goo

詩的断章「散華」







散華





父は沖縄で散華しました
その散華ということばが
長い語りのなかでピカピカ光って
どうにもまぶしい
目を見開いていられないほどに
どうにもまぶしいのである
時間とともに
ますます
まぶしく
どうして
こうもまぶしいのか
太陽をずっと見てゐることはできない
若いころ 憎んだ
散華を
どうしていまさら まぶしいなどと……
大尉はなにも語らない
知覧へ向かう前に

桶川上空を一度

旋回したのみである
大地は
いまも
その赤とんぼの爆音を憶えてゐる
孤独な花びらのさきに
一歳の女の子が
遺された

朴の花は 風に
散華するとき
微かな音を立てるという




初出「浜風文庫」






コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

一日一句(1633)







蟬の死や日のあたりたる土の上






コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )