孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ジェンダーに関する意識  アメリカ、スウェーデン、そして中国

2021-11-09 23:25:04 | ジェンダー
((スウェーデンのLGBTの人のためのシニアハウス)レインボーシニアハウスの入居者ら【11月9日 47NEWS】)

【当世アメリカ若者気質 LGBTQと自称するのが「無難でクール」】
いわゆるLGBTといった言葉であらわされる性的少数者の場合、差別の対象となるという面で問題となりますが、今時のアメリカの若者にあっては、“LGBTQと自称するのが「無難でクール」だ”という認識が生まれているとか。

****アメリカの若者の30%以上が「自分はLGBTQ」と認識していることが判明****
<ミレニアル世代の中でも最も若い「Z世代」に絞ると、39%がLGBTQを自認しているという>

米若年層の約3人に1人がLGBTQ(性的少数者)を自認することが、アリゾナクリスチャン大学などによる世論調査で分かった。

調査対象は1984~2002年生まれのミレニアル世代だ。彼らのうち、自分はLGBTQだとした人の割合は30%で、年長世代の3倍以上。ミレニアル世代の最年少層である18~24歳(Z世代)に絞ると、39%に達した。

彼らにとってLGBTQと自称するのが「無難でクール」だからだと調査担当者はみる。

一方、ギャラップは今年2月、全成人層を対象とした調査結果を発表。「異性愛者でない」と回答したのはわずか5.6%だった。

39%  アメリカのZ世代のうちLGBTQだと自己認識する人
30%  ミレニアル世代のうちLGBTQだと自己認識する人
5.6%  自分は異性愛者ではないとギャラップ調査で回答した人
【10月26日 Newsweek】
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全成人層を対象とした調査結果とは大きな差異があるようです。
ただ、ジェンダーに関する意識が、従来の「男らしさ」「女らしさ」という固定的なものから変わりつつあるのは事実でしょう。

****男女分けないおもちゃコーナーを。大手小売店に義務付ける法律成立 カリフォルニア州****
おもちゃや育児用品を、男女で分けずに陳列するコーナーを設けることを大手の小売店に義務付ける法律が、アメリカ・カリフォルニア州で成立した。BBCによると、同国で初の法律となる。

新法は、子ども向け商品の「ジェンダーバイアス」に対処することを目的としている。男女別のコーナーを設置すること自体を禁止するものではないが、性別で区別しない一角を設けなければいけないとしている。

対象は、500人以上の従業員がいる州内の大規模小売店。初回の違反には250ドル(約2万8000円)の罰金、それ以降は500ドル(約5万7000円)の罰金が科される。2024年に施行される見通しだ。

子どもの素朴な疑問で動いた
ロサンゼルス・タイムズによると、法案を提出した民主党のエヴァン・ロー議員は、スタッフの幼い娘が、母親に「どうして男の子のコーナーに行かないと、(ほしい)おもちゃが見つからないの」と尋ねたという話を聞いたことが、法案作成のきっかけになったという。

ロー議員は、「女の子がパトカーや消防車、周期表、恐竜のおもちゃなどを見つけられるようにすることが目的のひとつです」と明かす。「同じように、あなたが男の子で、芸術的な感性を持っていて、キラキラしたもので遊びたいと思った時、なぜそうしてはいけないのでしょうか?なぜスティグマ(間違った認識や根拠のない認識)を感じ、『ああ、これは恥ずかしいこと』と言って、別の場所に行かなければならないのでしょうか」と問題提起している。

「私は州としてダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(排除しない包括・包含)の価値を示すことが重要だと考えています」(ロー議員)

BBCによると、アメリカの小売業者の中には、ビジネスにおけるジェンダーの固定観念から脱却するための措置をすでに取っている企業もある。

ディスカウントストア大手のTarget社は2015年、店内においてジェンダーに基づく表示の一部の使用を止めることを発表している。【10月15日 HUFFPOST】
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【現実には選挙戦の争点ともなるダイバーシティとインクルージョン】
しかしながら、LGBTを社会的にどのように受け入れるかということでは様々な現実的問題も起きてきます。
その一つが学校などのトイレをどのように使うかという問題。

