The Last of the Great Aisled Barns-3

2010-10-08 09:58:26 | 建物づくり一般
“Silent Spaces――The Last of the Great Aisled Barns ”( Little, Brown and Company 1994年刊)所載の建物の紹介続きです。




写真下の説明によると、
これは先回紹介したノルマンディのセーヌ・マリティム地域の南西にあたるカルバドス地域(地図の黄色線の四角に囲んだ一帯のどこか)に残されている12世紀後半~13世紀初頭に建てられたと思われる Benedictine 派の修道院(abbey)に属する小修道院(priory)。
近年、半分に仕切る壁が設けられ、農作業用の納屋として使われている。

先回の例とは違い、石積み造りの上に木造の小屋(この場合はトラス)を載せる方法です。
アーチで支えられた石の壁の上に、小屋梁を受ける「枕木」が据えられています。
そのあたりは、版築土壁の中国の寺院と同じです(その流れをくんだと思われるのが古代日本の木造寺院で使われた「頭貫(かしらぬき)」)。

この書の著者:写真家(Malcolm Kirk 氏)は、このような Aisled Barns を Multifunctional Buildings と呼んでいますが、まったくその通りです。
「上屋+下屋」方式でつくる方法は、もしかしたら、地域や建築材料によらず誰もが考え付く工法なのかもしれません。

下の写真は、「小屋」と「柱頭」( capital )の詳細。「柱頭」がそれぞれ違っています。
10~13世紀の頃、各地にあったローマ時代の遺構から「材料」を集めてつくることが多かったそうですから、もしかしたら、これもそうかもしれません。しかし、それにしては、大きさが同じ・・・。

壁部分の詰物には煉瓦も使われているようです。

壁に見えるいくつかの窪みは、各柱の直上で、同じ高さにあることから推定すると、壁を積んでゆくときの足場用ではないでしょうか。
先ず石でアーチをつくり(形枠の上)、煉瓦や石を詰めてゆく(セメント:接着材は石灰:漆喰:シックイでしょう)、そのときの足場。
丸太など木材を柱の手前に柱ごとに縦に立てる。アーチの逆V字型部分に少し詰物を積んだ後、そこに横材になる木材の片方の端部を載せ、もう片方を先の縦丸太に結わえる。
この横材間に足場板になる材を渡し、詰物を積み続ける。詰物の材料は、バケツのような容器にいれてロープで持ち上げる。
一定の高さまで積むと足場を一段上げる・・・。多分こういう工程をとったのではないかと思います。
詰物がそのまま見えているところが、いい。後には、そうした詰物の上に化粧の材を貼り付けるようになる。


よく見ると、部分的に亀裂補修の跡が見えます。色から判断して、今の一般的なセメント:ポルトランドセメントを使用していると思われます。

   蛇足 石灰:シックイは気硬性、ポルトランドセメントは水硬性。
       シックイは石灰の中国読み。




この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 建物をつくるとはどういうこ... | トップ | 建物をつくるとはどういうこ... »
最新の画像もっと見る

建物づくり一般」カテゴリの最新記事