清新で溌剌としていた時代・・・・鉄を使った建物に見る-2

2010-03-01 18:01:19 | 鉄鋼造
[語句追加 3月2日 8.51]

先回概要を紹介した1889年パリ万博・機械館のアーチ・トラスの詳細図を転載します。
細部が分るように、図版は大き目に作成しました。


アーチ・トラスの柱脚部の写真。
人物と比べてください。アーチ・トラスがいかに大きいか分ります。

下がアーチ・トラスの全体図(半スパン)です。左右対称です。

            
A、B、E部の詳細を、頂部から順に載せます。
図はいずれも原設計図をトレースした図のようです。
          
             頂部。両側から持ち上げたトラスをピンで留めます。
             重機のない時代ですから、これが大変な仕事だったらしい。

           
            アーチの中途部。下屋の部分が取付きます。


柱脚部分。ここもピン。
グラウンドレベル(GL):地表面をピンの芯位置にしています(上掲写真参照)。
典型的な3ピン構造。ピン一点に力が集中する方策。
こういう架構は、それまではなかったと思います。
これは「構造力学」の成果です。架構=必要空間。見事です。

   今回は紹介しませんが、天井や壁には装飾がありますが、
   架構を飾るようなことはしていません。

アーチ・トラスが建て終わると、その上に屋根が架けられます。
屋根は、棟を中心にしてガラス屋根です。そのクローズアップが下の写真です。


写真の赤枠内を示したのが下の図です。

巨大なアーチ・トラスに直交して約10.5mごとに「つなぎ梁」が架けられ、
その「つなぎ梁」から「登り」方向に「垂木」に相当する部材が伸び、
その上に直交してガラスが載る台:「母屋」が据えられる方法を採っています。

部材相互の仕口:接合部には、かならず円形のハンチが設けられています。
   部材寸法が接合する他の部材よりも小さめになる場合(特に丈)、力がスムーズに伝わるように、
   材寸を徐々に低減させて所定の寸法にしてゆく方法を「ハンチを付ける」と言います。
   最近の仕事では、面倒くさがって滅多にやりません。
   ハンチを付けると、見た目にも自然に見えます。
   かつてM小学校の体育館のトラスでは、つなぎ部材はアーチに、部材相互接続のためのプレートには、
   すべて r を付けました。
   力の流れに応じているように見え、安心感があります(下註参照)。
   実際の力の流れも、見た目どおりなのではないかと思います。[語句追加 3月2日 8.51]
    註 http://blog.goo.ne.jp/gooogami/e/6fec6d219bdeb01d66a5f6e0056ddeab

ガラス屋根の雨仕舞は完全です。
シーリング材などない時代ですから、素直に「水の流下の法則」に則っています。
これだけ段差を付ければ、吹き上がりも心配なかったと思われます。
ただ、左上の棟の部分がどうなっているのかは、写真を見ても判然としません。


この巨大な機械館の構築物は、すべて人力だけでつくり、組立てられました。
組立てにあたってはいろいろな方法が考えられています。
それについては次回紹介します。

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