電脳筆写『 心超臨界 』

真の発見の旅は新しい景色を求めることではなく
新しい視野を持つことにある
( マルセル・プルースト )

不都合な真実 《 疑惑のJAL株再上場――西田昌司 》

2024-07-08 | 05-真相・背景・経緯
電脳筆写『心超臨界』へようこそ!
日本の歴史、伝統、文化を正しく学び次世代へつなぎたいと願っています。
20年間で約9千の記事を収めたブログは私の「人生ノート」になりました。
そのノートから少しずつ反芻学習することを日課にしています。
生涯学習にお付き合いいただき、ありがとうございます。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
東京裁判史観の虚妄を打ち砕き誇りある日本を取り戻そう!
そう願う心が臨界質量を超えるとき、思いは実現する
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■『小樽龍宮神社「土方歳三慰霊祭祭文」全文
◆村上春樹著『騎士団長殺し』の〈南京城内民間人の死者数40万人は間違いで「34人」だった〉
■超拡散『世界政治の崩壊過程に蘇れ日本政治の根幹とは』
■超拡散『日本の「月面着陸」をライヴ放送しないNHKの電波1本返却させよ◇この国会質疑を視聴しよう⁉️:https://youtube.com/watch?v=apyoi2KTMpA&si=I9x7DoDLgkcfESSc』
■超拡散『移民受入れを推進した安倍晋三総理の妄言』
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


以下『Will』2013年4月号に掲載された記事よりJAL株再上場の疑惑の主要点を整理してみます。


◆疑惑のJAL株再上場

[ 第2のリクルート事件か ] 
稲盛京セラが50億円購入 疑惑のJAL株再上場――西田昌司・自民党参議院議員
『WiLL』2013年4月号 p32 )

●JAL問題の経緯

もともと、自民党政権の末期に、JALは破綻するかもしれないと言われ出していました。しかし、2009年秋に政権交代が起き、当時の鳩山総理、前原国交大臣がJALは破綻させずに自立再生させる、と明言しました。

ひとまずJALの株価下落は止まったのですが、残念ながら2010年1月19日にJALの破綻が決まりました。資本金は事実上全額没収、償却され、企業再生支援機構が3千5百億円の出資をし、さらに、5千215億円の借金の棒引きが行われました。

この結果、JALは破綻からわずか2年あまりの2012年9月に再上場されることになったのです。


●再上場計画

第一に、企業再生支援機構が2010年1月に再生に携わることになったのですが、当時から再上場させる計画だった、つまり、国が3千5百億円を投入し、最後はその株を上場して資金を回収する、ということが最初から計画されていたのです。これは旧株主には株式の全額放棄を求めながら、再上場の上場益を国が全て取るということで、旧株主が一方的に損失を引き受けることになり、かなり問題です。


●企業再生支援機構

企業再生支援機構とは、麻生政権末期の2007年に解散した産業再生支援機構と同一の事業スキームを持つ官民出資ファンドです。この機構が創設された背景には、不景気で地方にある様々な会社が次々と潰(つぶ)れているという現実がありました。地方の会社を守らなければ、その地域の経済や雇用のみならず特産物も守れません。公の視点から見れば、地方の雇用や特産物は公共財であり、これを守っていくことが求められます。そのために、中小企業等の再生のために政府がカネを出すという仕組み、つまり企業再生支援機構の設立を決めたのです。


●企業再生支援機構が支援する対象

問題はこの機構が支援する対象として、中小企業等と「等」という文字が書いてあることです。この文字を利用して、JALは中小企業ではないにもかかわらず、企業再生支援機構が使われたのです。この機構の最初の事案がJALの再生です。

そして二番目の事案は、京セラの子会社だったウィルコムです。その後、本来の業務である中小企業の再生がいくつかされていますが、大きな案件はJALとウィルコムだったのです。他は圧倒的に小さい会社ばかりですから、二社の再生が企業再生支援機構の事案のなかでも特異な案件だったことがわかります。


●企業間の競争環境への介入

ANAとJALは、売上高はJALのほうが若干、大きかったのですが、ほぼ同じくらいの規模で競争をしています。その会社のうちの片方が破綻した。それが再生されることによって、もう一方の健全経営をした会社が不利益を受けないようにしなければならないと、企業再生支援機構法にしっかりと書いてあるのです。ところが今回、これが完全に無視された再生スキームになってしまったのです。

これでは、一旦死んだ会社がゾンビのように甦り、真面目に働いて健全経営をしてきた会社を飲み込んでしまう。そういうことになりかねないのです。


●上場についての疑念

企業再生支援機構法を見ますと、その資金の回収方法を上場によって賄(まかな)えとは書いてありません。書いてあるのは、最初は企業再生支援機構が肩代わりをしますが、その間に再生企業のスポンサーを見つけなさい、ということなのです。

それをJALについてあてはめて考えれば、日本の企業のなかでJALを再生できるノウハウを持っているのはANAしかありません。企業再生支援機構が出資した資金をANAに肩代わりさせ、JALをうまくマネジメントしていく、これが企業再生支援機構法が想定している本来の企業再生のあり方なのです。

ところがANAに対して、破綻したJALの運営をしませんか、という申し入れはまったくなされていません。今回、上場する際にも、JALの株をANAに持ちませんか、という話もされていません。


●オープンスカイ政策

国交省の航空局というのは日本の航空行政の元締めですが、彼らは未だにオープンスカイに囚われています。オープンスカイとは、規制緩和をして世界中の飛行機が自由に乗り入れできるようにするというものです。国内で二社の大企業が競いあうことによって運賃を抑制できる。つまり、競争を前提とした国内大手二社体制が彼等の基本政策なのです。

今回のJALの破綻は、JAL固有の問題ももちろんありますが、このようにオープンスカイ政策のあり方に問題があり、それを見直すいい機会だったともいえるのです。つまり、国内二社体制というのがはたして良いものなのか考え直すいい機会でもあった

ところが、その反省がないままに航空局は格安航空会社(LCC)の参入を次々に認めています。LCCは、東京―大阪間といった大きな収益が見込まれるドル箱路線のみの参入を目的としています。いままで二大航空会社はこうしたドル箱路線や地方の赤字路線を合計して、収益が出るように運営してきました。ところが、LCCはドル箱路線のみ飛ばしますから、余計なコストを抱えなくて済みます。だからこそ、破格の航空運賃が設定できるのです。

しかし、この見直しをしないままにJALの再生をしようとしているのです。航空局はいままでの政策ミスを認めず、オープンスカイ政策は維持する形でJALに再上場させた。ここに一番の問題があります。


●新たな第三者増資

今回のJALの再上場にあたって不当な利益を得ている人がいるのではないか、という問題があります。JALには企業再生支援機構が3千5百億円の資金を投入しました。本来、企業再生支援機構しか資本金を持っていないはずです。

ところが上場直前になって新たな株主が現われたのです。実は、2010年の12月には20人の執行役員の方が一人20万円、合計で4百万円の増資を引き受けています。また、2011年の3月11日に127億円の第三者増資が八つの会社からされています。

第三者増資の内訳をみますと、京セラが50億円、大和証券グループが50億円です。残りはJALのもともとの旧株主でもあった損保や旅行会社です。

ところで、JALが破綻した際には資本金にして2千5百億円あまりの株式が紙屑になり、株主であった方々に多額の損害を与えたわけです。銀行による5千215億円の債権放棄もなされています。債権放棄した分、企業は赤字になりますから、その分、税金は入ってこなくなる。国家の収入が減るわけですから、これもまた国民負担になっているのです。

ですから、JALが上場した際の上場益は本来ならすべて国庫に入れて、国民負担を弁償する必要があります。それを機構以外の株主が上場益を受け取るとなれば、これは国民に対する背信行為ではないでしょうか。

●圧倒的に有利な税優遇

国庫にお金を入れるのならば、税金によって回収するほうがまともなやり方です。ところがJALは再上場後、9年間に約1兆2千6百億円の利益がでるまで税金を1円も払わなくて良い仕組みになっているのです。これはJALに適用されている会社更生法の税務上の特典のためです。

前に述べたように、JALは5千215億円の債務免除を受けました。債務免除を受けたということは、JALにとっては5千215億円の利益を得たということなのです。ですから、赤字から債務免除を受けた5千215億円を除外しますので、残りの金額が繰越控除できる欠損金額に普通はなるのです。

しかし、会社更生法を使いますと、本来の損失5千215億円が消滅せずに税務上、繰越損失として使えるのです。要するに税法上、この5千215億円は利益に参入しなくとも良いということになるのです。会社更生法が適用されれば、債務免除で受けた利益には税金の免除ができる仕組みになっているのです。

JALの本来の営業上の損失は税務上青色欠損金と呼びますが、3千6百億円です。これに普通の会社では損失と認められない会社更生法上の損失の9千億円が加わり、JALは1兆2千6百億円もの損失を繰り越すことができ、圧倒的に有利な税の優遇を受けているのです。  


●儲かる路線のみ増やす

JAL再生の第一の目的は国民の足を守ることだったはずです。ところが、その足は儲からないという理由で国内線、国際線において大幅に路線がカットされました。つまり、JALは儲かる路線しか飛んでないのです。にもかかわらず、民主党政権はさらに儲かる路線を割り与えたのです。

航空行政はオープンスカイ、つまり自由競争だと言いますが、実際は路線の割り当てには航空局が強い権限を持っている。つまり、実際には完全な競争などできないのにもかかわらず、形だけは自由競争の体裁をとってきたのです。そしてその一方で、LCCなどの格安路線を認めています。おいしいところだけをLCCに与えれば、不採算路線を持つ大きな航空会社は崩れていくのです。これが、JALが経営破綻した大きな原因なのです。

ところがいま、航空局はこのことを整理しないままJALにまで格安航空会社を子会社として作ることを認めてしまいました。いまや、JALグループは国民負担と税金の免除で圧倒的競争力を手に入れ、日本の空はJALの思いのままになってしまうのです。その結果、ANAは非常に厳しい経営環境に陥ってしまいます。


●外国人配当比率の疑惑

JALには外国人による株の所有制限があります。国益の観点からテレビ局や航空会社などは、外国人が3分の1以上の株を所有してはならないと決まっているのです。この法律により、外国人が所有可能なJALの株の割合は33%であり、これはANAも同じです。ところが2012年11月1日現在、JALの外国人の持株比率は42%超となっています。一方、ANAは10%にも満たないのです。

2012年の10月2日に、JALの植木社長が「JALは外国人が株の3分の1以上の株を所有し、現在は4割になっている。外国人の所有制限があるが、この制限の趣旨は議決権の3分の1以上を外国人に行使させてはいけないということである。JALは外国人株主を株主名簿に記載させておらず、現在も外国人の議決権は3分の1以上にはならないので問題はない」と発表しました。

ところが、JALは配当に関して、こう発表しているのです。

「再上場をした時から、株主に対する利益還元を経営の最重要課題として捉えており、将来における企業成長と経営環境の変化に対するための投資や、強固な財務体質構造に資する内部留保金を留保しつつ、株主への継続的配当を行なうことによって、株主への利益還元を積極的に行うことを基本としています。航空法においては、外国人等による議決権行使を制約するものの、剰余金の配当については、経済的利益までは制約する趣旨ではないので、外国人株でも配当を行っても支障はない」

そして、定款変更を行って外国人にも今後は配当できるようにすると述べています。つまり、ANAは外国人に配当を行わず、JALは配当を行うというのです。


●鶴だと思ったらサギだった

皆さんに思いだして欲しいのは、JAが再上場できたのは、1兆円にものぼる国民負担のおかげだということです。その中身は約5千億円は借金の棒引きです。棒引きしたことにより、その分の損失が貸し付けている銀行に出ていますから、それらが全て損金になり、その分の税金が国庫に入らなくなっているのです。

さらに約2千5百億円の資本金も紙屑になってしまいました。こちらも同じように、国民が負担を被ったのです。同時に、こちらも損金になりますから、それに見合う分の税金が減ってしまうのです。

したがって、JALのために合わせて1兆円近くが国民負担として強いられたことになるのです。ところが、国民の負担によって再上場をし、収益も改善されたのにもかかわらず、その配当の4割を外国に流出させてしまうのでは全くの売国行為ではありませんか!! まさに彼らは自分たちの置かれている立場が全く分かっていないのです。

国民は、JALはフラッグシップキャリアであるという考えのもと、JALを守ることは自分たちの足を守ることだと思い、負担を承認したのです。ところが、国民負担で生き残ったのにもかかわらず、フラッグシップカンパニーが利益をどんどん外国に流出させるというあり得ない話が現実に起きることになるのです。
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 不都合な真実 《 実現しなか... | トップ | 不都合な真実 《 ドイツでは... »
最新の画像もっと見る

05-真相・背景・経緯」カテゴリの最新記事