崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

作家白雨岩氏と通話

2007年05月05日 07時00分11秒 | エッセイ
 私は1980年代に調査団を作って巨文島でフィールドワーク中ある住民から長編小説『イノンドル(こやつら)』の話を聞いた。その小説はこの島のことを悪く書いたので住民たちが抗議して販売禁止になったという。私は早速その出版社に電話して十数冊を注文して調査団全員に配り、意見を求めたことがある。今度、再調査前にその作品を速読した。19世紀末巨文島に西洋の船と日本人が現れた時、住民たちがそれに対応して生き方を変えていくさまを批判的にみており、伝統的な生活習慣を守っていこうとする主人公のフクドルが、片思いの女性が日本人と密通したことに憤慨して、その性器の汚れを海水で洗わせるなど、硬い人物像が設定されている。小説は全羅地方の方言で面白く展開されている。一昨日その作家白雨岩氏と通話した。彼は発売禁止の理由は意外に政治的なものであると言った。