“ドピー”は“白雪姫”7人のコビトの中で一番ののんびり屋――久米是志

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浜松の旅館で久米は今までのホンダになかった新しいやり方を実行した。模造紙を張り巡らし、参加者全員で議論しながら、問題点を全員で共有できるよう。すべて書き出した。そのプロジェクトのやり方は、今も“ドピーシステム”の名で、ホンダの中で行われている。“ドピー”とは、“白雪姫”に出てくる7人のコビトの中で一番のんびり屋のコビトで、「どんなメンバーにも現状と、自分のなすべきことがわかるプロジェクト運営」という意味が含まれているそうだ。すべてのチーム構成員の知恵を結集して開発にあたること。それが新しいリーダー久米が考えたやり方だった。


◆“ドピー”は“白雪姫”7人のコビトの中で一番ののんびり屋――久米是志

ホンダCVCC開発リーダー　久米是志の言葉
「一人の天才がいたって駄目だ。凡人でも力をあわせれば必ず成功できる」

『プロジェクトX　リーダーたちの言葉』
（ NHKプロジェクトX制作班　今井彰、文藝春秋 (2004/3/12)、p48 ）

CVCC開発に至るまでの本田宗一郎との様々な葛藤について尋ねた時、久米は答えた。
「そりゃあ恐いですよ。若い頃からお師匠さんですからね、しごかれて育ってますから、お師匠さんに逆らうって恐いでしょ。
　でも、言いなりになっている訳じゃないんです。やっぱり、我々技術屋は言いなりにならない時っていうかね、実際にやっぱりこう、モノを前にして、社長がいくら言ったってこの通りいきませんよと」

CVCCプロジェクトのリーダーを任された時、久米は、「オヤジさんのやり方から変える」と自らに誓った。神様・宗一郎のもとでは、宗一郎の考えと異なると、研究を否定されることすらあった。「努力した人間一人一人が、努力に応じて報われるような体制を作りたかった」という。

浜松の旅館で久米は今までのホンダになかった新しいやり方を実行した。模造紙を張り巡らし、参加者全員で議論しながら、問題点を全員で共有できるよう。すべて書き出した。そのプロジェクトのやり方は、今も“ドピーシステム”の名で、ホンダの中で行われている。“ドピー”とは、“白雪姫”に出てくる7人のコビトの中で一番のんびり屋のコビトで、「どんなメンバーにも現状と、自分のなすべきことがわかるプロジェクト運営」という意味が含まれているそうだ。すべてのチーム構成員の知恵を結集して開発にあたること。それが新しいリーダー久米が考えたやり方だった。

「柳生新陰流とおなじですよ……。あの新陰流のお師匠さんになるためには、自分のお師匠さんを負かさないといけないんですよ。その時に初めて後が継げるということで」
宗一郎について聞いている時、久米はこんな言葉を口にした。

「実際に負かすことはできましたか？」と尋ねると、「どうでしょうかねぇ……」と笑った。