孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

欧州  再び感染拡大 各国で規制強化、ワクチン接種義務化の動きも 反発も高まる、暴徒化も

2021-11-22 22:56:06 | 欧州情勢
(オランダ・ロッテルダムで19日夜、新型コロナウイルス対策の規制強化に反発する市民が抗議活動を行い、暴動に発展した。【11月21日 BBC】)

【緊急対策が取られなければ、死者は来年3月までにさらに50万人以上増える可能性】
一定にワクチン接種が進んでいる欧州の感染が再拡大し、WHOも懸念する状況になっています。
理由として、ワクチン未接種者がいることで接種率が十分なレベルには達していないこと、感染力の強いデルタ変異株の拡大が指摘されています。

****欧州の感染拡大、「非常に心配」とWHO 各国で規制に抗議****
世界保健機関(WHO)は20日、新型コロナウイルスの新たな感染の波がヨーロッパで拡大していることについて、「非常に心配している」と表明した。

WHOのハンス・クルーゲ欧州地域事務局長はBBCに対し、緊急対策が取られなければ、新型ウイルスによる死者は来年3月までにさらに50万人以上増える可能性があると述べた。
また、マスク着用を増やせば、すぐに効果が出るだろうとした。

ヨーロッパではいくつかの国で、感染率が過去最高となっている。全面または部分的なロックダウンを実施する国も出ている。

クルーゲ氏は、季節が冬になったことや、ワクチン接種率が十分なレベルに達していないこと、より感染力が強いデルタ変異株が広がっている地域があることなどが背景にあるとしている。

そのうえで、感染拡大を抑えるためにはワクチン接種の増加、基本的な公衆衛生対策の実施、新たな治療法の導入が必要だと主張した。

「(新型ウイルス感染症の)COVID-19は改めて、この地域の死因の1位になっている」
「何をしなくてはらないか、みんながわかっている」

ワクチン義務化については
クルーゲ氏はワクチン接種の義務化について、「最後の手段」であるべきだとの見解を示した。
ただ、義務化について「法的および社会的な議論」をすることは「まさしく時宜にかなっている」だろうとした。

「その前に、COVIDパスなど他の方法がある」
「(それらは)自由を縛るものではない。むしろ個々の自由を守るための道具だ」(後略)【11月21日 BBC】
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【各国で制限措置強化やワクチン追加接種加速】
こうした感染拡大を受けて、欧州各国は制限措置を強化し、ワクチン追加接種を加速させています。

****欧州でコロナ感染悪化、制限措置厳格化や追加接種拡大の動き相次ぐ****
欧州諸国で新型コロナウイルス感染状況が悪化している。感染者数が急増する中、感染拡大抑制に向けた措置の厳格化やワクチンの追加接種(ブースター接種)の対象を拡大する動きが広がっている。

ドイツのメルケル首相は18日に感染第4波の抑制に向けた措置を巡り各州の首相との合意を目指す。ロイターが入手した閣議向けの文書草案によると、公共交通機関や職場でのワクチン証明書もしくはコロナ検査での陰性証明の提示義務付けのほか、レジャー関連を対象とした制限措置の厳格化などが盛り込まれている。

17日の新規感染者数は5万2800人強と、1週間前から30%超急増し、過去最多を更新した。ドイツでワクチン接種を完了した人は人口の68%と、西欧諸国の平均を下回る。追加接種を受けた人も人口の5%程度にとどまっている。

新型コロナ感染の第5波に見舞われているフランスでは、1日当たりの新規感染者数が2万人を超え、8月25日以来の最多に達した。

スペインのサンチェス首相は、これまで70歳以上を対象としていたワクチンの追加接種を60歳以上に拡大すると発表した。

スペインでは人口の79%がワクチン接種を完了しているものの、新型コロナ感染率は10月終盤から着実に上昇している。

17日時点の10万人当たりの感染者数は96人と、前日の約89人から増加。しかし、オランダの同900人超、オーストリアの同1400人超と比較すると依然低水準にとどまっている。

ベルギーは感染の第4波に対応するため、感染抑制策を厳格化すると発表した。20日から10歳以上を対象に、カフェやレストランなどの屋内では着席時以外のマスク着用が義務付けられる。

また、12月半ばまでは少なくとも週4回、その後は週3回の在宅勤務を国民に義務付ける。【11月18日 ロイター】
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欧州各国の接種状況については以下のようにも。ワクチンを拒否する者が一定に存在することで接種率は頭打ち状態となっており、出遅れた日本にも追い抜かれています。

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欧州では昨年末、日本に先駆けてワクチン接種を始めたが、接種への拒否運動も根強く、各国で接種率は頭打ちになっている。

欧州連合(EU)の欧州疾病予防管理センターによると、ワクチン接種を終えた人の割合はドイツで68%、イタリアで73%、フランスで69%。いずれも日本の76%を下回る。接種率の低い国では、気温低下に伴って流行の再拡大が目立つ。

特に東欧では、チェコが58%、スロバキアが45%、ルーマニアが36%と低く、感染も深刻化する。18日にはチェコやスロバキア、ギリシャ各政府が相次いで、非接種者を対象に行動制限や入場規制を導入する計画を発表した。【11月19日 産経】
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感染者の過去最多を更新しているドイツでは、ワクチン接種義務化も議論されていますが、そのことは現在協議されているポスト・メルケルの連立交渉にも影響します。

***独、ワクチン義務化の議論活発化 コロナ第4波受け****
ドイツの政治家の間で新型コロナウイルスワクチン接種の義務化を巡る議論が活発化している。国内のコロナ感染者が急増する一方で、ワクチン接種ペースが低迷している現状が背景にある。

メルケル首相が属する保守、キリスト教民主同盟(CDU)の複数の党員は21日、現在68%にとどまっている接種率押し上げに向けたこれまでの取り組みが成果を出していないため、連邦・州政府はすぐにワクチンを義務化すべきだと主張。

CDUの青年組織の代表は独紙ウェルトへの寄稿で、「ワクチン義務化とワクチン未接種者を対象とするロックダウン(封鎖措置)が必要だと明確に表明する局面に達した」と指摘した。

過去7日間の新規感染者は21日現在、ドイツ全体で10万人当たり372.7人と、14日連続で過去最高を更新した。一部の地域では1000人を超え、病院の集中治療室が逼迫しつつある。

バイエルン州首相はワクチン義務化を早期に決断するよう呼び掛け、シュレスウィヒ・ホルシュタイン州首相は未接種者に圧力をかけるために、義務化を少なくとも検討する必要があるとの見方を示した。

新たな連立政権樹立を交渉している3党の1つである環境政党「緑の党」の有力者も、現在の局面でワクチン義務化を排除するのは誤りだとの見解を示した。同党と第1党である社会民主党(SPD)、自由民主党(FDP)の連立交渉は最終局面にあり、合意がまとまれば、SPDのショルツ財務相が12月に首相に就任するとみられる。

ショルツ氏はこれまで、医療従事者および高齢者介護職員のワクチン接種義務化について議論したいと表明しているが、FDPはワクチン義務化に反対している。【11月22日 ロイター】
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なお、やはり感染が拡大しているイギリスは新たなロックダウンは予定にないとしています。

****イングランド地方で新たなロックダウンを実施する計画はない*****
イギリスの1日あたりの感染者数は19日、4万4242人に上った。

英政府は、イングランド地方で新たなロックダウンを実施する計画はないとしている。ただ、プランBと呼ばれる追加対策については、国民保健サービス(NHS)を機能させ続けるために導入するかもしれないとしている。

