福岡市の小児歯科・矯正歯科・障害者歯科 ふたつき子ども歯科 院長日記

小児(障害児を含みます)の包括的歯科医療を提供するふたつき子ども歯科。子育てや食のことも含んだ、院長ブログ。

発展途上国の歯科 その3

2006-07-15 | 国際交流

小児歯科や障害者・有病者歯科をやっていると、治療をしたくてもなかなか治療が難しい場面もあって、予防の大切さが実感されます。現実的に実行できる予防とは何か?と頭を捻って考え、患者さんや保護者の方に提案します。
発展途上国の歯科を考えると、治療のためのマンパワーや経済基盤の圧倒的不足があります。すなわち、治療をしたくても器材はないし人はいないので、やるなら、方法が簡単で経費のかからない予防を、集団に対して行うしかないという状況なわけです。
治療をやろうと思ってもままならないという意味では、この両方は似通っていますよね。途上国も発展とともにむし歯の増加傾向がみられますが、これに対して歯医者を増やして治療という発想(日本がそうでした)ではなく、予防先進国から輸入した予防歯科の概念と方法論を取り入れようというわけです。先日「発展途上国の歯科その3」で書いたARTもその方法論のひとつで、私自身も日本で障害児、有病児、乳幼児に応用することも少なくありません。
いわゆる歯科医サイドからの予防歯科の発信という面では、日本はまったくの途上国で乗り遅れています。日本は教育という面ではまだ高い水準にある国ですから、今後しっかりした発信があれば予防歯科は根付いていくものと思います。

モンゴルの田舎の保健所でARTを行っているSI先生。1999年です。歯科用の台はありましたが、機械やライトは使用不能。ヘッドライトを使用して治療しています。

 

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ステインって何よ?

2006-07-12 | 口の中の問題

「ステイン」という言葉はテレビでも最近聞きますよね。歯の色が良くないと言う時、歯の表面的なものを着色すなわちステイン、エナメル質や象牙質の中の内部的なものを変色と言って区別しています。
乳幼児の上の前歯にこのステインが見られることは珍しくありません。「最近歯の色が黒っぽくなってきて、むし歯ではないかと気になります」とか、保護者からの相談があります。上の前歯は低年齢ではむし歯になりやすい場所ナンバーワンですから、私達も実際診査するまでは大丈夫ですよと言えません。実際診てみると、このステインで薄っすらと黒っぽく着色している場合が多くあります。黒っぽい着色の場合はむし歯と関係ありませんので安心です。ただ着色が強くなってきたら見た目もよくありませんし、歯ブラシで取れるレベルではありませんので、研磨剤を付けたブラシなどを使って、機械的に磨いて除去します。
着色はお茶、種々の食品、成人ではタバコやコーヒーなどの由来のものと、口の中に常在する細菌のうち色素産生菌由来のものがあるといわれています。ステインはよく茶渋のようなものと説明されますが、アメリカの子どもにも見られるわけで、実際の原因はお茶系に限らないわけです。なぜ上の前歯に付きやすいのかといえば、むし歯菌が残りやすいのと同様に、ここは唾液の流れが良くなく種々のものが停滞しやすい場所だということでしょう。
年齢があがるとステインはだんだん少なくなりますが、歯みがき粉を使うことによる研磨剤の効果、色素産生菌のバランスの変化などによるものと考えられます。
同じステインでも歯みがきが良くない場合に見られるオレンジ色~緑色のステインはちょっと違います。これは歯に単に付着しているのではなく、歯に残った歯垢をベースに着色しています。この歯垢が通常より除去しにくいので、単に歯みがきが良くないのか、そのような歯垢+ステインがそもそも歯にしつこく付きやすいという個人差なのか不明です。このような歯垢を機械で磨いてみますと、その下にむし歯の初期が見つかることも多いので要注意です。

この小学生の患者さんで下の前歯に見られるステインは、実際はやや緑ががっており、歯垢と一緒になっているものです。永久歯生え始めの時期でみがきにくい場所ではあります。この場所ではむし歯よりもまず歯肉炎が起こってきます。

