マーちゃんの数独日記

かっては数独解説。今はつれづれに旅行記や日常雑記など。

『散り椿』を観る

2018年10月05日 | 映画・美術・芝居・落語

 10月1日(月)、御徒町にあるTOHOシネマズへ妻と『散り椿』を観に行った。映像が非常に美しかった。岡田准一と西島秀俊の一対一の斬り合いに息をのんだ。哀切なラブストーリだった。わくわくする要素が凝縮されている映画で、久し振りに映画を堪能した。

 元扇野藩士瓜生新兵衛(岡田准一)は8年前、藩内の不正を訴え出たが聞き入れられず、妻・篠(麻生久美子)を伴って藩を離れ京都で暮らしている。そんな新兵衛には、今もって刺客が差し向けられることがあったが、かつて平山道場四天王の一人であり、“鬼の新兵衛”と恐れられた剣客の彼は、悉く、刺客の襲撃を退けて来た。雪降る一夜の殺陣から幕が開く。
 篠は重い労咳を病み、自分の死期を悟っていた。彼女は新兵衛に「もう一度故郷の散り椿が見てみたい」とつぶやき、「故郷にお戻りください」と懇願するのだった。「わしは、故郷に帰って何をすればよいのだ」と問う新兵衛に、篠は、長年胸に秘めて来た想いを語るのだった。何を語ったのか?それは劇が進むなかで次第に明らかになって行く。(写真:原作。著者は葉室麟)

 妻亡き後故郷に戻った新兵衛が目の当たりにしたのは、藩主代替わりを目前にした側用人と家老側の対立だった。かつて平山道場四天王の一人だった榊原采女(西島秀俊)は側用人に抜擢され、藩の改革に取り組んでいた。采女は、家老の策略で切腹の危機に晒されるが、新兵衛の助太刀があり、采女は命を落とすが、家老側は全滅する。

 この物語の主人公は4人だと私は思う。采女と新兵衛の他に新兵衛の妻・篠とその妹里見(黒木華)。それぞれの思いが交差する。
 采女と篠は許婚(いいなづけ)の関係だった。それを采女の義母に潰された采女の思いは、篠と新兵衛が夫婦と決まっても断ち切れず、篠への未練を恋文にするほどだった。その文を持ち続けて来た篠は死際にそれを新兵衛に見せ「故郷に帰って采女殿を守って下さい」と語ったのだった。この場面で初めて篠の願いが明らかになる。(写真:新兵衛と采女の対決場面)
 篠を深く愛した新兵衛は傷ついただろうが、妻の願いを聞き入れて故郷へ帰ったのだった。篠への想い故に、散り椿の前で剣を交えねばならない二人の男。やがて刃を納めた新兵衛に采女は語る。「新兵衛、お主は篠殿のあとを追って死ぬつもりではないのか」。無言で頷く新兵衛に采女が語る。「やはりそうだったのか。篠殿はお主を死なせたくなかった。だからこそわしのことを話して、助けてやれと言われたのだ。篠殿は、お前を生かすために心にも無いことを言われたのだぞ。その辛さが、お主には分からぬのか」と。(写真:左が篠、右が里見の姉妹)
 この場面に至って初めて篠の深い愛を確信する新兵衛。采女をも自分をも愛した篠。采女への想いは昇華させ、夫婦となった新兵衛を愛し続けた篠の気持ちを。
 政争が終わり、藩を去る新兵衛の後を里見が追いかけてくる。「どうしてもここを去られるのですか。私の胸の中にいる姉が去らないで下さいと言っています」。姉にこと寄せて新兵衛への思いを告げる里見に「私が藩に留まることは出来ません」と去っていく新兵衛。私が最後感情移入したのは里見だった。(写真:去る新兵衛を里見が追いかけて来る場面)

 

 今日の一葉:中門岳山頂付近
 

 


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