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第一志望を決める

 私のいた塾では6年生から学校別のクラス編成になっていました。希望の学校別にクラスを編成するのです。といっても、すべての学校にあわせるわけにはいきませんから、知識重視の学校や、選択肢の問題が多い学校、あるいは記述式の多い学校など出題傾向にあわせた形でクラスを編成していました。したがって5年生の秋には第一志望は決まっていないといけなかったので、秋の保護者会ではこんなお話をしていました。

 「そろそろ第一志望を決めていただきたいと思います。秋は学校説明会や文化祭などもありますから、それらも参考にしていただいて、決めていただきたいと思います。ただし、今の成績は度外視してください。今の成績を考えると、多分、第一志望は決まりませんから。」

だいたい、ここで失笑がおきます。

「今の成績では受からない、と思われているお母さんも多いと思います。私もそう思います。ただ子どもたちは同じところにはいません。毎日成長します。来年の今ごろ、同じような子どもではないということは、よくおわかりいただけると思うのです。成績のことは、度外視、もし、どこに入ってもいいよと言われたら、どこに行きたいか、どこに入れたいかを考えていただきたいのです。大切な目標を決めるということです。」

これに関しては、ずいぶん違う指導をしている塾もあろうかと思います。6年生の秋の成績を見るまでは、志望校は特に決めず、秋の成績で第一志望を決めるという考え方も当然あると思うのです。しかし、私は、第一志望だけは早めに決めてしまった方が、子どもたちの勉強にプラスになると思っています。なぜでしょうか?

受験勉強は負担をともないます。遊びに行きたいのを我慢しなければならないこともあるし、見たいテレビを見れないときもあるでしょう。でも、あそこに入るためだったら、がんばろう、そういう目標を持っていることは、非常に大切なことなのです。あの学校に行けば、クラブで野球をやろう、とか、女の子であればあの制服を着たいとか、そういう気持ちをもってもらえれば、いいのです。

 ところが、お母さんは、そういうときに突如、現実的になります。
「今の成績じゃ、だめね。」
この言葉は非常に、効果があります。ただし逆効果。子どもががんばろうとする気持ちを台無しにしてしまうことが多いのです。お母さんは、どちらかといえば、悔しいと思ってがんばるだろうくらいに考えることが多いのですが、子どもはそうは思いません。
「僕ってなんてかわいそうなんだろう。いやな親に生まれたな。」
今の子どもたちは、そんな感じです。

夢を持つ、あるいは目標を持たなければ、努力はそうは続きません。何の成果もなく、ただがんばるなんてことは、とても難しいのです。ですから、子どもたちの夢をまず作ってあげることにしましょう。

では具体的にどのようにして第一志望を選んでいけばよいでしょうか?

これについては、いくつかのステップがあります。まず大学受験校を選ぶのか、付属校を選ぶのか、ここはご家庭の教育方針だと思います。私は息子には大学受験をさせたいと思っていました、しかし本人はぜったいに付属校に行きたいといいます。

「受験はこれで、おしまいにしたい。それよりは好きな勉強をしたい。」

というのが、彼の主張でした。

「でも入った学校に、そのあと行きたい学部がなかったらどうするの?」
「そのときは、そのときで考える。」
「うーん。なるほど。」

 結局、私は彼の言うとおりにしましたが、それは息子の性格を考えて、それが妥当かなと思えたからです。

 大学受験がいいか、付属校がいいか、それぞれにメリットとデメリットがあるので、一概にこちらが良いとはいえません。そのあたりはまずご家庭の教育方針として決めていただければよいと思います。

 それが決まったら、次は自宅からの通学時間を考えます。中学1年生はまだまだ小さいですから、早朝からの電車通学は大変です。まずは1時間以内を目安にしてください。その中でいくつか候補が決まってくると思いますので、それらの学校の文化祭や学校説明会にでかけてみてください。このとき、なるべく子どもを連れて行ってください。もちろん、出かけるまでの間に、ご両親として納得のいく学校を選択して、その中から子どもたちに見せてあげてください。というのも、子どもたちは実に単純な動機で学校を選びます。サッカーの好きな子どもだと、中学校でサッカーの練習をしているだけで、「ここ!」と言い出したり、女の子だと、石のチャペルがあったりしただけで惹かれてしまうことが多いからです。ご両親として納得のいく学校を見せてあげてください。そして最後は、あくまで本人が決めたのだということをよく、子どもに認識させておくことです。勉強がつらくなると、

「だって、お母さんが受験しろ!っていったんじゃないか。僕がしたいわけじゃない。」
ということが始まってしまいます。しかし、本人が決めたのなら、それはあなたの責任でしょと親は言うことができるのです。

 おわかりいただけていると思いますが、この議論の中に成績は入っていません。成績は上げるものです。行きたい学校がしっかりすれば、そこに向けてしっかり勉強すればよいだけのことです。今の段階から子どもの可能性にふたをしてしまう必要はありません。1年後にはまた成績が出てきます。そのとき、そのレベルにまで達していないことはあるかもしれません。

 そのときはそのときで、もう一度考えてみる必要があるかもしれませんが、ここは受験勉強をするための大事な動機をつけるところなのですから、子どもたちに大きな夢を持たせていただければと思います。

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