孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パレスチナ  イスラエル・パレスチナ双方とも住民の生命・生活を尊重せず、対立の構図を維持

2021-11-21 23:14:47 | パレスチナ
(イスラエルでの働き口を求めて集まる人々(ガザ地区)【11月16日 Newsweek】)

【エルサレム旧市街でパレスチナ人の男が銃を乱射 ハマス「英雄的作戦」】
物事の全てと同様に国際的紛争も、国際世論の関心をひきつけていられる時間(「賞味期限」と言ったら不謹慎でしょうが)には限りがあります。

次から次に起こる事件・紛争・衝突のなかで、あのアフガニスタンのタリバン復権すら、すでにメディアの関心は薄れているようにも。

ましてやイスラエル独立時の1948年第1次中東戦争からすでに70年以上(ユダヤ人がパレスチナから追われ流浪の民となった時期からすれば2000年以上)続くイスラエル・パレスチナの紛争には(パレスチナを支援してきたアラブ世界を含めた)国際世論もメディアも関心が薄れているのが正直なところでしょう。

そうした状況では、テロも“忘れ去られない”ための“英雄的作戦”という見方にもなるようです。

****聖地「神殿の丘」近くで銃乱射、民間人死亡…ハマス「英雄的作戦」と称賛****
イスラエル当局によると、エルサレム旧市街で21日、パレスチナ人の男が銃を乱射し、1人が死亡、3人が重軽傷を負った。男はその場で警察官に射殺された。
 
現場はユダヤ、イスラム両教の聖地がある「神殿の丘」の入り口付近。警察官2人と民間人2人が銃撃に巻き込まれ、うち民間人男性が死亡した。
 
イスラエル主要紙ハアレツは当局者の話として、乱射した男は東エルサレムの住民で、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム主義組織ハマスのメンバーだと伝えた。ハマスは21日、メンバーの犯行だと認め、「英雄的作戦」と称賛した。
 
エルサレム旧市街では17日にもパレスチナ人が警察官を襲撃する事件が起きた。治安悪化を受け、ナフタリ・ベネット首相は21日、エルサレムの警備強化を指示した。【11月21日 読売】
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17日の事件は、東エルサレムに住むパレスチナ人の少年(16)がナイフで治安部隊を襲い、2人が負傷した事件です。

こうした「英雄的作戦」は対立を激しくし、事態を悪化させ、パレスチナ住民の生活を苦しくするだけだと思いますが・・・・ハマスには聞く耳はないようです。

【双方ともに住民の命を尊重せず】
パレスチナでの両者の対立はイスラエルとパレスチナ、双方に言い分はあるのでしょうが、軍事的に圧倒的優位にあるイスラエルの基本姿勢は「やられたら、倍返しどころではなく、10倍返し・20倍返しにして徹底的に叩く」というもの。

その頑なさとともに、双方犠牲者においてパレスチナ側の犠牲が格段に大きい非対称性が、国際社会におけるイスラエルのイメージを悪くしている大きな理由です。

単に犠牲者数の非対称性だけでなく、民間人犠牲を厭わないあたりも。

****イスラエル軍によるガザ空爆、死者6割超が非戦闘員 59人が子ども****
今年5月にパレスチナ自治区ガザ地区で起きた武装勢力とイスラエル軍の軍事衝突で、イスラエル軍の空爆による死者240人のうち、6割超の151人が非戦闘員だったことがパレスチナの人権NGOの調べでわかった。ほとんどが自宅での被害で、イスラエル軍から空爆前の事前の通告がなく、民間人の犠牲が増えた、としている。
 
5月10日、イスラエル軍は、ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスがロケット弾を発射したことへの報復として空爆を開始。11日間の武力衝突に発展した。イスラエル側は子ども2人を含む12人が死亡した。
 
パレスチナ人権センター、メザン人権センター、アルハックの3団体が合同で現地調査を行い、ガザ地区の被害を分析した。ガザ地区内で武装勢力のロケット弾により死亡した十数人は、調査対象から除外したという。近く調査結果を公表する。
 