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おすすめの本醸造

2006-07-11 | おすすめの店

おすすめの店ではなく、日本酒の話です。
お店でも同様なのですが、高くて良くて心地良いのは当たり前。そういうのは自分的には得意でありません。その手も少しはレパートリーがありますので、接待の時にでもという感じでしょうか。
日本酒で純米吟醸が美味しいとかいうのは当たり前で、どの銘柄であってもその辺のクラスで美味しくなかったら捨てたくなります。本醸造クラスで名前が売れているのは、立山(富山県)とか久保田(新潟県)などがありますよね。冷酒で頂いてもぼちぼち悪くない。最近いい感じなのが、東洋美人(山口県)と花垣(福井県)です。冷酒で、「八海山吟醸だよ」といって出してもOK。本醸造ですので常温、お燗をつけてもOKという便利さ。値段は1升で2000円前後と安いです。その辺の酒屋には売っていないので(残念ながら小谷酒舗には売っていない)インターネット経由が良いかと思います。

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歯科健診~奥歯のむし歯

2006-07-10 | むし歯予防の話

当院の地域には市立および私立の小中学校がいくつかあるのですが、地域歯科医師会のメンバーで分担して5月に歯科検診に出かけました。私はある中学校の担当で、多分100名弱検診したと思います。全般的には、最近はむし歯が減っているという印象は受けるのですが、私が予測していた通りの特徴がありました。

それは12歳前後に出てくる前から7番目の歯、一番奥歯(親知らずはもうひとつ後ろです)の初期むし歯が少なくないということです。ひとつ前の6歳臼歯は、シーラントされてむし歯は発生していない状況だったりします。

むし歯数の統計に使う数字でDMFTというものがあります。これは一人当たりの永久歯のむし歯数+抜かれている歯数+治療されている歯数です。国際比較ではよく12歳児のDMFTが出てきます。日本はかつて他の先進国と比べて圧倒的にこのDMFTが多かったのですが、21世紀になってDMFTが3未満になって来て、やっと先進国の隅っこに仲間入りでしょうか。実はこの数字のほとんどは6歳臼歯のむし歯なので、12歳頃まではこの予防がポイントなわけです。

次の山は12歳臼歯のむし歯さらに引き続きいて10代半ばの歯間のむし歯発生です。子どもが小学校の頃までは健診や予防で歯科医院に連れて行っても、その後はだんだん疎遠になるのでしょうか? ところがその後のいわゆるティーンエイジャーが一番重要な時期ですので、この時期を押さえておかないと「それまでの予防は何だったの」ということになります。子どもも親から自立していき、学校その他も忙しい時期ではありますが、何らかの形でむし歯予防、そして近未来の歯周病予防のサイクルを保ってもらいたいものです。

出始めの右下6歳臼歯にフッ素入りセメントで予防処置をしたものです。出始めの時期は歯みがきもしにくく、上下の歯がかみ合っていないので汚れやすい状況です。歯科でのちょっとしたヘルプでかなりむし歯は予防できます。12歳臼歯も同じ方針でOKです。

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小学校~都会留学プログラムはないものか?

2006-07-08 | できごと
最近、テレビなどで小学生などの山村留学なる話題を聞くことがありますね。都会の子ども達にとって未知の、自然の中での生活を体験でき、逞しくなるのでしょう。また小規模の学校やコミュニティーで、大人や子どもとの密な関わりや人間関係も、年齢なりに経験するものと思います。最近都会にかかわらず失われつつある「地域力」が残されていることは、子どもの健全な育ちに非常に重要ではないでしょうか。
福岡市のど真ん中大名校区は小学校児童88名で分校状態に近く、非常に地域力が大きいコミュニティーです。都会ど真ん中と山村漁村は、実は地域住民が地域を愛し誇りを持つという点でも結構共通点があるようです。
先日の子ども山笠の打ち上げで、大名小の先生に、「大名小もほとんど分校状態ですから、山村留学の発想で都会留学プログラムをつくって、児童数を増やせないものですかね~?都会を体験するのも悪くないと思いますが。」とか訊いてみましたら、児童数を増やすためのプロジェクトがあるような話。実現したら、うちでもひとりふたりはホームステイを受けようかな、とか思った次第です。
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むし歯の初期CO(シー・オー)って知ってますか?

2006-07-07 | むし歯予防の話

学校、幼稚園、保育園などの歯科健診の時期が終わりました。結果記載された用紙を受け取った保護者の方、内容をチェックされますよね。そこで、むし歯のなりはじめや疑わしいとかで要注意歯、またはCO(シー・オーと読みます)がありますとかチェックされている場合があります。
通知用紙が来たら、治療終了などのコメントを記載してもらわねばと歯科を受診される場合も多いでしょうね。ところが、少なくとも福岡市の小学校の通知用紙をよく読むと、COの場合、歯科からのコメント用紙の提出は不要ということになっています。また、COの場所は記載されておらず、注意してくださいとだけ書いてありますので、どこをどのように注意したらいいのか分かりませんね。
COは、写真のように歯の生え際の白濁、奥歯の溝部分の白濁~着色などの初期むし歯です。そのまま放置しておくと進行する可能性も高い一方で、歯みがき、フッ素、シーラントなどでストップしたり、若干元に戻ることが期待されます。すなわち、まだ予防が可能なむし歯なわけです。
ですから、COにチェックされている場合は、用紙提出の要否にかかわらず、ぜひ予防歯科が得意な歯医者さんを受診してみてください。特に、生えて間もない永久歯がそのままむし歯になるのはもったいなさ過ぎです。

上の犬歯の生え際に白濁したライン状の初期むし歯があります。この患者さんの場合、歯並びの関係で磨きにくい場所ではあります。白濁部分を研磨してフッ素塗布。歯みがき指導と、家庭用フッ素の使用を奨めます。

奥歯の溝の部分の初期むし歯。溝が深い歯では、歯みがきのみではむし歯予防に限界ありです。この歯は、シーラントで予防しました。

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電動ハブラシ

2006-07-05 | 歯みがきのこと

乳幼児の保護者への仕上げミガキ指導、小学2、3年生以上での本人への歯ミガキ指導など、当院の歯科衛生士は頑張って歯ミガキ指導を行っています。一般的に重要なことを話して、一般的な歯ミガキを指導しても、まず何も変わらないと思います。そこで、年齢による重要ポイントに個人差も加えて、今ここをこのようにという個別のプランを作って指導しています。でも、磨くのは歯科衛生士ではありませんので、いくら理想的なプランを提示しても実行されなければ、絵に描いた餅。ここが指導の難しく奥行きが深いところだと思います。
別に患者さんが歯ミガキおたくになる必要は無いわけで、楽に無理をせずに気持ちよく歯磨きをして、そのレベルがむし歯、歯周病を進めないものであればOKなわけです。それを助けるもののひとつとして、手用ハブラシより短時間でより歯がきれいになる電動歯ブラシがあると思います。
スタッフも私も通常の歯ブラシに加え、代表的な2種類、すなわち音波歯ブラシ系とスピンブラシ系を使用しているのですが、使用しての感想は皆様々。業界で働く人間でも意見の違いがあって意外でした。きれいになる効率でいえば、音波歯ブラシ、スピンブラシ、手用歯ブラシというのは事実なのですが、音波歯ブラシでは振動が気になるとか(通常しばらく使用すると慣れることが多い)、歯磨き粉が振動で飛んでしまいやすいとかあります。また、歯ブラシのタイプに関わらず毛先が硬いとかちくちくするとかは、振動とか回転能力とかよりメーカーが提供している毛の硬さや形状によると思われます。また、矯正治療中であると電動歯ブラシの振動や回転で歯が痛いという感想もありました。

一番上がオムロンの音波歯ブラシ。元祖ソニッケアには劣るが、実売4000円弱の充電型なのでお手頃。小型だし替えブラシも安いのでお奨め。毛先が細いので若干チクチクする感じはあります。
真ん中は、スピンブラシ元祖のブラウンのもの。3000円弱でこれも充電型。電池型は2000円くらい。これは無難によろしい。
一番下はスリムネック型歯ブラシの元祖、ドクタービー(歯科医院専用)です。

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印象に残る言葉

2006-07-04 | 国際交流
6月30日に書きましたART(非侵襲的修復治療)は、実際のところ日本では学べません。1998年秋のことですが、タイ東北部のチャンライという都市でアジア予防歯科学会があり、ARTのシンポジウムがあると聞き、ついでに九州大学歯学部と姉妹校締結をしているインドネシア大学歯学部を訪れて、現地のARTを見せてもらおうということになりました。九州大学予防歯科のSA先生、SI先生と3名で出かけました。
インドネシア大学でちょっとした講義をした後、ちょうど小児歯科の新任教授就任のセレモニーがあり出席することになりました。そこで新教授の略歴や業績を紹介するハンドアウトをもらったのですが、インドネシア語で訳がわかりません。その中で新任教授の好きな言葉という形で紹介された英語のフレーズが印象的でした。そこにはこのように書いてありました。
Children have neither past nor future; they enjoy the present, which very few of us do.
17世紀フランスのエッセイストLa Bruyere のフレーズのようです。
「子どもは過去も未来も考えず、今を楽しんで生きる。それは大人のほとんどがもうできないこと。」とでも訳せるのでしょうね。
子どもが自分の興味あることをやっている時の集中力はすごいと思いませんか。大人になると単純に何かに集中するということが難しくなって、何かさびしくはありませんか。ちなみに、テレビを見ながらご飯を食べることができたら、子どもとしてはもう失格ですね。
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子ども山笠

2006-07-03 | できごと

福岡市中央区天神の商店街「新天町」の恒例行事、「新天町子ども山笠」の初日が昨日行われました。校区の大名小学校ほか近隣の小学生が中心に参加する催しです。指揮をする締め込み姿の大人は、新天町、地域、大名小学校の男性教諭の方々です。子ども会育成会が協力する地域行事で、大名小学校全児童88名のうち51名の参加がありました。女子は2年生までの参加で、3年生以上は水かけ隊で参加です。

新天町の山笠参加者は大黒流れの方が多いそうで、山笠も7月1日にスタートしていますので、大人達は結構ボルテージが上がってきています。子ども山笠も、初期は参加人数が少なく新天町の方々が小学校保護者に説明会に出かけていた時代もあったそうです。それも来年で20周年になるそうで、来年はまたさらに盛り上げたいとお話されていました。

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フッ素はいつまで塗る?

2006-07-01 | フッ素について
永久歯前歯の歯並びが気になるなどの相談で、小学生が来院することは結構あります。基本的にどの患者さんもむし歯、歯肉の全体的チェックをします。そこでよくあるパターンなのですが、生え始めの永久歯がよく歯ミガキ出来ておらず、むし歯や歯肉の状態が気になります。保護者の方に「最近歯医者さんでチェックしてもらったり、フッ素とか塗ってもらったことありますか?」とか尋ねると、「小さい頃は連れて行っていたんですが・・・」というご返事。子どもも自立していきますので、このようなことはあって当然。
乳幼児の時期は、乳歯のむし歯が早々に出来てしまうと子どもにとって治療その他の処置は大変ですので、フッ素で予防というのはよく分かりますし、私も同感です。ところが、一生というかライフサイクルを考えると永久歯の重要度は大きいわけで、むし歯に関していえば小学校高学年から中高生のいわゆるティーンエイジャーが最もリスクが高い。特に永久歯が全て生え揃ってからの、歯間のむし歯リスクは要注意です。
この時期に歯ミガキの自立も重要なのですが、大きくヘルプするものとしてフッ素があります。ですから先程のような患者さんの場合、「フッ素は今からなのに~」と思うわけです。
高齢者になって歯肉が下がっていくと、根の部分のむし歯発生や知覚過敏が起こるリスクが高くなります。フッ素はこのような症状の予防にも役立ちます。もちろん、成人でむし歯リスクが高い人は定期的にフッ素を塗るのは効果的です。アメリカでは、フッ素は年齢に関係なく塗布するよう奨めています。
このように、少なくとも成人する頃までは定期的にフッ素を塗ってもらうのが良いと考えています。
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