孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

EU  イギリス離脱には耐えられても、フランス・ドイツで反EU感情が高まると・・・

2016-04-17 22:43:41 | 欧州情勢

(トルコ・エルドアン大統領風刺詩の作者ヤン・ベーマーマン氏【4月15日 ロイター】 ドイツ国民の多くは「表現の自由」を支持していますが、かなりきわどい内容で、ヘイト・スピーチに近いものもあるとの意見も。)

熊本地震の鎮静化・復旧を願って
私自身は鹿児島県薩摩川内市に住んでいますが、このところ熊本の地震で落ち着きません。益城町に隣接する地域に親戚がいるのですが、大変な状況のようです。

川内の方も、もちろん震源近くほどではないものの、強い地震のときは夜中に飛び起きて全身が固まるぐらいには揺れます。それ以外でも、頻繁にぐらぐら揺れています。

国内で唯一稼働している川内原発は今のところは支障ないようです。

気になるのは、一連の地震のもとになっている活断層のひとつ、日奈久断層帯は比較的鹿児島に近く、先ほどのTVニュースでは「気象庁は日奈久断層帯の南西側で小規模な地震が起き始めていることに注目している。今後大きな地震につながる危険も・・・」なんて、不気味なことを言っていました。比較的県境に近い日奈久断層帯で強い地震が起きると、川内の揺れも今までのレベルではすみません。

川内は、1997年の鹿児島県北西部地震で震度6弱と5強の揺れを経験しました。あんな怖い思いは二度とご免ですが・・・・。
今日まで知りませんでしたが、文部科学省が公表している主要断層の長期評価によると、全国187断層のうち、30年以内の発生確率が最大16%と全国で最も高いのが、日奈久断層帯の八代海区間だとか。困った・・・。

生活にも支障が出ています。山口に出かける用事があったのですが、新幹線・高速バスの運行が止まり、中止しました。こちらに来る予定の知人もいたのですが、それもキャンセルになりました。

物流・生産が止まっている関係で、スーパーでもパンなどの商品がめっきり少なくなったように見えます。
観光業関係者もキャンセルラッシュで大変なようです。

なんだかんだ言いつつも、被災地の方々の苦労・心痛に比べれば取るに足りないことです。一日も早い事態の鎮静化・復旧を願います。

イギリス:EU離脱を問う国民投票に向けて法定キャンペーン期間開始
さて、イギリスのEU離脱をめぐる話題です。国民投票に向けた取り組みが本格化しています。

****残る?去る?悩める英 国民投票、運動期間入り****
英国は欧州連合(EU)から離脱すべきか――。6月23日の国民投票まで10週間となった15日、公費も投じられる法定キャンペーン期間が始まった。

世論は残留と離脱が拮抗(きっこう)しており、予断を許さない。英国民の選択の行方を、他のEU加盟国も注視している。

英国の選挙管理委員会は離脱派、残留派一つずつを公式団体に選んだ。2団体はビラの全戸配布やテレビの放映枠も認められる。

 ■与野党が混在
いずれの派も、与野党が入り交じる。残留派の「ブリテン・ストロンガー・イン・ヨーロッパ(英国は欧州にいてこそより強くなれる)」には保守党のキャメロン首相と最大野党・労働党のコービン党首が並ぶ。

一方、離脱派の「ボート・リーブ(離脱に投票を)」には、英国独立党(UKIP)のファラージ党首と保守党議員でもあるロンドン市長のジョンソン氏やゴブ司法相が名を連ねる。(中略)

世論は二分されている。英タイムズ紙によると12日現在、離脱と残留の支持率はともに39%。17%が態度を決めていないと答えた。

離脱派は、キャンペーンをエリート政治家や国際企業など支配層に対する抗議運動と位置づけ、支持拡大を狙う。「パナマ文書」絡みで強い批判を浴びたキャメロン首相には脅威だ。

英国がEU離脱を選べば影響は各方面に及ぶ。
英国の通貨ポンドは、国民投票の日程が発表された直後の2月下旬、米ドルに対して7年ぶりの安値をつけた。離脱で英経済の成長が鈍化するとの懸念から、投資を先送りする動きも表れている。

欧州拠点をロンドンに置く国際企業が、拠点を移す可能性もある。離脱なら2020年までに金融部門で最大10万の雇用が失われるとの推計もある。

14年の住民投票で独立が否決された北部スコットランドは、EU残留派が多い。英国全体が離脱を選べば、EU残留を求め独立運動が再燃するとみられている。

 ■他国に波及も
EUも、英国の離脱で発言力が弱まることを懸念する。米中、米ロのはざまでEUはまとまって意思を示し、安全保障や環境の分野で存在感を示してきた。米国と関係が深く、EU内でドイツに次ぐ経済規模の英国が抜ければ、影響力低下は免れない。

またEU各国では、債務危機や難民危機を受けて、EUに懐疑的な勢力が台頭している。英国が離脱すれば、懐疑派を勢いづかせ、遠心力が強まりかねない。

ロンドン大経済政治学院のサイモン・ヒックス教授(政治学)は、人々の判断の決め手を「離脱した場合の経済停滞や、残留して移民流入が続く場合のリスクの評価だ」と分析した。【4月16日 朝日】
******************

「残留支持派」にとっては、状況は好ましくありません。

EU域内の反EU感情を測る目安の一つとしても注目されていた、オランダで6日に行われたEUとウクライナの連合協定の是非を問う国民投票で、反対が賛成を大きく上回りました。

****国民投票でEU懐疑派「勝利」=対ウクライナ協定、反対多数―オランダ****
オランダで6日行われた欧州連合(EU)とウクライナの「連合協定」の是非を問う国民投票は、即日開票され、反対票が多数を占めた。国民投票はEU統合の深化が実質的な争点で、統合に反対するEU懐疑派の主張が受け入れられた形だ。

EU内では、英国が6月にEU離脱の是非を問う国民投票実施を控えており、オランダでの結果が微妙な影響を与える可能性がある。

オランダ放送協会(NOS)によると、反対票が61.1%と賛成票の38.1%を大きく上回った。投票率は32.2%となり、成立に必要な最低基準の30%を超えた。

協定は政治・経済関係の強化に向けてEUとウクライナが署名。オランダ議会はEU28カ国で唯一、正式に批准していなかった。国民投票の結果に法的拘束力はないが、反対票が多数を占めたことで、議会での早期批准の可能性は遠のいた。【4月7日 時事】 
*******************

「残留支持派」にとって一番頭が痛いのは、国民への残留支持の呼びかけで中心に位置するキャメロン首相に「パナマ文書」問題が起きて、批判が高まっていることでしょう。

****<英国>国民投票、15日から運動開始…EU離脱の是非問う****
・・・・キャメロン首相はEU残留を主導しているが、租税回避地(タックスヘイブン)への投資で利益を得ていた問題が明るみに出たことで、国民投票の行方にも影響を及ぼしそうだ。

国民投票の主要な争点は、東欧などから急増するEU内の移民問題などだったが、租税回避地への投資の問題を巡り、国民の間にキャメロン氏に対する不信が芽生え、残留運動に影を落としている。

調査会社「ICM」の世論調査では、問題発覚の前後で、離脱派が残留派を上回り、形勢が逆転した。問題が発覚した後の8〜10日の調査では、離脱派は45%と先月末に比べ2ポイント上昇。一方、残留派は42%と先月末に比べ3ポイント減少した。

残留を主導するキャメロン氏の党内での求心力にも陰りが見える。英BBCの先月の調査によると、与党・保守党内の下院議員330人中130人が離脱派だ。英メディアは「複数の残留派の保守党議員が、この問題で離脱派が勢いづくと懸念している」と伝えた。

EU政策などを調査するシンクタンク「オープン・ヨーロッパ」の政治アナリスト、パウエル・スウェドリキ氏は「残留派はキャメロン氏に対する国民の信頼を支柱にしており、今回の事態は残留派へのダメージになる」と取材に答えた。

一方、当初は態度表明にやや慎重だった経済界からは、離脱による悪影響を懸念する声が出始めている。主要企業で作る英産業連盟(CBI)は3月21日、EUを離脱した場合、2020年までに英国経済全体で国内総生産(GDP)5%分の損失が発生し、95万人の雇用が失われるとする試算を発表。フェアバーン事務局長は「国民の生活水準、雇用、成長への大きな打撃となる」と警告した。

