孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  日本賛美が向かう中国社会・政治批判 ネット社会における情報統制の成否は?

2016-04-04 22:28:41 | 中国

(中国で大評判の「女子高生1人のための駅」http://usiokanri.seesaa.net/article/432516870.html

ネット上にあふれる日本社会への高い評価
中国から日本への観光客が増加するにつれて、これまで中国国内で言われてきた日本のイメージとは全く異なる日本社会の実像を目にすることで、日本への評価を好意的な方向に改めるケースも増加していること、そうしたことが今後の日中関係にとって良い材料となるこが期待されることなどを、1月19日ブログ「中国からの来日観光客が年間500万人 民意を左右する大きなファクターに」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160119 で取り上げました。

その後も、極めて高く日本を評価する内容の、中国から見た日本に関する記事が連日多数溢れています。
ちょっと不思議なほどです。

多分、中国国内には従来同様に、政府のプロパガンダに沿ったような日本を批判する声も多数あるのでしょうが・・・・。それにしても好意的な内容の意見がこれほどあることだけでも注目に値します。

「爆買」の対象となった温水洗浄便座など日本製品の品質の高さだけでなく、チリが落ちていない、トイレがきれいだ、交通ルールが守られている、接客が親切で細かい配慮がなされている・・・・等々。

****日本がこれほど魅力的なのはなぜ?日本には再び訪日する魅力がある=中国****
中国メディアの今日頭条はこのほど、多くの中国人が日本を旅行で訪れることについて「日本がこれほど魅力的なのはなぜか」と疑問を投げかけ、一度でも日本を訪れると再び日本に来てしまう魅力があると主張する記事を掲載した。

記事は、中国人が日本を訪れる理由は決して買い物だけでないと主張し、むしろ細部へのこだわりといった文化にあると主張。

日本人旅行客は世界中で「礼儀正しく、秩序ある行動ができる」として歓迎されているが、中国人旅行客は日本を訪れることで「日本の文化やサービス、細部へのこだわり」を体験したいと思っているのだと論じた。

中国人がわざわざ日本を訪れてまで体験したいという文化や細部へのこだわりとは一体何だろうか。記事はまず「秩序ある社会」の存在を挙げ、それが体現されているのは「列に並ぶ」という行為であると紹介。

買い物や公共交通機関の利用時など、日本では日常生活のさまざまなタイミングで列に並ぶことになるが、誰も割り込むことなく、自然に列ができる文化を称賛している。中国でも近年は列に並ぶ光景を見かけるようになったが、割り込みなどをめぐってのトラブルも珍しくない。逆に日本では割り込みをめぐるトラブルはほとんどないだろう。

また記事は、日本人が交通ルールを守り、誰もポイ捨てをせず、皆が礼儀正しく、清潔で心地良いサービスを受けられるなどとし、こうした点が中国人旅行客にとって魅力的であり、「一度日本を訪れると、また訪れたくなる不思議な魅力」なのだと主張。

中国人にとって政治や歴史は議論の対象にし難いところがあるとしながらも、一般社会という観点からすれば中国は日本に大きく遅れを取っているのが現実だと指摘している。【4月4日 Searchina】
******************

なかには、“褒めすぎ”というか、日本にだってそうも言えないことだって多々あるよ・・・と言いたくなるようなことも。下記の「ガリガリ君」値上げ謝罪CMへの反応も、日本人からすると疑問に感じるところも。

なお、中国人は“驚異的”“信じられない”“真似出来ない”という意味で“恐ろしい”という表現をよく使うようです。

****10円値上げで謝罪広告の「ガリガリ君」に、中国ネット民衝撃「だから日本は恐ろしい****
新年度に入った1日より、いろいろな物の価格が変わった。その1つに、赤城乳業のアイスキャンデー「ガリガリ君」がある。25年ぶりとなる10円の値上げは多くのファンをがっかりさせたが、同社は苦渋の表情を見せながら社長以下社員一同が頭を下げるというお詫び広告を発表する「誠意」を見せた。これには、中国のネットユーザーも衝撃を隠せなかったようだ。(中略)

この記事を見た中国のネットユーザーは、「感服せざるを得ない」、「25年で10円しか値上げしないのに謝るなんて、参った」、「みんな日本に買い物に行くのも理解できる」、「恐るべき民族」といった評価コメントを続々と寄せた。