追加対策には、特定の屋内施設においてCOVIDパスポート提示やマスク着用を義務付けたり、在宅勤務を奨励したりすることなどが含まれる。【11月21日 BBC】
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【ワクチン非接種者への圧力】
高まるワクチン接種義務化の論議のように、未接種者に対する政策的圧力が強化されています。
オーストリアでは未接種は原則として外出禁止に。(22日からは外出制限が全国民対象に拡大されています)

****外出禁止に規制強化…欧州、ワクチン非接種者に圧力****
新型コロナウイルス感染が再拡大する欧州で、各国がワクチン接種拒否者への圧力を強めている。

オーストリアは、非接種者に対象を限定した外出制限を導入。接種証明の提示義務を広げる国も相次ぐ。クリスマス商戦を迎え、都市封鎖の再導入を回避したい狙いがある。

オーストリアでは15日以降、ワクチン接種証明を持っていない人は必需品の買い物や家族介護、通院などの場合を除き、原則として外出できないことになった。12歳未満の子供、医療上の理由で接種できない人は対象外となる。

国内では今月、1日当たりの新規感染者数が連日のように過去最多を記録しており、シャレンベルク首相は「ワクチンを接種していない人に接種してもらうための措置だ」と訴えた。違反者には罰金を科す方針で、地元テレビは警察官が街頭で通行人の接種証明をチェックしている様子を報じた。

オーストリアで現在、2度の接種を終えた人の割合は64%。国民の約3割を対象とした規制には「横暴だ」と抗議デモを呼びかける動きもある。

ドイツでも感染者数の最多更新を繰り返し、18日の発表では1日当たり6万5000人を超えた。

政府は18日、各州代表と対策会議を開催。感染が悪化する地域では、飲食店やスポーツイベントなどへの立ち入りをワクチン証明保有者、あるいはコロナに感染して治癒した人に限定する方針で合意した。

メルケル首相は「多くの措置は、ワクチンを接種していれば避けられた。今からでも、接種するのに遅くはない」と国民に訴えた。

欧州では昨年末、日本に先駆けてワクチン接種を始めたが、接種への拒否運動も根強く、各国で接種率は頭打ちになっている。(中略)

欧州は昨年末、新型コロナ流行でクリスマス市が各地で中止され、都市封鎖も相次いだ。2年連続で経済的打撃を受けるのを避けるため、各国は接種拡大で重症患者の増加を食い止めながら、移動の自由を維持したい構えだ。【11月19日 産経】
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オーストリアの人口は日本の14分の1。 そのオーストリアの21日の新規感染者は1万4千人。 日本で言えば1日20万人弱のペース。 何らかの強い対策が必要にもなります。

なお、すでに「衛生パス」(ワクチンパスポート 健康パス)を実施しているフランス・マクロン大統領は、他の欧州各国のようにワクチン未接種者に対する制限措置を導入する必要はないとしています。

****仏、ワクチン未接種者への制限措置必要なし=マクロン大統領****
 フランスのマクロン大統領は、フランスは新型コロナウイルスワクチンの接種などを証明する「健康パス」によって感染拡大が抑制されているため、他の欧州各国のようにワクチン未接種者に対する制限措置を導入する必要はないと述べた。

18日付けの地元紙のインタビューで「ワクチン未接種者を封じ込めている国々は(健康)パスを導入していない国々だ。したがって、このような(封じ込め)措置はフランスでは必要ない」とした。

ドイツのメルケル首相は18日、新型コロナ感染症の患者で病床が逼迫している地域のワクチン未接種者に対し公共での生活を制限すると発表。オーストリアでもワクチン未接種者に対する制限措置が実施されている。【11月19日 ロイター】
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ただ、フランスも最近感染者が急拡大して1日2万人に近づいていますので、今後の対応強化が必要になるかも。
(規制強化は後述のように激しい抵抗を伴いますので、特に自由制限への抵抗感が強いフランスでの規制強化はマクロン大統領としても避けたい思いでしょう)

【広がる規制強化への反発も】
ワクチン接種の義務化などの規制強化に対し、強い抗議行動も各地に広がっています。

****欧州各地で大規模デモ 新型ウイルスの規制強化に反発****
ヨーロッパで、新型コロナウイルス関連の規制強化への反発が広がっている。ベルギーでは21日、数万人規模の抗議デモが起きた。

ベルギーの首都ブリュッセルであった抗議デモでは、警官隊が催涙ガスや放水銃を使って対応。デモ参加者の一部は警官隊に花火を投げつけた。

参加者らは主に、ワクチン未接種者に対してレストランやバーへの入店を禁じるCOVIDパスの制度に抗議している。

同国ではマスクに関するルールが強化され、レストランなどでの着用が求められている。来月中旬までは国民のほとんどが、週4日の在宅勤務が義務付けられる。医療従事者らのワクチン接種を義務化する計画もある。

オランダでは警官隊が発砲
規制強化に対する抗議デモは、オランダ各地でも2日続けて発生した。
20日にはハーグで、デモ参加者の一部が機動隊に向けて花火を投げたり、自転車に火をつけたりした。機動隊は馬や犬、警棒などを使って、群衆を散らそうとした。

当局によると、少なくとも7人が拘束された。警官5人が負傷し、うち1人は膝のけがで救急車で搬送された。
現地メディアは、南部ローゼンダールで小学校が放火され、警察は少なくとも15人を拘束したと伝えた。東部エンスヘーデでは夜間の外出を防ぐため、緊急命令が出された。

同国ではこのほか、サッカーのトップリーグの2試合が一時中断された。サポーターらが競技場に入り込み、ピッチ上で走ったためだった。競技場への入場は現在、新型ウイルス対策で禁止されている。

19日夜には同国ロッテルダムで、デモ参加者の一部が暴徒化。警官隊が発砲し、少なくとも4人のデモ参加者が負傷して病院で治療を受けている。

警察の報道官はロイター通信に、「生命が脅かされる状況だった」と説明した。当局はこの件について捜査を開始した。
オランダは新型ウイルス感染者の急増を受け、先週末から3週間の部分的ロックダウンを実施している。バーやレストランは午後8時に閉店となり、スポーツ大会は無観客で開催されている。

その他の国々でも
オーストリア、クロアチア、イタリア、デンマークでも、新たな行動制限をめぐって国民の間で怒りが高まっており、路上で大規模な抗議デモが繰り広げられた。

オーストリアの首都ウィーンでは、新たな全土ロックダウンの実施や、来年2月にワクチン接種を義務化する計画などに抗議する大型デモが起きた。

ロックダウンは22日から20日間の予定。生活に不可欠な商店以外は閉鎖され、在宅勤務が命じられる。
参加者たちは国旗や「自由」と書かれた旗を振り、「抵抗!」と声を張り上げた。警官隊にはブーイングを浴びせた。

クロアチアの首都ザグレブでも、公的部門で働く人たちを対象にワクチン接種を義務化することに抗議する数千人が行進した。

イタリアでは、職場や公共交通機関などで証明書「グリーンパス」の提示が求められることに反対する数千人が、首都ローマの古代競技場遺跡チルコマッシモに集まった。

デンマークの首都コペンハーゲンでも、1000人近くが公的部門職員に対するワクチン接種義務化の計画に抗議するデモがあった。

カリブ海の仏領グアドループでは、医療関係者を対象としたワクチン接種の義務化や、燃料価格の高騰などへの抗議が暴動となった。商店で強奪が発生し、事業所が放火されるなどした。
報道によると、38人ほどが拘束された。これを受け、フランス当局は21日、警察の特殊部隊を派遣した。(後略)【11月22日 BBC】
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こういう激しい抵抗は、仮に感染状況が悪化して強い措置がとられても日本では起きにくい事態でしょう。
国民性の違いなのか、個人と国家の関係に対する認識の違いなのか・・・。
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