外部から警告する声もある。国際通貨基金(IMF)は12日に発表した世界経済見通しの中で、英国の国民投票について「世界経済の潜在的リスク」と指摘。離脱した場合は「貿易関係を損ない、地域と世界に深刻なダメージを与える」と異例の警告を行った。【4月14日 毎日】
********************

フランス:大統領を視野に入れ始めたマリーヌ・ルペン氏 不人気なオランド大統領
どういう結果になるかはわかりませんが、仮にEU離脱の結果となった場合、イギリス自身はともかく、EU側は、大きく揺らぐものの致命的なダメージまでには至らないのではないでしょうか。

これまでのEUを支え、牽引してきたのはフランス・ドイツであり、イギリスは常にEUとは距離を保ってきていますので。ときには傍観者・攪乱者として。

それだけに、イギリスが離脱しても持ちこたえるにしても、独仏で反EU感情が支配的になると、EUは実質的に機能を停止します。

フランスでは、反EUを掲げる右翼、マリーヌ・ルペン氏が次期大統領を視野に入れるほどに勢力を拡大しています。一方のオランド大統領は相変わらずの不人気が続いています。

****続投の是非、年末に判断=高失業率で不人気―仏大統領****
フランスのオランド大統領は14日、地元テレビに出演し、2017年の次期大統領選に出馬するかどうかについて「年末に判断する」と述べ、自身に対する国民の評価次第では続投を断念する可能性もあるとの考えを示した。

フランスの失業率は今も10%超の高止まりが続き、大統領が悲願としてきた失業問題の改善は果たせていない。最近の世論調査ではオランド氏の実績を「評価しない」と答えた人が87%を占めるなど、不人気ぶりに拍車が掛かっている。【4月15日 時事】
******************

かつては、マリーヌ・ルペン氏は第1回投票で勝利することはできても、フランス国民に根強い反右翼感情によって、決選投票に勝利することは無理だろうと見られていましたが、昨今の情勢はあながちそうも言いきれない感が出始めています。

ドイツ:EU推進のエンジン、メルケル首相が窮地に
先ほど“これまでのEUを支え、牽引してきたのはフランス・ドイツであり”と言いましたが、もっと端的に言えば、最近のEUをリードしてきたのはドイツ・メルケル首相です。

ドイツ国内でも確固たる支持を誇っていたメルケル首相ですが、欧州に押し寄せる難民問題で寛容な姿勢をとってきたことで、政治的に厳しい状況に追い込まれています。

メルケル首相が、反移民・反EU感情のドイツ国内で高まりで退陣を余儀なくされる事態ともなれば、EUはエンジンを失い漂流することにもなります。

****ドイツ国民がEUに見切りを付けたら****
財政難の国があれば支援してやり、難民がいれば受け入れてやる。そんなドイツ任せのEUでは、いずれ立ち行かなくなる。

先月行われたドイツの地方選挙で、国民はメルケル首相率いる与党・キリスト教民主同盟(CDU)にはっきりと「ノー」を突き付けた。EUは難民問題を解決できないと考える国民が増え、ドイツに孤立主義や単独行動主義を求める声が高まっている証拠だ。極右勢力も勢いを増している。

由々しき事態だが、驚くほどのことでもない。共通の課題に一致団結して当たるという点で、EUは失敗続きなのだから。

EU諸国とドイツの足並みの乱れは顕著で、多くの国が難民の受け入れを拒んでいる。難民流人の抑制を目指し、EUとトルコは「難民交換」の枠組みに合意した。だが、ドイツ人の大半は、他のEU諸国が難民拒否の姿勢を変えると思っていない。

だからドイツ人は怒っている。キプロスやギリシヤ、アイルランド、ポルトガル、スペインを救済するときも、ドイツは最大の金銭的負担を背負わされてきた。またか、という思いだろう。

