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ようやく1/1

 HONDA F1の1/1つまり実車テストが可能な風洞(ドーナツ型のパイプにファンを設置し、その中で時速300kmの風を発生させて高速走行時の条件を再現する巨大な装置)がやっと完成するらしい。もっとも本稼動は7月になるらしいの、ここでの成果がレースに反映されるのはシーズン終盤となってからとなるだろう。それにしても今頃、ようやくである。

 F1の世界に本格的な「空力」を持ち込んだのは1967年のロータス49Bである。それ以前のクルマでは、空気抵抗を少なくすることに力を注いでも空気の力を積極的に利用することはなかったが、ロータス49B以降は長いストレートでの空気抵抗が増大することを覚悟の上で、コーナリング時のダウンフォースを増やすことを目的としたウィングの開発が進められることになる。

 サーキットで行われるレースにおいてはいかにしてコーナリングスピードを上げ、ラップタイムを削り取るかが大きな問題になる。そこで登場したのが空力デバイス(付加物)、つまりウィングである。68年、69年のウィングはいかにも「翼」然としていて、実に判り易かった。

 F1をはじめとするレースカーのウィングは飛行機のそれを逆向きに取り付けたもと考えれば良い。飛行機の翼は前からの風を受けると上向きの力、つまり揚力を発生しその揚力で空を飛ぶ。レースカーのウィングは風を受けると下向きの力、つまりダウンフォースを発生し、クルマを地面に押し付ける効果がある。

 現代F1マシンがウィングで発生させたダウンフォースがどのくらいの大きさなのかと言えば、マシン重量の2.5倍ほどになるのだという。マシン重量を500Kgとした時に、1,250Kgのダウンフォースが発生することになる。マシン自重を差し引いても750Kgのダウンフォースがあるわけだから、もし、メビウスの帯のようなサーキットがあったとするならば、F1マシン天井にある路面に張り付いて、つまり背面走行しながらコースを回ることが可能なほどのダウンフォースなのだ。高速のストレートエンドあたりで事故が起きると、時にマシンが高く舞い上がることがあるが、それは裏返しになったマシンがダウンフォースの逆、つまりウィングが発生した揚力によるものなのである。

 さて、ウィングにより発生したダウンフォースによりタイヤは路面に押し付けられ大きなグリップを発生する。これによりコーナーをより速く通過できるようになるわけであるが、コーナーは速くなるが高速のストレートでは空気抵抗を発生しスピードが伸びないというデメリットもまた併せ持つことになる。コーナーの少ない高速型サーキットではウィングをうすく(空気抵抗とダウンフォースを小さく)して対応するだが、このあたりのバランスがドライバーとメカニックの腕の見せ所となる。

 現代のF1ではこのウィングを中心とする空力デバイスが非常に大きなウエイトを占め、各チームともにマシン開発予算の少なくとも15%を投入しているといわれている。その空力開発の切り札が1/1つまり実物大の風洞なのだ。HONDA F1チームはこれまで1/2のものしか持っていなかったのである。一言で風洞とは言っても1/1と1/2ではその建設費に大きな違いがあり、主に資金的な理由により実物大の風洞の建設が遅れていたようである。

 しかしながらシリーズ・チャンピョンを狙うライバルチームはどこもこの実物大の風洞を持ち、実車でのテストを繰り返している。1/2の風洞では/2サイズのモデルでテストをするわけであるが、実物大の風洞では当然実車でのテストが可能となる。2005年シーズン、BAR HONDAの思わぬ苦戦はこのあたりにもその原因の一端があるのかも知れない。

 オールホンダとなった2006年ではなく、新しい風洞が稼動した後、つまり2007年シーズンこそが HONDA F1逆襲のシーズンとなるのではないかと郷秋<Gauche>は見ているが、さて如何に。



 今日の1枚は、なるせの森、番匠谷戸の梅。開花まであとひと月半。
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