崔吉城との対話

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映画「春香伝」(林権澤監督)

2014年11月02日 05時08分56秒 | 旅行
昨日は雨にもかかわらず受講生の出席はよかった。「楽しい韓国文化論」で映画「春香伝」(林権澤監督)を一緒に鑑賞した。国文学時代の文学概論や講読の時間を思い出した。朝鮮王朝時代には処女の石碑を多くたてられていた。今でも韓国では地方を歩くとき「烈女碑」や「烈女門」に出会うことがある。それは未婚死者の怨念の祟りを恐れて立てられた民間信仰によるものであることを明らかにした村山智順の研究は有名である。南原にも美女春香の位牌写真が祀られている。それに因んだような恋の物語り、韓国最高の古典名作小説が「春香伝」である。
 元々口伝によって物語として伝承されて来たものが小説化され、19世紀に申在孝によりパンソリ「春香歌」として脚色して広く演じられるようになった。儒教的な貞節を強調する時代に身分を越え、性愛など多様な解釈がある。つまりヤンバンの李夢龍と卑の妓生の娘・成春香と出会い、恋愛をする。そして別離、再会まで貞操を守るための苦難の話である。後年夢龍は暗行御史として南原に潜入した。この映画のクライマックスは春香が夢龍であることに気づいた瞬間、気を失うことである。私がこの場面でシャットダウンした時拍手が出た。
 王朝時代にも民衆の中には常に王朝に反抗意識を持っていたと解釈される。貞操と言っても女性の貞操だけではなく、男性にも貞操感があるのではないかという質問が女性から出た。性と貞操に関する私の講義のようになり、終わりの時間になった。劇は終始パンソリ歌で行われて日本人にはなじみが薄いかと心配したが意外に受けがよかった。それは日本の浪花節と通じるからである。忠臣蔵や歌舞伎など日本文学との関連性での議論にもしたかった。

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