CSの日本映画専門チャンネルで昨夜放送されました。劇場公開は1973年暮れだったそうで、私はその頃小学4年生。兄や従兄弟たちと正月に映画館に行き、ちゃんと劇場で見ました。この作品を見たのはそれ以来です。
結構印象が強烈だったからでしょうが、いろんなシーンは記憶に残ってました。ただし、当時は地震や津波の特撮ばかりに目が行ってて、実際この物語が何を言わんとしているかをまったく理解していなかったと。
この原作を読んだのは2年半ほど前なのですが、その時の感想はこちらのblogの通り。小説では明らかに小野寺が主役だと思うのですが、映画では「小野寺~っ! かっこいいぞぉ~!」と言う暇もなく、さらっとストーリーと主なエピソードをさらっただけという感じ。あの物語を2時間ちょっとに収めるにはかなり無理があることは明らかでした。
この映画は、ある意味丹波哲郎扮する山本総理が主役であり、小林桂樹扮する田所博士が主役でもあります。山本総理は「国を守る、国民の生命財産を守るとは一体なんなのだ?」と悩み苦しみます。なおかつ渡老人が提示する三つの案、すなわち「一つ目は日本人が集団でどこかの国に移住し新たに日本国を作る、二つ目はそれぞれ各地に移住しその先で帰化して生活する、三つ目は特に何もしない…。日本列島の沈没と共に日本人も運命を共にする。」というもの。その三つめを聞いて、山本総理は見る見るうちに目が真っ赤になってしまいます。いいシーンでした。丹波哲郎もこの頃はちゃんと仕事してたのですね。
さらに小林桂樹扮する田所博士が最後に言うセリフがまたいいです。「日本人は民族としては若い。四つの島でぬくぬくと育てられてきたわが子供が、外へ出て行ってケンカをしてひどい目にあっても、四つの島へ逃げ込み母親の懐へ鼻を突っ込みさえすればよかった。しかしこれからはその帰るべき国がなく、海千山千の世界の人間の中で………。総理、日本人を頼みます!」
すると山本総理は「私は日本人を信じています。」と言うですよ。このあたりがこの物語のクライマックスです。単なるSFパニック映画として捉えてはならないということですよね。リメイク版の評判は「感動した」というものから「文字通り“沈没”でした」というものまで様々ですが、「守りたい人がいる」という事だけじゃなくて国家とか国民とか国土とかそういう事を考えるようなテーマがあれば評価したいと。まだ見てないのでわかりませんが。
そういえば、昔のベストセラーで「日本人とユダヤ人」というのもありました。日本人がいかにぬくぬくと暮らしているかということをクドクドと書き連ねた本ではありましたが、こういうのを「ケッ、うざい!」と言わずに「たしかに日本は安全で暮らしやすいかもしれません。が、それが何か?」と言えるような世の中にしたいもんだと思いますが、どーですかそこの若い人。
ちなみに「あと二日で日本が沈没するとなったらどうするか?」という事に対しては、我が家の娘2号(小5)は「あるだけのお金を使ってゲームソフトを買って来て遊ぶ。」のだそうです。娘1号(中3)などはもっとひどくて「ブックオフに行ってVOW全巻を立ち読みしてくる。」のだそうです。ま、別に問いかけをしたわけじゃなく、映画を見てたら二人とも自発的に言ってきたことなのでいいです。正解のある問題じゃないですから。