マーちゃんの数独日記

かっては数独解説。今はつれづれに旅行記や日常雑記など。

『いまだ下山せず!』を読む(その1)

2009年10月30日 | 読書

 10月24日(土)、吉田敬子さんの「鋸屋根」についてのトークショーを聞きに、自転車で谷中へ出かけようとすると雨、インフルエンザが流行っていることだしと理由を付けて日和りました。その夜から読み始めたのが「いまだ下山せず!」(泉康子著:宝島社文庫)です。
 かって10年ほど前に読んだことがありました。迫真の山岳遭難ドキュメントです。もう一度読みたくなり、再読を始めました。一度目はどんな結末をむかえるのかを一刻も早く知りたくて最終章まで”一気読み”してしまいました。今回は地図を傍らに置きながらの熟読でした。再読して新たな感動に包まれました。物事に誠実に、ひた向きに取り組む人間達の織り成す物語だからです。

 話は1986年12月28日に遡ります。厳冬期の槍ヶ岳を目指して縦走に出かけた「のらくろ岳友会」の3名は、予定日を過ぎても下山せず、遭難が懸念され始めます。3人の計画は、中房温泉経由→燕山荘→大天井岳→(喜作新道)→西岳→槍ヶ岳→横尾で、エスケープルート(逃げ道のこと)が常念岳から上高地へ。この計画の最終地点「木村小屋」での捜索活動から物語りは始ります。
 何処に消えたか分からない3名を求めて懸命の捜索活動が開始され、ヘリコプターも飛びますが、皆目その姿を見出せません。遭難を知って豊科駅近辺の捜査宿には家族や会の仲間のみならず、山の友達が続々と詰め掛け、本格的な捜索活動が展開されます。しかし、手がかりは全くつかめず、次第に生存へ希望が消えかけていきます。

 このドキュメントの著者は「のらくろ岳友会」の前副代表泉康子さん。会の”縁の下の力持ち”的存在の方で、そこから長く続く捜索活動の中心メンバーであり、捜索活動の膨大な記録をしっかり取っていた方。その泉さんが中心となり、遭難2年後に「槍への道」と題する報告書を発行していますが、そこには書き込む事が出来なかった捜索の日々の悲喜劇にスポットをあてた、もう一つの報告書が、この「いまだ下山せず!」なのです。

 第1次捜索活動は虚しく終わり、生存への期待を諦めて、何処へ消えたのかを求める第2次捜索活動。著者が意識したは否はわかりませんが「
失踪人捜し」のミステリーが提示されます。「3人の男は何処へ消えたか」という謎を著者達は追い掛けるのですが、その記述がそのまま読者への謎の提起にもなっていて、ミステリー小説を読んでいるような感覚になります。当時入山していた山岳会からの情報収集に全力で取り組みますが、それらの情報を繋ぎ合わせても、何処へ消えたかは「難解なパズル」、どうしても解けないのです。(次回ブログに続く)