マーちゃんの数独日記

かっては数独解説。今はつれづれに旅行記や日常雑記など。

墓参り

2017年10月30日 | 

 29日(日)から30日(月)に掛けて、墓参りの予定が入っていて、現在、福島県「芦ノ牧温泉」に来ている。今回のブログは「舟木本洛中洛外図」について書く積りだったが、ネット環境が限定されている上に、「舟木本」ミニ屏風などの資料を持参していないので、急遽、内容を「墓参り」に変更。

 妻の実家の菩提寺は会津若松にある。私の方の墓に比べて遥かに遠い。前回の墓参りから、私の場合12年が経過していた。妻は今年は是非と思い至り計画を練り始めた。王子⇔会津若松往復のJRバスの早割が5000円と格安で、宿も「芦ノ牧温泉」の「丸峰観光ホテル」を楽天ポイントを活用し、両方のネット予約を終えていた。
 昨日、7時45分発の王子発のバスは雨の影響でやや遅れたものの、11時45分に会津若松着。ここで、深谷から電車を乗り継いでやって来た義妹マコちゃんと合流。タクシーで菩提寺へ。この頃から激しい雨となって来たが、無事墓参りを済ませ、昼食は有名な「満田屋」へ。マコちゃんの心積もりは昼食をこのお店で、だったようだ。
 




 味噌田楽の人気のお店である。待つこと30分で漸くカウンター席へ。店内を見渡すと、テーブル席が12名、座敷が12名、カウンター席が13名。他に別室もある。私達は「味噌田楽コース」を注文。こんにゃく(2本)・とうふ生揚・おもち・さといも・しんごろう・身欠にしん、の6本がセットで1300円とお得なコース。目の前で特製の味噌を付けて、炭火でじっくり焼くのを眺めながら、ビールを嗜んでいると、超スローペースで焼きあがってくる。味噌屋だけあって味噌が上手い。このお店は3度目だったが、何故か今回が一番美味しく感じられた。
 コーヒーブレイクの後会津駅まで雨の中を歩いた。寺から満田屋までの移動時間と合わせると1時間は歩いただろうか。雨にも拘わらず観光客が多いことに気が付く。洒落た老舗が沢山ある。ここ会津は城は爆撃されたが、城下町の良さが多々残っている。今日の午後は晴れれば、じっくり街を散策したい。若松の良さを味わいたい。
 さて若松駅でマコちゃんと別れ、私達は会津鉄道で芦ノ牧温泉へ。ここ「丸峯観光ホテル」は「プロが選んだ日本のホテル・旅館100選」にも登場するほどの名ホテルだった。温泉が格別に良い。30mの大窓が巡らされた「渓流展望大浴場」からは大川の清流や紅葉も眺められた。「古代桧風呂」は昨夜は貸し切り状態だった。(写真:古代檜風呂)





   
       (渓流展望大浴場)


  


講演「舟木本洛中洛外図と豊国祭礼図の謎解き」を聞く(その1)

2017年10月27日 | 映画・美術・芝居・落語

 10月14日(土)、文京アカデミー主催の特別公開講座「古地図を読み、屏風絵を語る」が「文京シビック小ホール」開催され、参加してきた。
 東京大学史料編纂所付属画像史料解析センターの設立20周年を記念しての公開講座だった。

 第1部が「古代荘園絵図が伝えるメッセージ」 現センター長 山口英男氏
 第2部が「舟木本洛中洛外図と豊国祭礼図の謎解き」 前センター長 黒田日出男氏
 お二人の先生は何れも大きな画面へ映像を映し出しての解説で、実に実に面白かった。今回のブログでは第2部を聞いての驚きを綴っておきたい。(写真:舟木本洛中洛外図の右隻)
 黒田氏は「解析センター」を立ち上げた方で、今回のサブタイトル”デジタル画像で細部までクローズアップ!-”とあるように、二つの屏風の細部を大場面に映し出しての解説。僅か2cmの絵が大型画面いっぱいに映し出されてきた。普通、画像を大きくすればするほど画像はぼやけてしまうのだが、凸版印刷株式会社が開発したデジタル技術によってぼやけない画像が見られた。

 黒田氏の著作の一つに『謎解き 洛中洛外図』がある。「上杉本洛中洛外図」は信長が上杉謙信に贈ったとの結論に至る、面白い謎解き本で、このブログでも2013/11/17 2013/11/19 に登場させていた。その本の記述から真面目な学者タイプんの方を想像していた。しかし、タブレット片手に登壇した黒田氏は、気さくな感じの学者先生だった。普通机に置かれたパソコンを操作して画面を映し出す方が多いのだが、黒田氏はタブレッツトを持ち、移動しながらの画面を操作し、聴衆に語りかけた。
 こんな風に本題に入っていった。
 「高さ163cmの豊国祭礼図のデジタル版は本邦初公開で、皆さんが最初に見ます。『舟木本』と『祭礼図』の二つをなぜ選んだのか?この二つは近世初期の風俗画の出発点とも言える格別の傑作で、岩佐又兵衛は今後ますます注目されていく絵描きです。(写真:舟木本洛中洛外図の左隻)
 『舟木本』は去年国宝に指定されました。『祭礼図』はまだ重要文化財ですが、予言しておきますが、いずれ国宝に指定されるでしょう。『舟木本』は今までは岩佐又兵衛とその工房の作品という風に言われてきていましたが、岩佐又兵衛の作品と言っていいでしょう。岩佐又兵衛の作品だと断定することが出来ない長い歴史がありました。岩佐又兵衛の作品だということに関しては慎重だった。今日はこの作品は岩佐又兵衛作ということで聞いてください」
 戦後の岩佐又兵衛研究を終始リードしてきた辻惟雄氏は「舟木本洛中洛外図」の作者は<又兵衛前派>と長いこと唱えてきた。この「舟木本」を岩佐又兵衛作と認めたのは最近のことだが、黒田氏はこのことには触れなかった。「舟木本」の中身は次回に。


「ー富士を超えたー」北斎

2017年10月25日 | 映画・美術・芝居・落語

 10月18日(水)、「愛知県立図書館」から「あべのハルカス美術館」へと向かったが、見知らぬ土地への旅は遠く感じられた。名古屋を経由し、新大阪で新幹線から東海道線に乗り換え大阪へ。そこからは環状線内回りで天王寺へ。美術館は駅前ビルの「あべのハルカス」16階にあった。平日にも関わらず美術館前には物凄い行列。「入館には30分待ち」と書かれていた。入場券購入の列から並んだ人は入館まで1時間は待たされたそうな。今や世界的に有名となった北斎の人気は鰻上りと再認識した。
 あべのハルカス美術館と大英博物館との国際共同プロジェクトによる「北斎ー富士を超えてー」展の開催期間は10月6日~11月19日。大英博物館ではチケットが完売されたとか。多分、英国での展示とほぼ同一のものが展示されたのだろう。洋行帰りの展示会。
 展示作品は私たちが行った前期で170点あまり。大混雑の会場でこれらを全て丁寧に観るには3時間はかかっただろう。強行スケジュールなので、出品目録片手に、肉筆画を中心に、これはと思う作品を重点的に鑑賞した。観られて良かった!との3点のみを綴ることに。

 「The Great Wave」の名前の方がポピュラーになってしまった「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」、辛うじて観られた。版画は一番前で見たいのだが、その周りには大勢の人。それでも待つこと暫しで、辛うじて最前列へ。今まで何度かこの作品を観てきたが、この浮世絵の刷りが格別に上質なのだろうか、空の色の微妙な変化と質感が感じられた。波の一瞬を捉えた筆力を凄いと改めて思った。






 小布施の「北斎館」に置かれている上町自治会の屋台天井の「濤図」は、帰郷する前に阿倍野で途中下車していた。北斎館では下から見上げて観たのだが、ここではすぐ目の前に展示されていた。板に描かれた「男浪」と「女浪」の二図。波だけを特化して描いた、まさに「活きた波」だが、屋台にふさわしく装飾多岐なデザインになっている。小布施の豪商・高井鴻山に招かれたお礼に描いたもので、この時86歳だったとか。(写真は男浪図と女浪図)
   

 晩年の作と言われているのが「富士越龍図」。90歳で死した北斎の最晩年の作である。”冨士の北斎”の最終作が富士であったとは、出来すぎた「落ち」とも言える。そこから昇る龍が北斎に思えてくる。
 




「長沢芦雪展」で虎図を観る

2017年10月23日 | 映画・美術・芝居・落語

 今回の旅行の主目的は10月18日に行った「長沢芦雪展」の「愛知県立美術館」にあった。朝7時33分、東京駅発のひかり461号に乗車し、名古屋で市営地下鉄東山線に乗り換え「栄」で下車。9時半には目的地に到着。「愛知芸術文化センター」10階にある美術館の開館30分前で待つ人は10数名。
 長沢芦雪の「虎図」を観たかった。その「虎図」は南紀・無量寺の襖に描かれていて、この特別展では、その《虎図襖》と《龍図襖》が、無量寺方丈の障壁画の配置を再現して展示されるという。










 普通の展示ならば、二つの襖絵は並列配置して飾られるだろう。しかしここでは二つの襖図が対面していた。無量寺方丈では正面に仏、左側に《虎図襖》、右側に《龍図襖》が、上の図に見る如く、向かい合っている。無量寺ではその両襖図を座して鑑賞するところ、ここでは、立った状態で鑑賞出来るように、空間が構成されていた。虎と龍が睨みあっているように見えた。龍が口を開け「あ」と、虎が口を閉じ「ん」の一対が「あうん」と取れる形を作っているようだった。
 特に「虎」が凄い。真正面からこちらを見据える顔は迫力に満ちている。(妻は超かわゆい、と言っているが、私にはそうは見えない)。前足を揃えて力をためて今にも飛びかかろうとしているように見える。この配置の仕掛けの妙は襖の裏が見える点にあった。裏に回って襖を見ると、そこには水辺で魚を狙う子猫が描かれている。しかも子猫は《虎図襖》の虎の顔の真後ろに描かれているのだ。
 図録冒頭で山下裕二氏は「魚の目から見れば、子猫も虎のように猛々しく見える、ということを表したかったのだ」と書いている。サブタイトルには“京のエンターティナー”とあったが、芦雪は人を驚かせ、楽しませようというサービス精神が旺盛な絵描きだということが実感できた。
 芦雪は虎や龍だけでなく実に多くの動物たちを描いていた。分けても子犬と猿が多い。子犬はどの犬も可愛らしく、猿はユーモラスである。犬猿図のなかで、私が気に入った一枚を上げれば右の”巌上母猿図“だ。金地と緑が形作る空間に悲しげな母猿が一匹。


                 
 全ての絵の中では、極端に鋭角的に描かれた冨士山と、翼を水平に広げグライダーの編隊のような鶴が描かれた上図”富士越鶴図“が、私は一番気に入った。


龍光院の「曜変天目」を観る

2017年10月21日 | 映画・美術・芝居・落語

 18日(水)から19日(木)にかけて、愛知県立美術館「長沢芦雪展」、あべのハルカス「北斎展」、京都国立博物館「国宝展」と回ってきたどの展示も充実したもので素晴らしかった。取り分け強烈な印象に残ったのが「国宝展」の「曜変天目」(京都・龍光院)。”門外不出”と言われている「曜変天目」が出品されているとは知らなかった。会場入口で初めて知って、まずは1階のこの国宝へと駆け付けた。という訳で、今回のブログは京都国立博物館を綴ることにする。(写真:図録より、龍光寺の曜変天目)
 京都国立博物館は開館120周年を迎えていた。それを記念しての「国宝展」とあって、ここの総力を上げての特別展覧会だったのだろう、国宝のみで210点の多きにわたる展示。それも、仏画・絵巻物・絵画・彫刻・陶磁・考古・・・・と多方面に及んでいた。すべてを丁寧には見るのはかなり疲れるので、好みの、陶磁と絵画と考古の分野を重点的に鑑賞することにした。
 「曜変天目」は1階に展示されていた。拝観順路は3階を示していたが、その流れから離れていきなり1階の「曜変天目」へ向かった。小さな四角い展示ケースの周りにまだ人はそう多くはいなかった。そのケースを回りながら鑑賞すると、真上からの疑似自然光で、陶磁の内側が玉虫色に光るのがはっきり見えた。この陶磁、滅多に出品されることはなく、龍光院でも展示されないから、“光らない”などと言われてきたがそんなことはなかった。1周で終わらせるのは勿体ないので3周もして、しっかりと見た。陶磁は玉虫色に光っていた。(写真:図録より陶磁の内部)

 出品一覧を見ると、四期にわたる展示のうちⅡ期(10月17日~29日)のみの展示。その情報を知らず、偶然にも、僥倖にも鑑賞することが出来た。よく知られるように「曜変天目」は世界に3点のみ存在。その全てが日本で、「静嘉堂文庫美術館」と「藤田美術館」と「龍光院」が所蔵している。今年に5月に藤田美術館所蔵の陶磁を見ていたから、これで3点すべてを観られたことになる。



 陶磁を観終えて3階に回ると、考古の分野で懐かし縄文土器が展示されていた。茅野市に出土した、縄文のビーナスと仮面の女神だ。更に初めて見るのだが、「縄文の女神」(山形県立博物館保管)と呼ばれる土偶が展示されていた。この土偶は山形県舟形町からの出土と知った。八頭身とも見える、均整の取れた体形。茅野から出土した土偶とはまるで雰囲気が違う。(写真:縄文の女神)











 仏画では「釈迦金棺出現図」(京都国立博物館所蔵)には驚かされた。解説には「涅槃に入った釈迦が、入棺後に、遅れて到着した母の摩耶夫人の嘆きを鎮めるため、起きあがり説法した場面を描く」とあった。
 この多数の国宝をじっくり鑑賞するには図録購入しかないと思い、思い切って3000円で図録を購入して来た。折に触れて眺めたい