ファンへの申し訳ない気持ちもなんとなく伝わってくるようで、値上げを許してしまいそうなユニークなCMを発表した同社の姿勢やセンスには確かに恐れ入る。

あくまで一般のCM動画であり、見る側もそれを楽しめばいいのだが、中国ネットユーザーがあまりにもまじめに反応するのが気になる。

「日本人ならそんなことがあってもおかしくない」というイメージがあるのかもしれない。そして、「中国ではそんなこと絶対にあり得ない」という思いも強いのかもしれない。【4月4日 Searchina】
******************

中国社会が抱える問題への覚醒へ
連日の日本への好意的な声が溢れるなかでも、中国ネットユーザーの心をしっかりつかんだのが、1月19日ブログでも紹介したJR北海道の旧白滝駅・・・・「女子高生1人のための駅」の話題のようです。

****中国で日本の「女子高生1人のための駅」が評判に 「東方の美徳が今も光り輝く国だ!」など絶賛相次ぐ****
中国メディアがこのところ、JR北海道の旧白滝駅の話題を取り上げている。女子高校生1人が通学に必要としたためJRは駅の廃止を見合わせてきた。記事は日本での報道を引用し、鉄道関係者と高校生の心のふれあいも紹介した。多くの読者が「東方の美徳が今も光り輝く国だ!」などと絶賛した。

旧白滝駅があるのはJR北海道の石北本線で、朝と夕方に往復の列車がそれぞれ1本だけ、停車する。

中国メディアの捜狐は、日本の報道を引用して同話題を紹介した。駅を利用すると言っても、容易ではない。朝は遅れられない。万一、遅れれば父か母に車で送ってもらわねばならない。学校に遅刻するのは必至だ。部活がある場合、帰りは駅に駆けつける。乗り遅れまいと懸命に駆ける。駅にもう、列車が来ている。そんな彼女の姿を見て、車掌が微笑む。

利用者が極端に少ないため、JRは駅の廃止を考えた。しかし地元から、通学利用者が1人いるのだから、卒業まで駅の廃止を見合わせてほしいとの声が上がった。JRは応じることにした。そして彼女がこの3月に卒業して、実家を離れて進学することが決まったため、旧白滝駅を廃止することにしたという。(後略)【1月14日 Searchina】
******************

この「女子高生1人のための駅」という“感動美談”にふれる記事は、その後もいくつも見られますが、日本への高い評価は「なぜ中国ではできないのか?」という中国社会・政治の在り様を問う声にもなります。

****日本を見よ!国の本当の美しさとは社会的弱者に対する国の接し方にある=中国****
世界には、その国の美しさや発展度合いを表す壮麗な建築物が存在するものだ。しかし、中国メディアの捜狐はこのほど、国の本当の美しさとは社会的弱者に対する国の接し方にあると論じている。

記事はこの点を論じるために、まず北海道のJR石北線・旧白滝駅の事例を取り上げる。この駅は地域住民の人口減少が原因で廃止するという話が度々持ち上がっていたが、高校通学に利用する乗客が1人だけいた。地域住民の要望もあり、JRは高校生が卒業するまで駅を残すことを決定した。

記事はこの出来事が中国でも話題になっていると紹介。さらに中国は日本に対して非常に複雑な感情を持ってはいるが、それでもこの話は愛に満ち溢れていることを認めざるを得ないと説明。

またこの出来事に対して、あるネットユーザーが「国家が国民1人1人にどう接するかによって、国民1人1人も国家にどう接するかが決まる」とコメントしていることも紹介。旧白滝駅の出来事が中国の国民の思いに大きな影響を与えていることがわかる。

記事はまたペットボトル拾いを生計にするデンマークの貧しい人びとの事例を取り上げている。デンマークのある公務員は、貧しい人びとがゴミ箱の背が高いためにつま先立ちになったりあるいは上半身をゴミ箱に埋没させ顔中ゴミだらけにしてやっとペットボトルを見つける様子に心を痛めた。

貧しい人びとのなかには背の低い人、身体の不自由な人も多い。この公務員は「貧しい人びとの尊厳を重んじるべきだ」とし、街のゴミ箱の高さを30センチ低くするよう関係部署に提案。1カ月後、街に背の低いゴミ箱が設置されはじめたのだという。

記事はこの2つの事例を用いて、社会の美しさや発展の程度は社会的弱者にどう接しているかによって計られると指摘。中国でも多くの人びとが人生の一時期に社会的弱者になる可能性があり、その時、中国社会はそうした人びとを助けようとするだろうかと問いかけている。

この2つの事例に共通しているのは、日本のJRやデンマークの市役所が「多数派ではなく、少数派」のために行動を起こしたことだ。地球の片隅で生じた愛に溢れた出来事を世界の多くの人びとが共有できる現在、記事はこの2つの事例を用いて中国にも社会的弱者を守る風潮を作り出そうとしているのだろう。【4月4日 Searchina】
******************

政府批判のための日本賛美利用も
日本の事例を見て、中国自身がいい方向へ変わってくれるなら、こんな結構な話はありません。
ただ、中国政府批判の方策として日本をほめたたえることをとりあげる・・・という話になると、日本としても少し警戒する必要も出てきます。

****こうして見ると、日本はやっぱり非常に恐ろしい国だ! =中国メディア****
中国メディア・捜狐は25日、「こうして見ると、日本は本当にとても恐ろしい」とする評論記事を掲載した。日本の公衆マナーや社会制度、教育理念を「恐ろしい」といういささかオーバーな言葉で賞賛しているのだが、その節々に現在の中国社会に対する批判的な姿勢が垣間見える。

記事はまず、東京都庁付近の地下鉄駅では大きな人波が見られる一方で大声で話したり物音を立てたりする人がいないと紹介。「他人に面倒をかけないという精神が、完全に体の中で消化されている」と評した。

一方で、中国人は「己の欲せざるところ人に施すなかれ」という孔子の話を「単に口先で唱えているだけ」と断じ、「党規約や憲法、政治科目の作文は上手く書けても、その多くはリアルにならない」としている。

さらに「この国の社会の上層部が憲法をないがしろにするのに、どうして下層部が信号を守るというのか」という文句を「誰かが言った話」としてぶつけた。

また、子どもを甘やかせ過ぎない日本の教育についても評価。「中国のように病気になったからといって何でも点滴を打たせることなく、子どもの強い自己治癒能力を認識している」と論じた。

そして、日本人の仕事に対する意識の高さについても言及。「清掃員であれば、任された場所をきれいに掃除することこそが愛国なのだ」と論じ、「ネット上の愛国主義者に聞きたい。あなたの仕事ぶりはどうなのか、とした。

記事は最後に、中国は日本の26倍の国土を持つ一方で、「中国は国土の40%が利用できないのに対し、日本に砂漠がないうえ海岸線が長く海洋経済区域が広い」とし、1人あたりの資源という点で日本に対するアドバンテージを持っている訳ではないと指摘。「われわれは心をリセットし、『大中華、小日本』という概念を捨て去らなければならない。それで初めて素早く学び、抜き去ることができるのだ」と締めくくった。

これは決して日本を褒めたたえたいから書いた記事ではない。美辞麗句なスローガンばかり並べて実の部分をないがしろにする「社会上層部」、自分の仕事も満足にできないのに口先だけで騒ぐ「愛国主義者」たちに対する皮肉や批判がこの記事の主眼と言えるだろう。

批判の度合いを強めたいからこそ、「恐ろしい」という言葉で日本社会の良い部分ばかりをクローズアップするのだ。「ほめ過ぎだ。日本にだって悪い点はあるし、社会問題だらけだ」というクレームは、記事の作者にとってはほとんど興味のない話なのである。【3月28日 Searchina】
*********************

中国政府批判の目的で日本を賛美するというのは、かつての「反日デモ」が当局が批判できない「反日」を掲げてデモを行うことで中国当局への不満をぶつけていた側面があるのと同様に、日本にとっては関係ない渦中に引っ張り込まれるようなところもあります。

ネット社会での情報統制を強める習近平政権
それはともかく、上記にあげたような日本など外界の情報に容易に接触できる、行こうと思えば外国に行くこともできる、そしてその情報が国内に広く拡散するというネット社会にあって、中国政府が従来のような一党支配を正当化するようなプロパガンダをこのまま続けることができるのか?という疑問も出てきます。

****中国で最もウケた「エイプリルフールネタ」との声も 国営メディアが「渾身の一発」!?****
4月1日はエイプリルフールと呼ばれ、この日だけは嘘をついても許されるとの風習がある。フランスから始まったとの説もあるが、起源は諸説ある。エイプリルフールの風習は日本でも理解が進んでおり、一部企業などはこの日のためだけに特設サイトを作り、ユーザーは「嘘」を楽しむなんてことも珍しくない。

同風習は中国にも伝わっている。「愚人節」と呼び一部の若者には受け入れられ、お祭りのように楽しんでいるという。一方で中国国営メディアの新華社は中国版ツイッター・微博(ウェイボー)の公式アカウントで1日、「愚人節はわが国の伝統文化にそぐわず、社会主義の核心的な価値観にも合わない。みなさんは嘘をつかないようにお願いします。」とのコメントを投稿した。

新華社の同投稿は様々な媒体やユーザーにウェイボー上で共有されて拡散した。中国メディアの頭条新聞も公式アカウントで「あなたは今日誰かに騙されましたか?」と添えて紹介、同投稿にはコメントが殺到した。その多くは国営メディアに対する“反論”だった。

最も「いいね」を集めたコメントはこう述べている。「共産党メディアは毎日がエイプリルフールで、我々は4月1日のみ遊んでいるだけだ。社会主義の核心的な価値観に最も合わないのは一体誰なんだろうか。これからはこんな間抜けな文章は書かないように。」そのほかにも「中国の人々を67年間騙しやがって」、「『社会主義の核心的な価値観』っていうのがエイプリルフールで一番笑えたジョークだ」などのコメントが寄せられ「いいね」を集めた。

これら一連のコメントからは中国の多くのネットユーザーが情報統制されている現状を理解し批判的にとらえていることが分かる。そんな彼らにとって国営メディアのコメントは現状に文句をいう格好の材料だったにちがいない。

しかし一方でこんな恰好な材料を中国国営メディアが発信するだろうかとの疑念も残る。もしこれが国営メディアの「エイプリルフールのネタ」であるとするならば、そこらの特設サイトでは敵わないほど体を張った“渾身の一発”だったと言っても過言ではない。【4月1日 Searchina】
*********************

情報統制が厳しい中国でこんな共産党・政府批判して大丈夫なのか?と心配にもなります。

一方、習近平政権はメディア統制を強化して、「メディアは共産党の姓を名乗るべきだ(党を代弁すべきだ)」と党・政府批判を封じ込めようと躍起になっているように見えます。

****メディア統制に抗議し辞職 中国・広東省の新聞編集者****
進歩的な論調で知られる中国広東省の新聞「南方都市報」のベテラン編集者が、メディア統制を強める共産党に抗議して辞職したことが分かった。香港紙などが伝えた。

辞職したのは、2000年から同紙の記者やコラムニストとして活躍し、文化部で編集者をしていた余少鐳氏。退職理由に「あなたたち(共産党)の姓は名乗れない」とだけ書いた辞職届を29日にネット上に公開。自身のブログに「長い間ひざまずいてきたが、ひざが耐えられなくなった」などと書き込んだ。

書き込みはすでに削除されたが、ネット上で拡散。習近平(シーチンピン)国家主席が2月に国営メディアを視察した際、「メディアは共産党の姓を名乗るべきだ(党を代弁すべきだ)」と発言し、党への忠誠を求めたことへの抗議と受け止められている。

同紙は、習氏の視察の翌日、習氏のこの発言の真下に「魂帰大海(魂が海に帰る)」と一部の地域で見出しをつけた。報道の自由がなくなることを暗に批判したと騒ぎになり、担当編集者が解雇された。【4月1日 朝日】
********************

****習氏批判の書簡巡り、失踪や拘束拡大 当局が徹底調査か****
中国の習近平(シーチンピン)国家主席を批判した公開書簡がネット上に掲載された問題で、失踪や拘束が海外に住むメディア関係者の中国国内の親族にも広がり始めた。事態を重く見た当局が、書簡が海外から発信された可能性も視野に徹底した調査を進めているとみられる。

当局は、意図的な掲載の可能性のほか、ハッカーによる攻撃なども想定し、関係者に事情を聴いているとみられる。人数ははっきりしないが、英BBCは、書簡を掲載したニュースサイト「無界新聞」の責任者や編集者、IT関係の職員らこれまでに20人が連行されたと報じた。

15日に北京空港で拘束されたジャーナリストの賈葭(チアチア)氏は25日に解放された。サイト責任者は賈氏の元同僚で、書簡を見た賈氏は削除を促したとされるが、関与を疑われたとみられる。

さらに、25日には米ニューヨーク在住で、書簡についてネット上で論じた民主活動家の北風(本名・温雲超)氏が、広東省に住む両親と弟が22日に当局に連行されたと公表した。弟は10日ほど前から同氏と書簡の関係について聞かれ、「仕事を失うことになるぞ」と脅しも受けていたという。【3月28日 朝日】
******************

習近平政権による言論封じ込めが功を奏するのか、ネット社会で一党独裁体制が揺らぐのか・・・どうでしょうか?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする