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漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

漢方家ファインエンドー薬局(千葉県)
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森絵都「風に舞いあがるビニールシート」覚書

2010-02-24 | 
自分の人生で「大切なもの」ってなんだろう。
その優先順位ってどんなだろう。
そして大切なもののために何をどれだけ犠牲にできるだろう。

「大切なもの」
それは「自分にとって」だけとは限らない。
自分を必要としている人とか動物とかに、
自分の人生をどれだけ捧げることができるだろう。

そんな問題をテーマにした短編6編がおさめられています。
そのうち最後の作品「風に舞いあがるビニールシート」は2006年に直木賞を受賞しました。

治安の悪い国で打ち捨てられる弱者を、
風に舞いあがりくしゃくしゃにもまれてどこかへ消え去ってしまうビニールシートのような、と表現しています。
そんな人々を救いたいという強い気持ちに駆られて世界中を飛び回った末、絶命した夫。
国連難民高等弁務官事務所職員であり東京で安穏と小奇麗に暮らしてきた妻は、
そんな夫の後に続くことができない。
何も私がそこまでしなくても・・・多くの葛藤が続きます。

ほかに
「器を探して」スイーツ職人のアシスタント
「犬の散歩」里親探しのボランティア
「守護神」大学のレポート代筆人
「鐘の音」仏像修復師
「ジェネレーションX」クレーム客にお詫びにいく社員

さまざまなジャンルの人たちの、「自分のものさし」と世間一般的な声のギャップにもはっとさせられます。

個人的には、「鐘の音」が好きでした。
あれほど強かった仏像への思い。
(もう半端じゃなく、読んでいてものめりこみます)
なのに彼の大切なものは違うところにあって、
無意識のうちにも決断しほかの道を選択していたという人生のお話。

森絵都 1968年東京都生まれ