『座頭市二段斬り』 井上昭監督 ☆☆☆
座頭市シリーズ10作目。悪い出来ではないが、それほど良くもない。可もなく不可もなくというところだろうか。市の殺陣はいつも通り冴えていて楽しめるが、観終わった後に心に残るような場面がなかった。
物語はいつものパターンで、按摩の師匠を10年ぶりに訪れた市は師匠が斬り殺されたこと、そして娘のお小夜が借金のかたに女郎屋で働かされていることを知る。市は女郎 . . . 本文を読む
『偶然の音楽』 ポール・オースター ☆☆☆☆
『オラクル・ナイト』が面白かったので次はこの『偶然の音楽』にトライしてみた。やっぱり変な話だった。ストーリーが明らかに妙である。何をやりたいんだかよく分からない。が、ディテールは非常にしっかりしていて魅力的だ。だからリーダビリティは高い。
主人公のジム・ナッシュは遺産を相続して金持ちになり、車に乗って全米を旅して回る。金がだんだんなくなって . . . 本文を読む
青い婚約者
娘は父親のところへ行って、話があるの、と言った。大事な話よ。新聞を読んでいた父親はその様子からピンときた。だから新聞を折りたたみ、驚きの目で娘を見つめた。紹介したい人がいるの、と娘は続けたが、そわそわして落ち着かない様子だった。今度の日曜日、家に連れてくるわ。それだけ言うと、娘はさっさと行ってしまった。父親は首から上を雲の中に突っ込んだアホウドリみたいな気分だっ . . . 本文を読む
『Breakdown』 Jonathan Mostow監督 ☆☆☆★
『The Thing』に続いてカート・ラッセルものをDVDで再見。昔、HBOでやってるのを観たことがある。
これはSFじゃなくてサスペンスものだ。カート・ラッセルはこういうサイコ・サスペンスみたいな映画にいくつか出ているが、キャラクターがいかにもアメリカンな直情径行野郎なので、何かに巻き込まれてだんだんヤバイ状況にな . . . 本文を読む
『アルトゥーロの島/モンテ・フェルモの丘の家』 エルサ・モランテ/ナタリア・ギンズブルグ ☆☆☆☆☆
以前『禁じられた恋の島』という古い本について書いたが、今回池澤夏樹の世界文学全集で出た『アルトゥーロの島』は同じ小説である。絶版になっているのが納得いかない傑作だったので、こうして新訳で全集に収録されたのは実に喜ばしい。タイトルもメロドラマがかった『禁じられた恋の島』ではなく、原題に忠実な . . . 本文を読む