LGBTと言っても、その内容は様々。
いろんなケースを包摂しようとすると、略称の方もどんどん長くなります。

****「LGBT」から「LGBTQIA+」へ、言葉が長くなってきた理由****
(中略)レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クィア、クエスチョニング、インターセックス、アセクシャルなど、コミュニティーを表す言葉はとても幅広い。

多様な性自認やジェンダー表現に対する理解、認識、受容が進むにつれて、コミュニティーの頭文字を並べた言葉(アクロニム)も長くなってきた。(後略)【10月21日 NATIONAL GEOGRAPHIC】
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多様な性自認の一つがジェンダー・フルイド(gender-fluid)。
ジェンダー・フルイドとは、性自認(こころの性)が複数の性のあいだで揺れ動くことで、 不規則に変わることもあれば、場面や状況に応じて変化することもあります。

多くのメディアが報じているように、先日のバージニア州知事選における民主党候補敗北、共和党候補勝利はバイデン政権及び中間選挙を控えた民主党にとって大きな痛手となりましたが、ジェンダー・フルイドを自任する高校生が起こしたトイレでの暴行事件もその選挙戦に影響したようです。

****トランスジェンダー生徒の「トイレ問題」米州知事選の争点に 性的暴行を機に****
米国のジョー・バイデン政権の今後を占う試金石とみられているバージニア州知事選で、性自認が流動的である「ジェンダーフルイド」とされる高校生による校内女子トイレでの性的暴行事件が争点の一つとなっている。
 
バージニア州の少年裁判所は今週、ラウドン郡の15歳の高校生に対し、今年5月に校内の女子トイレで同級生に性的暴行をしたとして有罪判決を言い渡した。
 
被害者の父親は加害者がジェンダーフルイドだと地元メディアに語っているが、AFPは独自に検証できていない。米紙ワシントン・ポストによると、この問題は25日の公判では取り上げられなかった。
 
事件は「加害者が犯行当日にスカートをはいていた」という被害者の父親の主張を含め、全米で注目を集めている。
 
加害者は今月、公判中に転校先でも同級生を暴行したと伝えられており、転校させた教育委員会は激しい非難を浴びている。
 
ラウドン郡は今年8月、トランスジェンダーの生徒が学校で自認する性別のトイレを使用できるようにしたが、事件への反発からこの方針をめぐる議論が再燃した。
 
共和党候補のグレン・ヤンキン氏は、教育委員会に対する保護者の怒りを自身の選挙戦に利用している。
 
性別で分けられた空間を自身の性自認に合わせて使用できるようにするべきかについては、共和党と民主党は正反対の立場を取っている。
 
共和党の保守派は、トランスジェンダーの人々がトイレや更衣室を使用する際は生まれつきの身体的性別に従うべきであり、「男性」が女性用トイレに入るのを認めるのは危険だと主張している。
 
民主党は、そうした考えは根拠のない不安をあおり、罪のない人々が不当に攻撃されかねないと非難している。
 
ヤンキン氏は、先日の演説ではトランスジェンダーの人々に関する政策に言及しなかったものの、「リベラル急進派」が「私たちの学校制度に教育委員会に見せ掛けた政治工作員」を送り込んでいるとこき下ろし、トランスジェンダーの権利運動を急進的とみなす保守派にアピールした。 【10月30日 AFP】
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【北欧・スウェーデン 長年の当事者・支援者の活動を通じて性的少数者が社会に受け入れらる】
所変わって北欧・スウェーデン。
新聞記事や公的文書の中でも、ジェンダーをあえて区別をしない代名詞を使用するようになっているとか。

****ジェンダーニュートラルな社会、スウェーデン 三人称代名詞「hen」にも反映****
スウェーデンには「hen(ヘン)」というジェンダーニュートラルな三人称代名詞がある。英語の「she」や「he」のように男女を区別する代名詞はスウェーデン語にもあるが、あえて区別をしない代名詞がhenである。

この代名詞は2000年代ごろから新聞記事や公的文書の中でも利用されている。筆者自身も仕事で行政文書を作成する際、henを使っている。名前だけでは男性か女性かは分からない。だから代名詞を使うときは性的な区別をしないように気をつける。

スウェーデンでは50年以上かけて性的少数者が社会に受け入れられるようになった。その結果が言葉にも反映されたのである。(スウェーデン在住ジャーナリスト、共同通信特約=矢作ルンドベリ智恵子)

 ▽法制度の歩み
性的少数者の人権がしっかりと守られているスウェーデンでも、50年前には同性愛は病気だと診断されていた。当時、LGBTQであるとカミングアウトする人はほとんどいなかった。

その後、1970年代から勇気ある当事者たちの同性愛解放運動、デモ活動を通して彼らの人権が少しずつ社会に認められるようになった。

87年に企業や政府による同性愛者の差別が禁止され、95年には同性カップルのパートナーシップ法が成立した。2003年には同性カップルの養子縁組の権利も認定され、09年には同性婚が合法化された。

13年には法的性別の変更に関する法律から不妊手術の義務化が削除された。スウェーデンでは1972年に世界で初めて法的に性別変更が認められたが、その際は不妊手術を受けることが条件だった。現在は強制的に不妊手術を受けさせられたトランスジェンダーの人たちに賠償金が支払われている。

一方、日本では性別適合手術を受けないと戸籍の性別を変えることができない。これは人権侵害ともいえ、早急に法律を見直す必要がある。

 ▽支援団体と認証制度
スウェーデンでは法律が整備される上で、性的少数者全国組織(RFSL)の活動が大きな影響を与えてきた。この支援団体は1950年に発足し、会員は7000人を超える。

RSFLは政治的なロビー活動、広報活動、社会的な支援活動などを幅広く行っている。他にも政治家や行政機関、企業に向けて、人権尊重・差別禁止について教育プログラムを実施している。

傘下に25歳までの若者へのサポート組織もあり、自分自身の性や子供の性について悩んでいる人たちを支援している。

さらに、性的少数者の立場から職場環境を見直したり、性的少数者への理解を高めたりする教育プログラムを2008年から実施。終了した組織には「LGBTQI認定証」を発行している。病院、高齢者施設、図書館、就学前学校、学校など、これまでに550以上の団体や組織が認定証を受けている。(中略)

 ▽認証を受けたシニアハウス
LGBTQIの認定を受けた高齢者施設がスウェーデンには現在10カ所ほどある。勤務するスタッフも教育プログラムを受け、性的少数者への理解や配慮が行き届くよう励んでいる。

その一例として「レインボー(虹)」という名のシニアハウスがストックホルム市内にある。スウェーデンではおそらく一つしかない55歳以上のLGBTQの人のためのシニアハウスである。

子どもがおらず老後に不安を持っていた創立者たちが、同じように思っている人たちと共にこの施設をつくり上げた。彼らは「このような施設があるということ自体、実は悲しいことです。私たちの夢はどんな人でもどこでも受け入れられるようになることです」という。(後略)【11月9日 47NEWS】
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LGBTQの人のためのシニアハウス・・・日本ではそういう発想がまだありません。

代名詞について言えば、アメリカでも近年ジェンダーによらない「they」を単数形として使用するようになっているようです。

“ 「they」と言えば、「彼(女)ら」という複数の代名詞であると英語の授業で教えられてきましたが、近年、男女別の単数の代名詞「he(彼)」「she(彼女)」に換えて、「they」を単数形で使う動きが広がっています。これは、「ノンバイナリー(Xジェンダー)」の方たちに対して、『ワシントン・ポスト』紙が2015年に使い始め、AP通信も2017年に表記の仕方を取り決める「スタイルブック」に採用するなどして、認知が広がっています。”【PRIDE JAPAN】

【中国 メンズ美容市場が活況 「女性っぽい男性」を認めない習近平政権】
一方、中国では、習近平国家主席のもとで進む「文化大革命」的な社会・政治運動の一環として、「女性っぽい男性」を否定する指導・統制が行われています。

「女性っぽい男性」が必ずしもLGBT的な性自任を持っている訳でもありませんが、批判する側の「男らしさ、女らしさ」にこだわる姿勢は、LGBTへの批判と同根でしょう。

****「ニャンパオ」を許さない!中国政府が中性的イケメンを憎む理由****
「ニャンパオ」という中国語がある。漢字で「娘炮」と書くこの言葉には、「女性っぽい男性」という意味がある。

最近の中国の若者たちの間では、自由な自己表現につながるこの中性的な「ニャンパオ」を支持する声が強く、またイケメンのひとつの条件とも捉えられているようだ。だが中国政府はそれを許さない。ジェンダーギャップを乗り越えようとしている世界的な流れに逆行して、なぜ習近平政権は「男らしさ、女らしさ」にこだわるのだろうか。

20年前とは様変わりした若者像
「化粧をして、細い腰つきで、わざとらしい指づかいで、はにかんだように振る舞う・・・」

中国メディア「光明日報」は8月27日、「ニャンパオ」のイメージをこう表現した。中国では、歌手・俳優の鹿晗(ルー・ハン、1990年生まれ)や、歌手の蔡徐坤(ツァイ・シュークン、98年生まれ)などが“典型的なニャンパオ”だと受け止められている。

筆者は、ニャンパオを彷彿とさせるアイドル風の中国人男子に会ったことはない。だが、中国の男性が女性っぽくなっている現象については感じるところがあった。仕事柄、1990年代生まれ(90后)や2000年代生まれ(00后)の中国人留学生と接する機会が多いが、彼らを見ていると明らかに20年前の若者像とは様変わりしている。なによりも外見を気にする男子が増えた。

都内の私大教授は、研究室で受け入れている中国人留学生について、「いずれも一人っ子として親に大事に育てられてきた子たちです」と話す。彼らは、みんな顔つきが優しくて性格も大人しいという。彼らのような若者たちがいずれ中国の政治家になったら、「世間が思うような“怖い国”ではなくなるかもしれない」と漠然と思うこともあった。

化粧品をショッピングカートに
中国では今、メンズ美容市場が活況を呈している。調査会社の艾媒諮詢によると、アンケートに答えた65%の男性が外見の改善に関心があり、沿海部の大都市を中心にエステや審美治療(美しさを求める治療)のニーズが高まっているという。

人民日報海外版(2021年5月18日)は、2020年の「ダブルイレブン」(11月11日=独身の日)に、男性用の輸入化粧品の在庫が前年比で3000%増加したと報じた。「リキッドファンデーションを購入する00后男子は00后女子の2倍であり、アイライナーを購入する00后男子は00后女子の4倍となった」(同)という。(中略)

中国の動画やSNSでも、唇をピンクや紫の色に塗った男子がよく登場する。

ニャンパオ文化を助長したテレビ局
(中略)

必要とされているのは“マッチョな愛国男子”
習近平政権はなぜ、これほど「ニャンパオ」を毛嫌いするのか。
 
2020年5月には、中国人民政治協商会議常任委員会のメンバーの一人が、「中国の若者は弱々しく臆病だ」という理由で「男性の若者の女性化防止に関する提案」を提出している。

男性が女性化しては困るというのは、それが「中国の民族の復興」を遠ざけることになるからだろう。米中対立が激化し、台湾有事が現実のものになりかねない今、国家が必要とするのが、戦地に赴き勝鬨(かちどき)を上げる兵士だとすれば、「化粧を施した、華奢なイケメン」はその理想像に著しく反する。(中略)

中国の大学や専門学校では短期的な軍事訓練が行われるが、2011年に北京大学で3500人の学生が参加する2週間の軍事訓練を行ったところ、めまいで医務室を訪れた学生が延べ6000人を超えたという。学生たちが直立不動の体勢を長時間続けられないことも話題になった。(中略)

戦闘態勢に突入しようとする中国が今こそ欲しているのは“マッチョな愛国男子”だろう。ところが若者たちはアイドルを追いかけ、ニャンパオ文化に溺れている。

(中略)習近平政権はニャンパオの増加に兵士の質を維持することへの支障を懸念したのかもしれない。【11月9日 姫田 小夏氏】
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