調査によると、空爆で死亡した非戦闘員151人のうち59人が子ども、女性は38人だった。死者の大半はガザ市やガザ北部に集中していた。自宅で亡くなったのは132人に上った。
 
イスラエル軍はこれまで、ガザ地区への空爆について「民間人の死者を最小限に抑える努力をした。ハマスが市民を人間の盾にしている」と主張。攻撃前に、対象の建物に住む市民に電話やテキストメッセージなどで警告した、などと説明してきた。

これに対しパレスチナ人権センターのハムディ・シャクラ副所長は「事前の通告を受けて避難できた建物も一部にはあったが、多くの場合は通告なく激しい空爆に遭い、市民の死者数が増えた。イスラエル軍の攻撃は国際法に違反し、正当化することはできない」と指摘する。

思いもしなかった爆撃、崩れた自宅
ガザ市中心部のワヘダ通りでは5月16日未明、激しい空爆で三棟の住居用ビルに住む40人以上が犠牲となった。今月訪れると、がれきの山は撤去され、住宅の跡形もなく、茶色い更地となっていた。
 
通りに面する住居用ビルの3階に住んでいたアザム・コラクさん(42)は就寝中、爆音に続いて大きな揺れを感じた。次に最も強い爆撃がビルを直撃し、ビルは崩れ落ちた。
 
イスラエル軍から事前の通告は何も受けなかったという。「ガザでも安全な場所」とされてきたこの地域が狙われるとは、家族の誰もが思いもしなかった。(中略)
 
1階と2階に住む兄やその子どもら8人は死亡した。隣の建物では親族14人も犠牲になった。その日は、がれきの上で夜を明かした。全員が発見されるまで、約12時間がかかったという。
 
イスラエル軍はこの地域への攻撃について「地下トンネルを狙った」などと説明してきたが、アザムさんの弟で医師のアミールさん(30)は「イスラエルは今まで何の証拠も示していない」と訴える。親族を亡くして、もうじき半年が経つ。「ここで起きた悪夢が、今でも信じられない」【11月6日 朝日】
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パレスチナ・ハマス側も、敢えて居住区域内に軍事施設を隠すなど、パレスチナ住民を「人間の縦」を利用するような戦術、また、“ガザ地区内で武装勢力のロケット弾により死亡した十数人”ということに示されるように、パレスチナ住民の命を尊重しているようには思えません。

【平和的解決にも関心なし】
また、イスラエル・パレスチナ双方とも問題の平和的解決には関心がないようにも見えます

****イスラエル、パレスチナ入植拡大 米の「懸念」配慮せず****
イスラエル政府は(10月)27日、占領するヨルダン川西岸でユダヤ人入植者の住宅計約3100軒を新たに建設する計画を承認した。入植活動に反対し「深い懸念」を前日に示したバイデン米政権の意向を無視した形で、米国との摩擦の火種になりそうだ。

イスラエル建設・住宅省はこの計画とは別に24日、1300軒以上のユダヤ人住宅の建設計画を発表した。米国務省のプライス報道官が26日の記者会見で「緊張緩和の努力に全く一致しない入植地拡大に強く反対する」と明言していた。米ニュースサイトのアクシオスは、ブリンケン米国務長官が同日、イスラエルのガンツ国防相に電話で抗議したと伝えた。

パレスチナ自治政府は27日「パレスチナ人の土地を盗み緊張をもたらす措置で、すべての人に悪影響を及ぼす」とイスラエルを非難する声明を出した。国際社会は入植活動を国際法違反とみなしている。

トランプ前米政権は入植活動を事実上容認したが、バイデン政権はイスラエルと将来のパレスチナ国家が共存する「2国家解決」を支持する立場で、自制を促してきた。入植を推進したイスラエルのネタニヤフ前政権とは隙間風が吹いていた。

6月のベネット政権発足を受け両国は関係改善を目指してきたが、入植活動を巡る対立が重荷になりそうだ。イスラエルは22日にパレスチナの6つの人権団体をテロ組織に指定し、国際社会の反発を招いたばかりだった。

右派与党を率いるベネット首相の連立政権は、入植を推進する右派から反対する左派まで加わる寄り合い所帯だ。今回の動きは閣内でも不協和音をうむが、イスラエル紙ハーレツはベネット氏にとって「政治的得点」だとの見方を紹介した。米国の反対を押し切ったことで国内右派にアピールできると指摘し、仮に今後の入植地拡大が難しくなっても批判する米国に責任を負わせられると指摘した。【10月29日 日経】
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****イスラエル、パレスチナNGOを「テロ組織」指定 逮捕も可能に****
イスラエルが、パレスチナの人権NGOの6団体を「テロ組織」に指定し、国内外で波紋を呼んでいる。イスラエルは「テロ組織の資金源になっている」と主張するが、国際的に著名な人権団体が対象となり、批判の声が上がっている。
 
イスラエルのガンツ国防相は10月22日、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区ラマラにある人権団体「アルハック」など6団体を「テロ組織」と指定した。さらに、イスラエル軍は今月7日、6団体をテロ組織であると決定。決定に基づく逮捕などを可能とした。
 
イスラエルは今回の6団体について、テロ組織と指定するパレスチナ解放人民戦線(PFLP)と関係があると主張する。ガンツ国防相は10日、声明で「人権団体の活動には今後も敬意を表するが、テロリズムには対処を続ける。PFLPはテロ活動の資金を集めるため、『人道的な』組織のネットワークを運営している」と主張した。

ただ、イスラエルメディアも団体とPFLPとのつながりについて「政府は具体的な証拠を示していない」と指摘している。(中略)

国内外で、イスラエルの決定には批判の声も上がっている。イスラエルの人権活動家らは先月27日、政府の決定に抗議するため、パレスチナ西岸地区ラマラで「テロ組織」と指定されたNGOと面会した。

国連機関などは今月9日、「パレスチナ人への必要不可欠なサービスを提供してきた6団体の活動を著しく制限するもので、市民と人権に対するさらなる侵害だ」とする声明を出した。
 
一方、イスラエルは最大の同盟国である米国の理解を得ようとしている。イスラエルの治安機関「シンベト」は10月末、訪米して米政府高官と会談した。米国務省のプライス報道官は今月4日の会見で、「イスラエル政府から詳細な情報を受け取った」とした上で、米国の対応については「提供された情報を見直している」と述べるにとどめた。【11月11日 朝日】
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関係改善を目指すより、相手に対し強硬な姿勢をとることで、国内支持を固めることの方が優先するようにも見えます。

【対立の構図が存在意義を高め そこから利益も】
イスラエル保守強硬派やハマスにとっては、対立・戦闘を続けることで自らの存在意義を高められるという思惑もあります。

厳しい言い方をすれば、そうした対立の構図を維持することで、そこから「甘い汁」を吸っているとも。

****19歳パレスチナ女性の未来を奪ったのは、イスラエルでなくハマスだった****
<パレスチナのあらゆる悲劇をイスラエルのせいと主張するメディアは多いが、実際に住民たちが感じていることとは大きな隔たりがある>

パレスチナのガザ地区に住む19歳の女性アファフは、トルコの大学で学ぶための奨学金を獲得し、必要な書類を全てそろえた。だが、ガザを実効支配するイスラム過激派組織ハマスの定めた「後見人ルール」に反していたためエジプト国境で追い返され、ガザから脱出することができなかった──。
AP通信は11月、このような記事を配信した。

「後見人ルール」は、イスラム教徒女性は後見人たる男性親族の付き添いなしに外出してはならない、というイスラム法の規定に由来する。ハマスはこれに基づき、女性がガザ領外に出るには後見人の許可を得ていなければならないとか、後見人は被後見人女性がガザ領外に出るのを止めることができるといったルールを適用してきた。

アファフは「正直、心が折れた」とAP通信に語った。彼女の未来を奪い、彼女をガザに閉じ込めたのはイスラエルではない。ハマスだ。

日本を含む世界中のメディアが、今もパレスチナのあらゆる悲劇はイスラエルのせいだと主張し続け、現実をその「鋳型」に閉じ込める報道に終始する傾向にある。しかしパレスチナでは今、アファフの事例のように、その鋳型では説明のつかない数々の事態が発生している。

イスラエル当局は今年9月、ガザ地区から7000人の労働者を受け入れると発表し、ガザの商工会議所にはイスラエルでの労働許可証を求め数万人が殺到した。

彼らがイスラエルでの仕事を求めるのはガザに仕事がないからである。
ガザの経済状況は深刻だ。2021年の夏時点で失業者数は21万2000人に達し、失業率は約45%となった。サウジアラビアのテレビ局のインタビューに応じたガザ住民たちは、この15年間仕事も収入もない、生活が成り立たないと口々に語った。

支援金で贅沢な暮らしを送る
この現状はパレスチナを支配する自治政府とハマスの無策・無責任を露呈させている。彼らは国際社会から巨額の支援金を受け取っているにもかかわらず、人々の生活改善や雇用促進には全く無関心である一方、自らはカタールやトルコで贅沢な暮らしを送っている。

生活インフラを建設する代わりにイスラエルを攻撃するためのトンネルを掘り、ロケットランチャーを設置し、学校では和平や共存の代わりに武装闘争こそが正義だと教えている。彼らは悲劇の全てをイスラエルのせいにすれば、責任回避できると高をくくっているのだ。

忘れてはならないのは、彼らに渡る支援金の一部は日本国民の税金だという事実だ。日本政府は1993年のオスロ合意以降、パレスチナに対し21億ドルを超える支援を行っている。日本が支援目標として掲げる「自立可能なパレスチナ国家建設」が全く実現されていないのは明らかだが、日本政府はパレスチナ指導部の腐敗について見て見ぬふりを決め込んでいる。

パレスチナ政策調査研究センターが10月に実施した世論調査では、西岸地区をパレスチナ自治政府が、ガザをハマスが支配している現状について「悪い」と回答した人が「よい」と回答した人を20ポイント以上上回った。

人々にとっての優先事項は第1に西岸とガザの統一(29%)、第2に経済状況の改善(25%)、第3に汚職の撲滅(15%)だ。対イスラエルについても、和平合意を望む人が36%超と、武装闘争を望む人(34%)の割合を上回った。【11月16日 飯山 陽氏 Newsweek】
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【先細る国際支援】
“国際社会から巨額の支援金”・・・・国際社会の関心が薄れ、アラブ諸国は“アラブの大義”を捨ててイスラエルに接近するようにもなっていますので、いつまで続くか。

すでに国連機関は、特にパレスチナ支援に非協力的だったトランプ前政権以降、財政的に行き詰まっています。

****職員の給与支払いも難しく パレスチナ支援の国連機関、財政難****
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が、各国の支援の減少により財政難に陥っている。16日、ブリュッセルで支援国による国際会議が開かれたが、今年の予算の不足分を埋めることはできなかった。支援事業にも影響が出かねない状況だ。
 
スウェーデンとヨルダンが主催した国際会議では、各国から新たに計3800万ドルの拠出が表明された。だがUNRWAによると、今年の予算のうち6千万ドルがいまだ不足している。

AFP通信などによると、UNRWAのフィリップ・ラザリーニ事務局長は、職員の給与支払いも難しくなっているとして、「解決策を見つけなければ、組織は崩壊の危機にある」と訴えた。
 
UNRWAは、パレスチナ自治区や隣国ヨルダン、レバノンなどで暮らすパレスチナ難民に食料や医療、教育などの支援を提供しているが、近年、たびたび財政難に苦しんでいる。
 
ラザリーニ事務局長は16日、「活動を脅かす政治的な攻撃が増えている」とも懸念を示した。

イスラエルは、UNRWAを「政治的な組織」として批判し、各国に拠出をしないよう呼びかけている。

米国は長年、最大の支援国だったが、トランプ前政権は2018年、拠出金を完全停止。当時は欧州連合(EU)などの追加支援でしのいだ。

バイデン米政権は今年、拠出を再開する方針を示したが、資金不足は解消されていない。昨年は2800万ドルを拠出したサウジアラビアなど湾岸諸国が今年の支援を縮小しており、財政難の原因になっているという。【11月17日 朝日】
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コメント (1)
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