崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

九州大学で講演とシンポ

2009年07月19日 06時18分01秒 | エッセイ
 昨日は猛暑の中、九州大学で基調講演として「国策・プロパガンダ映画のむこうに」という題で講演して「植民地時代の映像をどう観るか」というシンポジウムでパネラーとして語った。会場は満員であった。シンポの司会は西日本新聞の平原奈央子氏、パネラーは有馬学教授、下川正晴教授であった。私は戦後の反日韓国で日本の植民地を研究しはじめ、さらに視野を広め、世界的に植民地を研究する中、良い映像資料がありながら研究されていないことから映像に関心を持つようになった経緯をまず語った。日本植民地政府は植民地朝鮮のプロパガンダ的、あるいは朝鮮植民地の状況を広く宣伝するために映画を作成しており、それに関心を持ったこと、そして「志願兵」「朝鮮海峡」「兵隊さん」を3本セットで公開する意味を語った。
 「兵隊さん」は私個人として面白い作品である。私は陸軍大尉として陸軍士官学校の教官をした経験からその訓練の内容が日本の「兵隊さん」のものとまったく一致するところに驚き、「懐かしく、面白く、感動した」と語ってしまった。当然反論があると思った。そこにこの作品は「つまらない作品だ」と下川氏が発言した。期待した通り論争になりそうになったとき聴衆から多く手が挙がった。引揚者の証言的な意見と作品の見方にプラスになるものが多かった。私は人々が「つまらないもの」を研究しているかもしれない。シャーマニズム、植民地、捨てられた映像、そして数々の私の論文のテーマがそうかもしれない。

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4 コメント

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Unknown (下川正晴)
2009-07-19 14:27:57
崔先生、昨日はありがとうございました。
先生の基調報告のおかげで、いいシンポジムになりました。

映画「兵隊さん」に関する私のコメントについて付記します。一部誤解があるようです。

会場で述べたように、「(「発掘された過去」に収録されている)他の7本の映画に比べると、今回の作品は、つまらなかった。当時の朝鮮映画人の名誉のために申し上げておく」とコメントしました。あくまでも他の作品との比較論です。

「なぜつまらない作品になったか?」
「それは、有馬教授が指摘されたように、朝鮮軍側に徴兵制試行への警戒心があり、それが背景にあったのかもしれない」と、コメントをいたしました。

先生が「つまらないもの」を研究しているなどと、私が考えているわけでありません。
そうでなければ、先生を基調報告の講師にお招きしないでしょう。

2年前から、大分や別府で「発掘された過去」上映会を続け、今回、福岡での上映会・シンポを提案したのも、先生の基調報告にあるように、「プロパガンダ映画の向こうにあるもの」を見ていこうという趣旨です。

先生の文中にある
<「プロパガンダ作品というのは今の時点から見ると「つまらない作品だ」と下川氏が発言した>
という記述は、正確ではありません。

なお私の肩書ですが、「映画評論家」という先生の記述には面喰いました。

引き続き、「植民統治下の映画」に関するワークショップ、上映会などを計画しています。今後とも、よろしくお願いします。
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Unknown (下川正晴)
2009-07-19 14:30:19
訂正
徴兵制試行→徴兵制施行
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Unknown (参加者より)
2009-07-19 15:54:34
劇映画として見たとき、率直に感じる「つまらなさ」にこそ、深い考察の入り口があると思いました。

おそらく会場の大部分が感じた、物語としての「つまらなさ」について話し合えたことで、シンポウムが表面的に終わらなかったと思います。

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Unknown (崔吉城)
2009-07-19 17:27:20
 お二人のコメント有難うございます。一般に公開でありましたので深く掘り下げることができませんでした。しかし良いシンポと思いました。猛暑の中、遠くから集まった聴衆に「つまらない作品」を公開したということになると、主催側に問われますのは当然です。作品との比較かないかというより、その価値判断の基準を教えてくださったら誤解は生じなかったと思います。多くの聴衆も私も誤解したようです。その点、文を校正します。済みません。
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