しかも今は、イギリスがEUを離脱する可能性が高まっている。
これではドイツ人が、EU離れこそベストな選択と思いたくなるのも無理はない。

もちろん、難民問題をめぐる他国との亀裂を利用している政治家もいるだろう。以前から反対している「欧州銀行同盟」などの推進を阻止する口実にしたいのだ。

だが反EU派の主張は、これまで親EU派だった国民の間にも浸透しつつある。要するにEUは「ドイツの金目当て」なのだろうという思いが、民意になりつつある。(中略)

難民問題は経済政策の優先順位を覆した。インフラ投資や教育投資を大幅に増やすという連立政権の公約は、もはやむなしく響くのみ。税制や家族支援政策などの改革も先送りだ。(中略)

難民がドイツに1人、また1人と到着するたびに、総選挙が予定される来年までの「財政均衡」の実現は遠のいていく。

公共投資はさらに減りそうだ。社会支出の増加や最低賃金の引き上げもある。恩恵を受ける国民もいるだろうが、難民の職探しはますます難しくなるだろう。急を要する改革が滞れば、経済成長の持続も怪しくなる。

EU各国の首脳が難民問題で応分の負担を拒み、共通の解決策に合意しなければ不利を被るのは難民だけではない。EUの未来にもダメージがもたらされる。ドイツの国内改革が遅れ、EU諸国との連携は薄まると考えられるからだ。

このままではいけない。このままでは、ドイツで台頭しつつある偏狭なナショナリズムが欧州全域に広がってしまう。【4月19日号 Newsweek日本版】
*********************

ここにきて、更にメルケル首相の足を引っ張る厄介な問題が。

****独作家がトルコ大統領風刺 メルケル氏、司法手続き容認****
ドイツの男性風刺作家が、トルコのエルドアン大統領を過激な表現で風刺し、難民問題でスクラムを組む両国関係に波紋が広がっている。(中略)

コメディアンで風刺作家のヤン・ベーマーマン氏(35)が3月末、公共テレビの番組で披露した詩の中で、エルドアン氏について人種差別や性的に過激な表現で中傷を繰り返した。

これに対し、トルコ政府は「侮辱的な詩だ」とドイツ政府に抗議。ドイツの検察当局に国家元首を侮辱した容疑で告訴した。

独DPA通信によるとドイツ刑法では、国家元首などへの侮辱があったと外国政府から訴えがあった場合、検察の捜査開始には独政府の許可が必要となる。起訴されて有罪判決を受ければ、3年以下の懲役刑などが科せられるという。

独シュピーゲル誌は、ベーマーマン氏が首相府長官宛てに「風刺の限界を試すことが許される国に住みたいと願う」などとメッセージを送ったと伝えた。

ドイツでは、エルドアン政権が表現の自由などを侵害しているとの声が高まっていた。騒動を受けて、芸術家たちがべーマーマン氏への支持を表明。世論調査では82%が同氏を「訴追すべきでない」と答えた。

メルケル氏は苦しい立場だ。ドイツには中東などから大量の難民が流入しており、難民の流入抑制策でトルコは欧州連合(EU)と合意したばかり。関係悪化は避けたいのが本音だ。

難しい判断を迫られたメルケル氏は、15日の会見で「法治国家において表現や言論の自由に関する問題は、政府ではなく検察や裁判所が判断するべきだ」と述べ、司法に判断をゆだねることに理解を求めた。

一方、シュタインマイヤー外相とマース法相は共同声明で「司法手続きを許可すべきでないと考えていた」とし、政権内で意見対立があったことを示唆した。【4月16日 朝日】
********************

トルコ・エルドアン大統領の強権姿勢・表現の自由への圧力についてはこれまでも取り上げてきたところではありますが、メルケル首相としてはトルコの協力で難民問題を乗り切りたいところです。

“司法手続きを検察当局にゆだねる方針”とは言いつつも、「危機解決のため、摩擦を避けたという致命的な印象を与えた」(独メディア)というのは否定できません。

欧州的価値観と現実の政治課題の板挟みに苦しむメルケル首相です。エルドアン大統領も随分と頑なな姿勢です。思惑があってのことでしょうか。

こうしたこともあって難民問題への対応に失敗すれば、ドイツ国内での反EU感情は更に高まります。そのときEUは・・・・?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする