電脳筆写『 心超臨界 』

リーダーシップとは
ビジョンを現実に転換する能力である
( ウォレン・ベニス )

クラッシックの普及、発展を助けたい――宗次徳二さん

2007-04-18 | 08-経済・企業・リーダーシップ
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「創業者利益は『預かり金』」
壱番屋創業者特別顧問・宗次徳二(むねつぐ・とくじ)氏(58)
【新マネー考 第6部おカネって何?[4]】 2007.04.12日経新聞(夕刊)
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「富んで財多きことは、人をして朋友社会の中に入るを得せしむべし。
しかれども、他人に崇敬せらるるは、心術言行の上にあることなり」
(サミュエル・スマイルズの「西国立志編」より)
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銀行の通帳をみて息をのんだ。創業したカレー店チェーン「CoCo壱番屋」の持ち株を、ハウス食品に売却した2002年のことだ。口座には20億円以上が振り込まれていた。

「これは私たちのお金じゃなくて“一時預かり金”」。二人三脚で壱番屋を大きくした妻の直美は、社会のために使おうと提案。異論はなかった。

簡単に使い切れる金額ではない。年数千万円を寄付しても、何十年もかかる。考えた末に出した答えは、クラシック音楽のために使うことだ。

高校2年生の時、テレビから流れてくる旋律に心を震わせた。故岩城宏之指揮のメンデルスゾーンのバイオリンコンチェルト。友人から買った中古テープレコーダーで録音し、繰り返し聴いた。以来、クラシックはいつも身近にあり、心を癒してくれた。「クラッシックの普及、発展を助けたい」という思いがわき上がる。

名古屋市の繁華街に3月、クラッシック専用の「宗次ホール」をオープンした。建設費は20数億円。「若い演奏家に発表の場を与え、もっと多くの人にクラッシックに接してもらいたい」

バイオリニストの五嶋龍には名器「ストラディバリウス」を無期限で貸与。いまも3人の演奏家にバイオリンを貸し出す準備を進める。貸与するバイオリンに投じた金額は10億円近い。

「日本一の右肩上がり人生」。自らの半生をこう表現することがある。少年時代は極貧だった。実の両親の顔を知らず、児童養護施設に預けられた。養父母に引き取られ、おんぼろアパートでロウソクをともす暮らし。競輪場に通う父に愛想をつかし、母は家を出た。小学校の同級生が3千円のお年玉をもらったとき、自分は50円だった。

貧乏暮らしを不幸と思ったことはない。「子供の時に苦労して鍛えられた。その後の人生にはプラス」。貧乏の反動で、お金をもうけてやろうと思ったこともないという。

還暦を前に、経営からは完全に離れた。事業を息子に継がせるたつもりもない。バトンを渡したのは苦労をともにした、たたき上げ役員。「私の経営者人生の最大の喜びは、素晴らしい後継者に恵まれたこと」と話す。

少しだけ欲があるのは人生最期の迎え方だろうか。「葬式は宗次ホールで。大好きなオペラ『椿姫』のDVDを流し、いつでも参加できるように月曜日から金曜日まで続く。それくらいは、いいでしょ?」。社会から預かったお金は、そのときまでに返すつもりだ。
(敬称略)

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