崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

『黄海旅行記』

2014年10月23日 04時46分22秒 | 旅行
ある日下関に寄ったと突然の電話で、会ったことがあり、その時ふらりと旅をするロマンチストであると感じた平井敏晴氏である。先日は彼が私にある雑誌社からのインタビューを担当することになったと聞き、嬉しかったが台風で日程もインタビューアーも代わった。平井氏のご著書の『黄海旅行記』が届いた。黄海とは朝鮮半島の東海(日本海)の反対側の西海を指す地名である。地球上には海に色をつけた黒海、紅海、青海そして黄海がある。水の色が黄色い。黄砂の影響はより古く水の色にまで染みついていたのである。その海にも魚は豊富、特にイシモチが多く、その漁業について拙稿「波市」がある。朴景利の小説「波市」もある。
 黄海の対岸には中国の上海や大連があり、飛行機で軽く旅行ができる。弥生時代に稲作がこの海を渡って日本や韓国へ伝来したという説もあるが、その海を渡ったということが実感出来なかった。しかし最近海上を旅行しながら近いと感ずるようになり、その説にも信憑性を感じるようになった。平井氏の旅行記はその近さと「国境に縛られた旅は、もう古い」と言いながら韓国からフェリーで黄海を渡り、中国の町へ、縦横無尽に歩きながら異人、異物にも違和感なく、触れ合う風景が自然に伝わる。
 私は大部前にアジアを調査旅行して旅行記を韓国語で書いたことがある。ただ見て体験したことだけを書いた。あるテレビ局の人から批判を受けた。異域で人や事物に出会っても嬉しさや辛さの感情がまったくないと言われた。私は読者が読んで感情と思索を持つようにと、客観性を維持して書いたものである。その後私の旅行記は旅と思索に変わった。平井氏は韓国・中国を内側に入れて歩く点が注目される。そして東アジアの文化とレジャーと美食にあふれている。ツアーでもなく一人旅を誘う案内書にもなっている。今は「異文化」という言葉が大げさに感じるようほど情報にあふれている。

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