孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

東アフリカを中心に横行する「アルビノ狩り」は、経済成長に伴うごく最近の風習

2016-04-26 22:47:07 | アフリカ

(「アルビノであることに誇りを」という趣旨で、コンゴ民主共和国の首都キンシャサで昨年10月に開催された啓発ファッションショー【2015年10月28日 AFP】)

完全にそろった骨格なら7万5000ドルとも、8万ドルとも
アフリカやアジアで頻発する“アルビノ(先天性白皮症の患者)”殺害や“魔女”殺害といった、呪術的な背景を持った行為についてはこれまでも何回か取り上げてきました。

2015年1月26日ブログ“アフリカ社会に根深い呪術 アルビノ殺害・遺体売買 「魔女」との糾弾”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20150126
2013年6月7日ブログ“パプア・ニューギニア 頻発する「魔女狩り」 近年強まる魔術信仰”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130607
2011年8月24日ブログ‟アフリカ 「まじない」「魔女」など呪術的なものに関する暴力”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20110824 など

「アルビノ」殺害については、主に東アフリカのタンザニア、ブルンジ、ウガンダなどで横行しています。
更に、近年ではアフリカ南部や西部の国々でも増加しています。

****東アフリカに広がる「アルビノ狩り」の恐怖****
先天的な色素異常で肌が白くなる白皮症(アルビノ)は、なぜかアフリカ東部に患者が多い。世界的には約2万人に1人がアルビノなのに対して、アフリカ東部では約3000人に1人だといわれる。

アフリカ東部では07年頃から、アルビノを狙った誘拐・殺人事件が頻発している。タンザニアの呪術医たちがアルビノの人肉は「権力や幸福、健康をもたらす」と主張しているため、「薬」の材料として高値で取引されているからだ。

これまでにタンザニアやブルンジ、ウガンダなどアフリカ東部で数百人が殺害されている。10月末には、タンザニア国境に近い隣国ブルンジの川で9歳のアルビノの少年の切断された遺体が発見された。

タンザニアの警察当局によれば、両手足、性器、鼻、舌、耳がそろっていれば8万ドルという高値が付く。このため、一獲千金を目指して隣国のルワンダやブルンジまで「アルビノ狩り」に行く者が後を絶たない。

タンザニアでは先月末の総選挙で、初めてアルビノの国会議員が誕生した。彼女は、隠れて生活する者もいるアルビノの救世主になれるだろうか。【2010年11月17日号 Newsweek】
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アルビノの比率は“アフリカ東部では約3000人に1人”とのことですが、10倍以上の“タンザニアの人口3500万人のうちアルビノは約15万人”【2011年10年5月7日 AFP】という数字もあります。
いずれしても、“アルビノの赤ちゃんが産まれた場合、差別を免れるために、親が故意に殺すこともあるという。”【2011年10年5月7日 AFP】とのことですから、実際の出現率はよくわかりません。

ブルンジでは今年2月には、5歳の少女が犠牲になっています。

****アルビノの5歳少女、手足切断された遺体で発見 ブルンジ****
アフリカ中央部の内陸国ブルンジで、5歳のアルビノ(先天性色素欠乏症)の少女が自宅から連れ去られ、手足を切断された遺体で見つかった。当局が19日、発表した。呪術に使用する目的だったとみられている。

AFPの取材に応じた地元当局者によれば、武装した男たちが今月17日午前1時(日本時間同8時)ごろ少女の自宅に押し入り、両親を襲って少女を連れ去った。

事件発生直後に少女の両親から知らせを受けた近隣住民らが男たちを追跡したところ、手足を切断された少女の遺体が見つかったという。「男たちは少女の腕を1本、持ち去っていた」と当局者は述べた。

誘拐殺人事件として捜査が始まったが、少女の自宅から金品は何も盗まれていなかったことから当局は、襲撃犯らの狙いが少女だったことは明らかだとしている。

アフリカの一部の国々では、遺伝子の変異による色素欠乏のため肌が白く髪が黄色いアルビノの人々が殺害され、体の一部が呪術に使用される事件が後を絶たない。ブルンジでは2008年以降、20人以上が犠牲になっている。

ブルンジでこの種の事件が起きたのは2012年以来4年ぶり。4年前の事件は首都ブジュンブラからあまり離れていない場所で起きた。

アルビノの人体は隣国タンザニアで高値で取引され、呪術によく利用される。赤十字社(Red Cross)によれば、完全にそろった骨格に7万5000ドル(約840万円)の値が付く地域もあると言われているという。【2月20日 AFP】
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“ブルンジでこの種の事件が起きたのは2012年以来4年ぶり”とのことですから、ブルンジでは一定に収まってきているということでしょうか。

【マラウイ:警察による保護や捜査がきちんとなされず、犯人が野放しになっている】
タンザニア南西部の細長い内陸国マラウイもまた、アルビノ殺害の多い地域です。

****アルビノの女性殺害で10人逮捕 マラウイ、主犯格は親族****
アフリカ南東部マラウイで、先天性色素欠乏症のアルビノの女性(21)を殺害したとして男10人が逮捕された。

マラウイではアルビノの人の殺害が相次いでおり、国連のチームが2週間をかけて現地調査を行っているさなかだった。

25日の警察発表によると、容疑者の男らは女性を農場へ引きずって行って殺し、遺体から骨8個を取り除いた後、袋に詰めて現場へ埋めた。「アルビノの骨は大金をもたらす」という噂を聞いたことが動機となり、殺害に至ったという。

主犯格の38歳の容疑者は被害者のおじだった。

マラウイでは過去2年にアルビノの人が少なくとも8人殺害されている。いずれも骨を呪術の儀式に使うのが目的だったとされる。【4月26日 AFP】
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“マラウイでは過去2年にアルビノの人が少なくとも8人殺害されている”とのことですが、もっと多い数字も報じられています。

マラウイでは未だに「アルビノ」殺害が減っていないようで、今年4月3日にも、わずか2歳のアルビノの赤ちゃんが、母親と一緒に寝ていたところを何者かに連れ去られる事件が起きました。後日、頭蓋骨、歯、着ていた服が発見され、死亡が確認されました。

人権団体アムネスティでは、マラウイにおける警察による保護や捜査がきちんとなされず、加害者が裁かれないまま野放しになっている状況を問題視しており、マラウイ大統領あての署名活動を現在行っています。

****迷信で命を狙われるアルビノの人たちを守って****
皮膚や髪の毛や眼の色が薄いアルビノ(先天性白皮症の患者)の人たちは、その見た目ゆえに、偏見を持たれることが少なくありません。偏見が原因で命を落とす人たちもいるのです。

東アフリカのマラウイでは、数千ものアルビノの人たちとその家族が、日々、誘拐や手足の切断、殺害といった恐怖の中で暮らしています。

「アルビノの人たちの骨や身体の一部を呪術師に渡し、煮て食べれば富をもたらす。彼らの泣き叫ぶ声が大きいほど、切断部位に宿る力は強力になる」――社会にまん延するこうした迷信が、彼らを危険にさらしています。

警察による保護や捜査がきちんとなされず、加害者が裁かれないまま野放しになっている状況が、この問題にさらなる拍車をかけています。

アルビノの人たち関する誤った考えを正し、彼らの保護と加害者の処罰を徹底するよう、今すぐマラウイ大統領に求めてください。(中略)

恐怖の中で生活するアルビノの人たち
マラウイでは、アルビノの人たちを標的にした犯罪が2015年だけでも45件に上ります。そのうち、少なくとも11人が命を奪われ、5人が誘拐されていまだに行方不明のままです。

2016年1月にも、53歳のアルビノの女性が実の兄弟に両腕を切り落とされ殺害されました。3月には、わずか9歳の少年が母親の目の前で拉致され、その1週間後、切断された頭部が近隣の村で発見されました。
アルビノの遺骨を掘り起そうと墓が荒らされる事件も頻発しています。

問われる国の保護と防止対策
アルビノの人たちを狙った事件で、これまでに逮捕されたのはわずか数名です。逮捕されても、無罪放免になるか軽い刑を受けただけです。

アルビノに対する社会的意識は変わらず、差し迫った危険を恐れて、親が子どもを退学させたり、市街地に引っ越す家族もいます。

2015年3月、マラウイ大統領はアルビノの人たちに対する暴力を厳しく非難しました。事件の捜査と加害者処罰を徹底し、危険にさらされている人たちの保護を関係機関に命じました。しかし、その後も逮捕や刑罰の状況には、何の変化も見られていません。【アムネスティ・インターナショナル日本】
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署名期間は2016年3月28日~6月27日(予定)で、https://www.amnesty.or.jp/get-involved/action/malawi_201603.htmlから署名ページに入ることができます。

【「殺害したアルビノの遺体の一部を幸運のお守りに使うという風習は、突然降って湧いたものだ」】
呪術、魔術を信じる人間心理というのは2015年1月26日ブログでも触れたように、微妙なものがあります。
「アルビノ」殺害に関しては、急増したのはごく近年のことで、「アルビノ」の骨に魔力が云々も比較的最近に流布された考えのようです。

****アルビノ襲撃急増の背景を追う、国連専門家****
アフリカでは先天性色素欠乏症のアルビノを標的にした襲撃が、ここ10年で急増している。「魔術」や謎めいたオカルト信仰に起因する襲撃だという見方がある一方で、それだけでは説明がつかないと指摘する専門家もいる。

自らも先天性色素欠乏症であるナイジェリア人のイクポンウォサ・エロ氏は、国連(UN)が初めて起用したアルビノの人権問題の専門家だ。アフリカ全土でアルビノが無残に殺傷されている原因の解明に取り組んでいる。
 
2006年以前にもアフリカではアルビノ襲撃事件がまれに起きていたが、過去10年間に大陸全体で激増していることを重く見たエロ氏は、この問題が明らかに一つの社会現象になっており、より踏み込んだ調査が必要だと訴えている。

エロ氏はAFPの取材に対し「『魔術』のせいだと言えば皆、そうかと思ってしまう。だがそれは正しくないだろう」と語った。
 
アルビノに対する暴力の大半は、アフリカ東部のタンザニアで発生している。06年以降、タンザニアでは何十人ものアルビノが虐殺されたり重傷を負わされたりしている。同国では、地中からダイヤモンドを掘り出すための儀式で、アルビノの遺体の一部が使われているという報告がある。
 
さらに近年は、タンザニアから数千キロ離れたアフリカ南部や西部の国々でも、アルビノ襲撃事件が急増。そのうちの一つシエラレオネでは、07年以降少なくとも60人のアルビノが殺害されている。
 
アルビノの体の一部を持っていれば富がもたらされるという珍妙で、まじないめいた言い伝えが、この広大なアフリカの各地で比較的、短期間になぜ信奉されるようになったのか。エロ氏は、これこそが鍵となる問いだとみている。
 
切断されたアルビノの遺体に魔力があるという考えが、植民地化以前のアフリカ大陸に広くあったことを示す証拠は知られていない。
 
タンザニアとブルンジでアルビノの被害が増加している原因を解明しようと、赤十字国際委員会(ICRC)が09年にまとめた報告書でも「殺害したアルビノの遺体の一部を幸運のお守りに使うという風習は、突然降って湧いたものだ」とされている。

■「魔術」以外の原因
エロ氏は「魔術」以外の原因を探ることが自分の使命だと話している。「いろいろな説がある」中で、エロ氏が「信ぴょう性がある」と考え特に注目しているのが、アフリカの富の増大だ。

この説は、アフリカの経済成長で新たな個人の富がもたらされたことにより、一部のコミュニティーで憤りや疑念が膨らんでいると指摘している。

エロ氏によると、極端な例では「資本主義が奇跡の現象として受け止められ、ある人はとても裕福なのに、自分はどうしてこんなに貧しいのか、人々が理解できない」でいる。

そうした状況で、アルビノの遺体の部位が富をもたらすという自称「呪術医」の言葉が説得力を持ち、それをうのみにしてしまう人がいて、さらに広まっている可能性がある。【3月16日 AFP】
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資本主義経済の浸透・経済成長がもたす「格差の拡大」のなかで、どうして彼らだけが・・・、自分も金持ちになりたい・・・そういう思いが、「アルビノ」呪術の背景にあるとの指摘です。

もっとも、“完全にそろった骨格に7万5000ドル(約840万円)の値が付く地域もある”という話になると、呪術云々ではなく、単純な商品経済の原理に従って「アルビノ」を殺害しようとする輩が出てくるようにも思えます。

7万5000ドル(約840万円)もの金額で購入するのは「成功者」でしょうが、金持ちになったらなったで、もっとカネが欲しい・・・・ということで「アルビノ」購入するのでしょうか。
“民主的な”選挙の必勝祈願(日本のダルマのようなもの)として購入する者も多いように聞きます。

ダルマにしてもそうですが、人知を超えたものに対する思い・心理というのは、一概に迷信云々と嗤うべきものではありませんが、ただ同じ人間を殺害して、その遺体の一部を・・・というのは最低です。

「アルビノ狩り」のハードルを低くしている背景には、自分たちと異なる少数者への差別・排斥の心理もあるでしょう。醜悪です。

それにしても、アフリカにおいて内戦・紛争や飢餓などで失われる人命のなんと「軽い」ことか。
「アルビノ狩り」もそのひとつです。
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