孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

「パナマ文書」が明らかにする各国首脳関係者の資産運用 ロシアは「情報攻撃」と非難 中国はピリピリ

2016-04-05 22:44:09 | 国際情勢

(“flickr”よりBy Mesh News)

近年の秘密情報暴露 「ウィキリークス」、スノーデン元CIA職員
世界中を揺るがす秘密情報暴露と言えば、まず思い浮かぶのはアサンジ容疑者が創設した、匿名により政府、企業、宗教などに関する機密情報を公開するウェブサイト「ウィキリークス」です。

2010年に「イラク戦争の民間人殺傷動画」「アフガニスタン紛争関連資料」「イラク戦争の米軍機密文書」「アメリカ外交公電」などを次々に公開し大きな話題となりました。

外交公電に記された各国首脳の描写などはともかく、機密文書の暴露がイラクやアフガニスタンでの戦闘の実態を明らかにしたことも事実です。

アサンジ容疑者はスウェーデンでの女性への性的暴行の容疑で、2010年12月にロンドンで逮捕されましたが、容疑を否認。スウェーデンへの身柄移送に対する異議申し立てが12年にイギリス最高裁で却下されると、移送を恐れてロンドンの在英エクアドル大使館に逃げ込み、現在まで事実上の軟禁状態にあります。【ウィキペディアより】

アサンジ容疑者は、エクアドル大使館から出られない状態は不法監禁に値するとしてスウェーデンとイギリスを相手取り、国連人権委員会・恣意的拘禁に関する作業部会に訴えていましたが、今年2月4日「国連が明日、英国とスウェーデンに対する私の敗北を宣言すれば、これ以上の抗告に有意義な展望は見出せないので、5日の正午に(エクアドル)大使館を出て、英警察当局による身柄拘束を受け入れる。」と宣言、その成り行きが注目されました。

結局、国連作業部会はアサンジ容疑者の主張を認めたため、アサンジ容疑者が出頭することもありませんでしたが、スウェーデン・イギリス両国は国連作業部会の判断を受け入れないとしていますので、依然としてエクアドル大使館内での軟禁状態が続いています。

****アサンジ氏は「恣意的拘束」=英・スウェーデンは全面拒否―国連****
スウェーデンでの強姦(ごうかん)容疑による逮捕を免れるため、3年半にわたり在英エクアドル大使館に逃げ込んでいる内部告発サイト「ウィキリークス」創設者ジュリアン・アサンジ容疑者(44)について、国連の「恣意(しい)的拘束に関する作業部会」は5日、アサンジ氏が「スウェーデン、英両国政府による恣意的な拘束下にある」との判断を示した。

作業部会は声明で「拘束を終わらせるべきであり、アサンジ氏は補償を受ける権利がある」と指摘するなど、アサンジ氏の主張をほぼ全面的に認めた。

この判断に対し、英政府報道官は「アサンジ氏が恣意的拘束の犠牲者だという見解は、一切拒否する。彼は自発的に大使館にとどまり、合法な逮捕から逃げている」と反論。

同氏をスウェーデンに移送する努力を続けると表明した。スウェーデン政府も「アサンジ氏はいつでも大使館を出る自由がある」として、作業部会の判断を受け入れない姿勢を鮮明にした。【2月5日 時事】 
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次に思い浮かぶのが、2013年6月にアメリカ国家安全保障局 (NSA) による個人情報収集の手口をメディア告発したエドワード・スノーデン元米中央情報局(CIA)職員です。

****米NSA収集の個人情報 9割近くが対象外****
(「ワシントン・ポスト」によれば)アメリカのNSA(国家安全保障局)が、秘密裏に収集していた大量の個人情報のうち、本来の目的である海外の対象者の通信記録などは11%だったということです。

一方で89%は直接、対象ではないアメリカ国内に住む人の電子メールなどだったということで、中には恋愛や個人的な悩みに関するやり取りも含まれていたとしています。

これについて、スノーデン元職員は、「一線を越えた活動だ」と述べたということで、ワシントン・ポストは、大規模なプライバシーの侵害に当たると指摘しています。

NSAによる個人情報の収集を巡って、オバマ政権は強い反発が出たことを受けて、個別の案件ごとに裁判所の許可を得て収集するよう定める改革案をまとめていますが、今回の報道で、再び批判が強まることも予想されます。【2014年7月7日 NHK】
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スノーデン元CIA職員による暴露によって、市民の個人情報がいかに国家当局の監視下にあるのか、その実態が明らかにされました。

“ワシントンポストが実施した世論調査によると、アメリカの30歳以上の大人の57%は「スノーデン氏の罪を問うべきだ」としているが、これは30代以下の若者ではわずか35%という数字だ。56%の”若い大人”たちは、氏がNSAの文章を公開したことに対して「正しいことをした」と応えている”【ウィキペディア】

アメリカ司法省が逮捕状を取得した同氏は、ロシア移民局から期限付きの滞在許可証が発給されロシアに滞在中ですが、最近は帰国したいようで、アメリカ政府に司法取引を持ち掛けているようにも報じられています。

今年2月には「私は政府に、もし私が社会の利益を保護することのできる公正な裁判を受けることが保証されるならば帰ると伝えた。」との発言も報じられています。【2月21日 SPUTNIKより】

【「パナマ文書」が暴く権力者の資産運用
そして現在話題となっているのは、租税回避地、いわゆるタックスヘイブンの企業を通じて各国の首脳や首脳と関係が深い人物が行ってきた金融取引を明らかにした「パナマ文書」。

****各国首脳ら タックスヘイブンの企業通じ金融取引か****
脱税や犯罪で得た資金を隠すマネーロンダリングの温床とも指摘される租税回避地、いわゆるタックスヘイブンの企業を通じて各国の首脳や首脳と関係が深い人物が金融取引をしていたことなどが、パナマの法律事務所から流出した内部文書で明らかになり、問題がなかったか調査を求める声が上がっています。

これは調査報道を行う各国の記者で作る団体、ICIJが租税回避地いわゆるタックスヘイブンの国の1つ、パナマの法律事務所の内部文書を入手したとして3日、発表しました。

それによりますと、内部文書にはタックスヘイブンにある21万4000の団体の情報が記載され、分析した結果、各国の首脳や首脳経験者12人を含む政治家など140人がタックスヘイブンを利用して金融取引などを行っていたということです。

このうち、北欧のアイスランドのグンロイグソン首相は2008年のリーマンショックで自国が金融危機に陥るなか、夫婦で株主に名を連ねるタックスヘイブンのイギリス領バージン諸島の企業を通じて、国内の銀行の債券を数百万ドル(日本円で数億円)保有していたということです。

また、ウクライナのポロシェンコ大統領やサウジアラビアのサルマン国王などもタックスヘイブンを利用していたと指摘しています。

このほか、ロシアのプーチン大統領の古くからの友人らも、2008年から2013年にかけバージン諸島に設立した企業を通じて、少なくとも20億ドル(日本円で2200億円)に上る金融取引を行っていたということです。

タックスヘイブンでの取り引きを巡っては、脱税や犯罪で得た資金を隠すマネーロンダリングの温床になっているとも指摘され、各国の首脳や周辺による取り引きに問題がなかったか、調査を求める声が上がっています。

各国首脳らは反論
今回の報道を受けてアイスランドの議会では、野党4党が4日、グンロイグソン首相に対する不信任決議案を提出し、議会の前では市民が首相の辞任を求めてデモを行いました。不信任決議案の採決は5日以降に行われる見通しですが、議会では与党2党が過半数を占めており、決議案が可決されるかどうかは不透明です。

一方、グンロイグソン首相は4日、ロイター通信の取材に対し「私は常に国民の利益を最優先にしてきた」と述べるとともに、妻も適正に税金を払ってきたとして、辞任する考えはないと強調しました。

ウクライナのポロシェンコ大統領は、租税回避地タックスヘイブンを利用していたと伝えられたことについて、インターネット上で「資産の運用はコンサルタント会社に一任していて、関与していない」と述べました。そのうえで、「私は資産を申告し、税金を支払ってきた」と述べ、脱税などは行っていないと主張しました。

ロシア大統領府のペスコフ報道官は、プーチン大統領の古くからの友人らがタックスヘイブンの企業を通じて金融取引を行っていたと伝えられたことについて、「今回の報道は大統領個人とロシアの政治的な安定を標的にしたものだ」と述べ強く反発しました。そのうえで、ことし9月の下院選挙と再来年の大統領選挙を前に意図的に情報が流され、プーチン大統領を中傷して政権基盤に揺さぶりをかけるねらいがあるという見方を示しました。

フランス スペインは捜査開始
フランスの捜査当局は4日、声明を発表し、文書で指摘されたフランス人について脱税の疑いがあるとして、捜査を開始したと発表しました。

また、この発表に先立ち、フランスのオランド大統領は4日、記者団に対し「すべての情報が分析され、必要な捜査や裁判が行われるだろう」と述べ、問題がないか追及すべきだという考えを示しました。

そのうえで、各国の記者で作る団体、ICIJがパナマの法律事務所の内部文書を入手したことについて、「危険を冒しながらも国際社会にとって有益な役割を果たした内部告発者は保護されるべきだ」と指摘し、文書の告発者が不利益を被ることがないよう訴えました。

また、スペインの当局も4日、声明を発表し、内部文書で指摘されたスペイン人について、マネーロンダリングの疑いがあるとして捜査を開始したことを明らかにしました。

文書流出の法律事務所が声明
内部文書の内容が報じられたパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」は4日、声明を発表しました。
この中で事務所は「メディアの報道は私たちが提供するサービスを不正確に表現し、世界の金融市場における私たちの役割をねじ曲げて伝えている」としています。

そのうえで、「私たちは常に国際的な取り決めやアメリカの法律に従い、法人化した会社が税金逃れや資金洗浄、それにテロ活動への資金提供など、違法な目的に使われていないことをできるかぎり確認している」として違法な行為はしていないと強調しました。【4月5日 NHK】
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パナマにあるモサック・フォンセカという法律事務所は、タックスヘイブンへの法人設立代行において、世界で4番目の大きさを誇る事務所だそうです。

それだけに流失データ量も膨大で、スノーデン元CIA職員も「データジャーナリズム史上最大のリーク」とツイートしています。

情報の出所は明らかになっていません。

“モサック・フォンセカの40年にわたる秘密の記録を最初に入手したのはドイツの南ドイツ新聞と国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)。それを100ほどのメディアで手分けし、1年かけてウラを取ったのが今回の報道だという。モサック・フォンセカの内部告発があったとみられるが、リーク元が誰かは明らかにされていない。”【4月5日 Newsweek】

“文書が流出した法律事務所モサック・フォンセカは、自社のサーバーから内部文書1150万点が流出したのは「限定的なハッキング攻撃」によるものだと述べ、外部の第三者による仕業との見解を示唆している。”【4月5日 AFP】

大金と縁のない貧乏人の私などは、正直なところタックスヘイブンだとかマネーロンダリングだとか言われてもピンときません。

“タックスヘイブンを利用した金融取引そのものに違法性はないが、これを通じて税務当局からの資産隠し、犯罪活動から得た収益の洗浄、横領した資金や政治的に不都合な資産の隠蔽(いんぺい)などが行われることもある。”【4月5日 AFP】

まあ、違法なものも、違法ではないがグレーゾーンのものもあるのでしょう。
サッカー選手のメッシ氏や映画スターのジャッキー・チェン氏などの名前も挙がっているようです。

各国首脳関係では、上記【NHK】に記されている者のほか、カタールのハマド・ビン・ジャーシム・ビン・ジャブル・アール=サーニー前首相やハマド・ビン・ハリーファ・アール=サーニー前首長、バジャル・アサド大統領のいとこのラミとハーフェズ・マフルーフ、デービッド・キャメロン英首相の父親であるイアン・キャメロン氏などの名前も挙がっているようです。【4月5日 Newsweek】

「違法」ではない・・・という話であれば、そうした私人の行為は「まあ、そういうのもありかな。金持ちはいいね」ということにもなりますが、国民に法令順守を呼びかける立場にある各国首脳及びその関係者となると、「違法」でなければOKという訳にもいかないでしょう。

モサック・フォンセカは、世界の権力者や富裕層がパナマのタックスヘイブン(租税回避地)にペーパーカンパニーを設立し、資産隠しや麻薬・武器取引、脱税などに利用するためのアドバイスをしていたのではないか、と疑われていています。

【「逆切れ」のロシア
プーチン露大統領の側近らが「銀行や企業を通じて20億ドル(約2200億円)もの資金を秘密裏に移動させた」とICIJに指摘されたロシア政府は、スキャンダルはアメリカCIAの陰謀だとの見方を示唆しています。

****ロシア、情報攻撃と非難=「CIAなど関与」―パナマ文書****
ロシアのペスコフ大統領報道官は4日、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)がタックスヘイブン(租税回避地)の利用者としてプーチン大統領側近らの名前を暴露したことを「情報攻撃だ」と非難した。

その上で、約2年後に控える大統領選を前に「ロシアの政情を不安定化させることを目的としている」と主張。「ICIJが本当にジャーナリストかは疑わしく、多くは米国務省や米中央情報局(CIA)出身者だ」と決め付けた。

ペスコフ報道官自身も妻がオフショア(非居住者向け)企業に関与したと指摘されたが、これを否定した。また、やはり名指しされたウリュカエフ経済発展相は「理解できない」と一蹴した上で、検証のための情報公開を約束した。【4月5日 時事】 
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まあ、プーチン大統領周辺のカネにまつわる話は以前からあることですし、そうした腐敗・汚職だけでなく、政敵排除など様々な批判に曝されつつも現在の高支持率を維持しているプーチン大統領ですから、今回のような話が出ても殆ど政局には影響しないのではないでしょうか。

中国はピリピリした雰囲気
一方、「パナマ文書」には、中国首脳関係者の名前も挙がっているようです。

****習氏親族記載にピリピリ=「パナマ文書」情報を封鎖―反腐敗闘争に影響も・中国****
国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が、カリブ海のタックスヘイブン(租税回避地)に世界各国の指導者らが設立した会社などを暴露した「パナマ文書」の中には、習近平国家主席や李鵬元首相らの家族・親族に関する記載もあった。

これに対して、中国共産党・政府は一切の報道を認めず、インターネット上からも関連情報を削除するなど封鎖措置を講じた。

習氏らの家族・親族の蓄財疑惑はこれまでも報道されているが、習氏に辞任を要求する公開書簡が公になる中でピリピリした雰囲気が流れている。

中国外務省の洪磊・副報道局長は5日の記者会見で「われわれは雲をつかむようなことにはコメントしない」としか述べなかった。

欧米メディアによると、パナマの法律事務所から流出した資料の中には、習氏の姉と結婚した※家貴氏(※登にオオザト)が2009年に唯一の取締役・株主になった英領バージン諸島のペーパーカンパニー2社が記載されている。習氏の総書記就任後の13年、2社は休眠状態となった。

パナマ文書にはこのほか、李元首相の娘で「中国電力界の女王」と呼ばれる李小琳氏と夫が関係する会社や、最高指導部のメンバーだった賈慶林・前全国政治協商会議(政協)主席の孫娘・李紫丹氏を取締役とする会社もあった。

中国問題に詳しい米国在住の社会活動家・温雲超氏は取材に対し、習主席が展開する反腐敗闘争への影響について「習家の問題は既に暴露されており、短期的な影響はないだろう」としながらも、「長期的には一般民衆がこうした事実を知るにつれ、反腐敗で習氏が得ていた民衆からの支持を失う可能性も出てくる」と解説した。【4月5日 時事】 
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昨日ブログでも取り上げたように、ネット社会にあって党・政府への批判も流布されるような状況で、習近平政府は情報統制を強めています。
また、民衆の不満をそらすためにも、腐敗・汚職の粛清運動を展開してきました。

そうした状況下で、習近平主席の親族らが「蓄財行為」に関与・・・といった話は、やはりまずいでしょう。
中国の検索サイトで「パナマ文書」と入力すると、「中国の法令に反しています」といったメッセージが出るとか。

“日本関係ではセコム創業者の飯田亮・戸田寿一両氏が、1990年代から当時の時価にして700億円もの持ち株をイギリス領バージン諸島やガーンジーに設立された複数のオフショア法人に名義を移転させていたことが判明し、この結果両氏の親族ないし遺族への贈与税や相続税がかなり圧縮されるとの指摘がある。中日新聞の取材に対し、セコムは「税務当局に詳細な情報開示を行って、適正な税金を納めている。課税を免れるためのものではない」と書面で回答したものの、情報開示や納税の具体的内容に関しては説明を避けている”【ウィキペディア】
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