漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

漢方家ファインエンドー薬局(千葉県)
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貴志祐介著「新世界より」覚書

2012-06-05 | 
「新世界より」、この題名と表紙絵を見た時、
ふっと小学校の下校時に流れるドボルザークの曲と一緒になつかしい景色が浮かんだ。


この物語の場所は1000年後の日本の神栖66町。純真無垢な子供たちが教育を受ける過程で神の力呪力を獲得するという。
利根川や霞ケ浦も登場して、豊かな自然に包まれた穏やかな町のようだが
その周りはしめ縄で仕切られ、その外には穢れた魑魅魍魎のような生き物たちがうごめいているという。

1000年の間に人間は殺戮を繰り返して日本も人口が極端に減り、
結局、自然回帰した生活を選んだようだが、しめ縄の外側にうごめく生き物たちに
底知れぬ不安と疑問が湧く。
なぜ、そんな生き物が住むようになったのか。
1000年の間に人間はいったい何をしたのか?

上中下それぞれが400ページを超える長編だけど、読めば読むほど謎が湧き読書が加速する。
そして最後は、ああやっぱり・・・人間ってどこまで罪深いのだろう。

それにしてもこの異空間、よくぞこんなに詳細に想像したものだと感嘆する。
この物語を読んでいる間は、頭の中で現実の生活と切り離すのが難しい。
おにぎりを「鬼、斬り」とか想像してしまうCMの気持ちがわかる

アニメ化されるそうですが(テレビ朝日)、大人にとっても見ごたえがあるんじゃないでしょうか。

ちなみに大野智主演のドラマ密室事件の謎解き「鍵のかかった部屋」は彼の作品

貴志祐介 1959年  大阪府出身