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SICKO(2007) by Michael Moore

■旧暦7月25日、日曜日、

(写真)無題

7時に起きて、ブログの更新。

仕事の参考に、マイケル・ムーアの「SICKO」(2007年)を観る。非常に面白かった。これだけシリアスなテーマなのに、笑いがあるところに感心した。5,000万人が無保険で、毎年、18,000人が医療費が払えずに死亡する国。金がなくて民間保険に入れないで死亡する人が問題なのは、もちろんだが、保険に入っていても、審査が異常に厳しくて、保険金が下りない。保険会社は自社の利益だけをえげつないほど考えていて、狂ったような理由を付けて保険給付を行わないのである。曰く「実験的な医療」曰く「深刻ではない」などなど。保険審査は保険会社の医師が行うのだが、この報酬制度が凄い。保険料の申請拒否件数に応じてボーナスが出るのだ。中には、申請拒否のスペシャリストを抱えている保険会社もある。患者も知らないような既往歴や非意図的な偽申告を、刑事のように、丹念に調べ上げてきて、契約解除に持ち込むのである。その結果は患者の死亡である。

連邦政府の議員たちも、保険業界から多額の献金を受け取っていて、国民皆保険をソビエト流の国家社会主義と結びつける洗脳を繰り返す。これ、すべて、金のため。医療費が払えない患者は、点滴を受けている最中でも、傷口が治りきらずベッドに寝ていても、タクシーで貧民街に捨てられる。「お大事に」の一言だけで。金のない者は人間ではないという制度設計は、ニクソンとカイザーが始めたものだが、まさに今のアメリカの本質が現れているように感じる。ある意味で、保険会社、製薬会社、病院、政府による、合法的な命の強盗である。自分たちのことは自分たちでやる、国の介入は社会主義だという思想は、本質的には、富める者のための思想であり、端的に言って、金儲けの思想である。そのベースは、自己責任論と同じように、きわめて幼稚で単純な社会認識がある。ただ、救いがあるとすれば、マイケル・ムーアみたいなアメリカ人もいるところかもしれない。

映画では、国民皆保険で医療費ただのカナダ、英国、フランスとユーモアたっぷりに比較してゆく(フランスでは子育て中の家庭には、一日4時間の家事ヘルパーも付く!)。最後は、医療費無料のキューバのグアンタナモ基地の病院まで、患者数名と突撃していき、「アルカイダと同じ医療を!」と叫んで、拒絶されると、アメリカの宿敵キューバの病院へ向かい、全員無料で最先端治療を受けて帰国する。これは、漫画みたいだが、実に、ユーモアと批評精神の溢れる映画だった。マイケル・ムーアの巨漢ぶりと表情も、そこにいるだけでおかしみがある。

カナダ、英国、フランスの医療・福祉制度は、日本も参考にできる余地が多くあるんじゃないか。変に忙しいばかりで、命を楽しむゆとりをもてないのは、自己責任だけではあるまいよ。



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