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廃墟

金曜日、。昨日は、遅くまで、「廃墟解体新書」というDVDを観る。全国の廃墟を探検するというドキュメンタリーで、全部で7つくらいの廃墟が紹介されている。昭和7年開業で10年前に廃業したアールヌーボー調の観光ホテルや地域医療に貢献して15年前に廃業した大型病院、廃炭鉱や廃校、一村丸ごと廃村になった村、麻布のゴーストタウン、軍事要塞など。

はじめの一本だけ観て寝るつもりだったのだが、映像が美しく、興味深いので全部観てしまった。ウェブで「廃墟」をキーワードに検索すると、かなりヒットする。廃墟探検はブームでもあると言われる。ぼくもそうだが、なぜ、ひとは廃墟に惹かれるのだろうか。

昭和7年開業の廃観光ホテルは、山の中に建っている。ゆっくり、自然に還るところである。その広間は大きく、作りは堅牢で、一面のガラスから差し込む夕日が、なんとも言えない雰囲気を醸し出す。天井は、雨漏りのせいで、ところどころ、カビが繁殖している。その映像を観ていて、「滅びの美」という言葉が浮かんできた。盛んだった時代を経て滅んでいくときの事物の美しさ。一時、地上に住まう人間の残した痕跡が、母なる大地に還る一瞬の光芒。

東北の廃村を探訪したレポーターが、雪の降りしきる画面の中で、「普段なら、この寒さは不快なものですが、こうしていると、この寒さを、この村に生きた人も感じていたんだなと思い、当時の人たちに触れたような気がします」と述べていた。この言葉は印象的だった。山に依存した生活をしていた93人ほどが住んでいた村。生活道具はそのまま、人だけがいない。

商都、大阪の防衛のために小島に作られた軍事要塞。明治20年に作られたという総レンガ作りの要塞は、その目的を失ったまま、時間だけが流れた。無意味。その要塞は無意味に還ったのだろう。まるで、人間の行いはすべて無意味であるかのように。どこからか、笑い声が聞こえた気がした。



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※ 「廃墟解体新書」監修者の栗原亨さんのウェブサイト。



コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
廃墟 (あきこ)
2007-03-27 23:58:00
四方田犬彦は「廃墟」が観光地になってゆくことへの大いなる皮肉を言っているようですが、「廃墟」が沈黙の「廃墟」のままだったら、そこに天使が降りてきて、遠い時間に耳をすませてくれるのかな?
 
 
 
Unknown (冬月)
2007-03-28 01:00:28
■観光化されていても、いなくても、死者の声を聴く耳が必要なんでしょうね。天使じゃなくて己で。その耳を持つものこそが詩人だとぼくは思っています。
 
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