦の原因となったことは書かない。

戦後に中国で社会主義革命が起こり、社会主義国家となった北朝鮮はなんの予告もしないで韓国に進撃して朝鮮半島の95%を征服した。それに対してアメリカ軍は25万人を投入して北朝鮮の韓国を支配を防いだ。中国はチベットを武力支配し、台湾をも支配しようとしたが、台湾はアメリカがバックアップして中国の武力支配を防いだ。このことははっきりした歴史的事実である。しかし、普天間基地を問題にする本はそのことを書かない。
アメリカが沖縄に軍事基地を作ったのは中国を中心とする社会主義国家の拡大を防ぐ目的があったのであり、もし、中国、北朝鮮、北ベトナムなどの社会主義国が武力による勢力拡大の欲望がなく、他国へ侵略する可能性がゼロであったなら、アメリカが沖縄で軍事基地を築くことはなかった。

それなのに、中国や北朝鮮の存在と沖縄のアメリカ軍駐留の関係は全然書かないで、沖縄は「米軍に占領されて勝手に基地の島に作り変えられ」てしまったと、まるで沖縄を基地にすることがアメリカの直接の目的であるように普天間基地問題を題材にし本は書くのだ。知識人であるなら、朝鮮戦争は北朝鮮が侵略して始まったこと、ベトナム戦争は北ベトナムが南ベトナムに侵略して始まったことを知っていて当然である。アメリカは北朝鮮や北ベトナムの侵略を食い止めようとしたのであり、南ベトナムや韓国を植民地にしようとする意志は全然なかった。アメリカが沖縄に軍事基地をつくったのは社会主義国家の拡大を防ぐのが目的であったのだ。

沖縄の基地問題はアジアにおける社会主義と資本主義の対立、共産主義と民主主義の対立の問題として考えるべきであり、沖縄のアメリカ軍基地を問題にするのなら、社会主義を選択するか民主主義を選択するかを自分に問わなければならない。

もし、アメリカ軍がアジアにいなかったら、韓国は北朝鮮に支配されていた。日本は北海道はソ連に支配され、本州から沖縄、台湾は中国に支配されていた。まさかそんなことはあり得ないと思う人は甘い。中国人民解放軍は人民を開放するという名目でウイグル地区などのアジア内陸部の地域を武力で制圧し、仏教国である広大なチベットをも武力で制圧している歴史的事実があるのだ。
このような歴史的事実をみればアメリカ軍が駐留していなければ日本・沖縄が中国に占領されていたと容易に想像できる。

CIAの援助がなければ岸は首相になれなかったというのだろうか。確かにCIAは保守勢力が政権を握るように暗躍していた。しかし、日本は議会制民主主義国家であり、CIAの思うとおりにできたわけではない。CIAの援助で岸信介が首相となったと決め付けるのは日本の議会制民主主義と国民を愚弄している。

宇沢氏が「岸信介は、『日本をアメリカの植民地化することに狂奔した』」と書いたことを手厳しいと江上教授は評価しているが、宇沢氏は、アメリカが日本に軍事基地をつくっている原因はアジアの社会主義国家の存在にあるのに、そのことを全然考えていない。宇沢氏はアメリカは日本に軍事基地をおいて日本を支配するのを目的にしていると考えているがそれは大いなる誤解である。そもそもなぜアメリカが日本を植民地する必要があったのか。日本はアメリカの植民地にされて搾取されたのではなく、アメリカと貿易をして経済が発展し、小さな島国であるにもかかわらず世界第二位の経済大国になったのだ。
世界第二位の経済大国になった日本がアメリカの植民地であるなんて笑わせる。
「岸信介は、『日本をアメリカの植民地化することに狂奔した』」は宇沢氏の視野の狭さ、被害妄想が如実に現れている文章である。

アメリカほど現実主義の国はない。ソ連が崩壊し自由主義経済国家に変貌しつつあることや、中国が市場経済を導入して経済発展しているという現実とアメリカは常にリアルタイムで対応している。アメリカにはとっくの昔に冷戦思考はない。「アメとムチ」という理屈は沖縄の知識人が勝手に作り出した的外れの理屈であり、アメリカや日本政府の基地政策を「アメとムチ」論で判断することがおかしい。

基地として土地を借りたら借地料を払うのは当然であり、軍事基地ができたら現地の人間を雇うのも当然だ。基地をつくることはムチであり、借地料を払ったり、雇用したりするのがアメという理屈はおかしい。基地ができたら経済的に潤うことをアメとムチ論で非難するのは理論的に間違っている。

沖縄のアメリカ軍基地を問題にするなら、社会主義国家である中国、北朝鮮の存在と関連づけて問題にするべきだ。

オバマ大統領は中国の胡錦濤主席に北朝鮮に核開発をやめるように圧力をかけるように要請した。そして、もし中国が北朝鮮に圧力をかけないのなら、東シナ海でアメリカの軍事力を増強させると言った。アメリカは北朝鮮の核開発や軍備増強を抑える努力をしている。他方、中国との経済交流を高めることにも積極的である。経済交流が高まれば高まるほど戦争の危機はうすれる。アジアの平和に一番貢献しているのはアメリカである。

このようなアメリカの動きを評価することもしないで、沖縄に駐留しているアメリカ軍事基地の存在だけを問題にして、やれ冷戦思考であるとかやれアメとムチであるなどとアメリカや日本政府を非難しているのは古くて頑固な考えである。
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TPP反対論への批判




山下氏は農業に従事している側からTPPに反対している。山下氏は20年前の「農業たたき」に反論して、20前に比べて、農家の総所得と生産者米価が半分になり、時給は200円以下になったがサラリーマンの税金は安くなったか、暮らしはよくなったかと述べているが、米は実質的に自由化していない。現在の状況は米の自由化を拒否し、減反政策をしてきた結果である。山下氏の主張する農業のシステムが現状をつくっているのであり、山下氏の反論は反論になっていない。

山下氏は、日本の一次産業のGDP比と米国のGDP比が大して変わらないのに米国は第一次産業が他の産業を犠牲していないのだから、日本の農業が他の産業を犠牲にしているという理屈は虚構の論理であると述べているが、アメリカは第一次産業の自由化を推進しているの国であり、アメリカの農家はTPPを歓迎し、日本にTPPを促している。日本とアメリカのGDP比が大して差はないことを根拠にしてTPPを否定するというのは筋が通らない理屈だ。アメリカを例に出すならTPP推進に賛成するべきではないのか。

TPPは日本の農業を大規模農業や企業農業に変革するということであり、山下氏の注視する➀➁➂は関係ないことだ。
大型店舗は商品が豊富であり、安くて市民生活に大きく貢献している。商店街がシャッター通りになり、仕事を失ったと、山下氏はまるで小売り業に従事する人間が減ったような印象を与えているが、大型店舗は売り場担当から、経理、営業、開発等々と多くの人間を雇用している。商店街は夫婦でやっている商店が多く、大型店舗のほうが雇用関係でもいい結果をうみだしている。
大型店舗は分業化が進み、店員から営業、開発とそれぞれの専門家がお客が満足するように頑張っている。商店街よりサービスがいいから大型店舗の客は多いのだ。


TPPとセットの農業の強化策は、山下氏のいう通り農産物の輸出と農業への企業参入である。しかし、それは日本の低所得者は中国の安い米を食えということではない。農業の大型化、農業への企業参入は日本の米生産が増加し、品質も向上することであり、日本の米がもっと安く買え、しかもおいしくなるということだ。
農業を企業家すれば米の品質改良はもっと早くなる。

山下氏は「この世から年寄りがいなくなるということはない」というが、まさに年寄りが農業をやり、若者の農業への参加がないことが大問題なのだ。年寄りの農業は生産力は落ち、小規模だから値段は高くなる。それが外国からの農産物輸入増加の原因のひとつでもある。
大規模農場、企業参加があれば生産力は高まり、値段は安くなる。むしろ農産物の自給率は高まる。


農業の専門的な知識もなく、大いなる情熱もないサラリーマンが定年退職をして親の畑を引き継ぐという山下流の農業こそが日本の農業を駄目にしている。親から子に継いでいく小規模農業ではなく、情熱があり、農業につい専門的な知識がある若者がどんどん農業をやるシステムをつくるべきだ。それには大規模農業、企業経営の農業を増やし、若者をサラリーマン並みの給料て雇用できるようにしなければならない。


山下氏の主張は日本の農業を衰退させていく農業理論である。
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