4月26日(木)は「四月大歌舞伎」の千秋楽だった。歌舞伎観劇のチケットを頂けるのはこの3月までと思い込み、自前で、3階から仁左衛門を観たのは10日前だった。勘違いがあり、4月までチケットを頂けるとは知らなかった。それも千秋楽の観劇。同じ演目を同じ月に2度観た記憶はない。
悔しいながら、1階席と3階席では観えてくるものが違っていた。3階席では主役の表情をはっきり見たくてオペラグラスを何度も使ったが、それだと全体像を捉えられない場面が多々あった。1階席では時折オペラグラスを使用したが、全体を見渡せ、脇役の細かい芸が後に続く場面の伏線となっているのにも気が付くことが出来た。パンフレットをしっかり読んでの観劇だったので、時蔵の早変わりの場面など予想しながら観劇が出来た。
最終場面、弥十郎・皐月夫妻によって左枝大学之助は討取られ幕となる。が、仰向けに死んだ大学之助の前に幕が下りて来てきて、大学之助はむっくと起き上がり、仁左衛門は二人を従えるように正座し、響く声で「本日はこれにて」と言い切り幕が引かれた。
ばらばらと帰り始める人もいたが、大多数は総立ちになり拍手が始まった。千秋楽だったからか贔屓筋かと思われる和服姿の綺麗どころ多数の、前の方での動作は特に目立った。1分以上続くカーテンコールの拍手。歌舞伎でこの様な場面でのカーテンコールはあり得ないと思っていたが、幕は再び開いた!!正座し頭を下げる仁左衛門へ万雷の拍手。仁左衛門は顔を上げると、客席に向かい拝む様に手を合わせた。又もや万雷の拍手を浴びて幕。本当の千秋楽と相成った。
『絵本合法衢』の初演は1996(平成8)年で仁左衛門52歳のとき。うんざりお松を演じる玉三郎との共演だった。それから22年、今回が5回目の上演で彼は既に74歳。(写真:舞台写真より。仁左衛門の太平次と時蔵のうんざりお松)
「“これで最後”とお話したら、“一世一代”と銘打つことになりました。役者は年を重ねてよくなるところもありますが、出突っ張りのこの役を、お客様の期待に応えるように25日間演じ続けられるのは、これが最後かな、と思いまして」と語っている。
四月大歌舞伎の千秋楽だけでなく、仁左衛門の『絵本合法衢』の千秋楽なのだ。そうと分かっている人々はなにがなんでももう一度幕を上げて貰いたかったのだろう。そうとは知らず偶然にもこの場面を目撃した私達は感激しての帰路となった。