孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ロシア  NATO東方拡大への強い不信感 日ロ首脳会談への思惑 国内統制強化の動き

2016-04-30 22:22:43 | ロシア

【4月30日 NHK】

ロシア・NATO間の相互不信
クリミア併合・ウクライナ東部での画策によって欧米から孤立し、制裁措置を受けているロシアですが、その後、シリア介入でシリア問題でのイニシアティブを握ることによって、国際情勢を左右する重要国としてその存在をアメリカなどに再認識させています。

ただ、ロシア・プーチン大統領の力による現状変更を厭わない姿勢に対し欧米側には不信感があり、特に、ロシアに近いバルト三国やポーランド、北欧諸国などではロシアへの強い警戒感があります。

一方、ロシア・プーチン大統領には、NATOの東方拡大でロシアが脅威にさらされているという考えが一連の行動の根底にあります。

そうした相互不信も強く存在するなかで、今月20日、NATO・ロシア理事会(大使級会合)が2年ぶりに開催されました。

****実力でNATOけん制か=東方拡大に不信感―ロシア****
ロシアは、約2年ぶりとなる北大西洋条約機構(NATO)・ロシア理事会(大使級会合)再開を歓迎する一方で、NATO批判の場に利用したい考えだ。

最近も東欧で米駆逐艦や偵察機にロシア空軍機を異常接近させており、実力でけん制を図っているとみられる。
 
NATO・ロシア理事会の中断のきっかけとなったロシアのウクライナ軍事介入は、ロシア側の理屈からすれば「NATOの東方拡大」への予防措置だ。ロシア外務省のザハロワ情報局長は19日、理事会でこの問題を提議すると息巻いた上で「東方拡大は1997年の基本文書の精神に反する」と批判した。
 
NATO・ロシアの基本文書は、NATO部隊を東欧に「常駐」させないことをうたっている。しかし、ウクライナ南東部への軍事介入後、米軍はロシアを脅威と見なす東欧諸国での部隊の「ローテーション配備」を開始した。ロシアから見れば、ウクライナ危機前より米国への不信感は強い。【4月20日 時事】 
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理事会では特段の進展はなかったようですが、途絶えていた会合が開催されたこと自体に意味があるということでしょうか。

****NATOロシア理事会 2年ぶり開催 緊張緩和難しく****
北大西洋条約機構(NATO)とロシアは20日、政治対話の枠組み「NATOロシア理事会」の大使級会合をブリュッセルで開いた。ウクライナに対するロシアの軍事介入後、理事会は事実上停止していたが、約2年ぶりに再開。対話継続の必要性では一致したものの、緊張緩和への道は険しい。
 
NATOのストルテンベルグ事務総長は会合後の記者会見で「率直かつ真剣な議論ができたが、意見の不一致を変えることはできなかった」と強調。ロシアが今月、バルト海で米国の駆逐艦などに空軍機を異常接近させた事案などを巡り、意見の隔たりを埋められなかったと説明した。
 
一方、ストルテンベルグ氏は「困難な問題を抱えているからこそ対話を続ける必要がある」と述べ、理事会を継続する意思を示した。双方はウクライナ東部の紛争を巡る昨年2月の停戦合意(ミンスク合意)の履行が必要との認識では一致した。【4月20日 毎日】
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NATO側が問題にしているロシア軍機による危険行動は、今月11~12日、バルト海での共同訓練中のアメリカ駆逐艦に対して行われています。

****<露軍機>米艦に異常接近 ポーランドとの共同訓練中****
米欧州軍は13日、バルト海の公海上に展開していた米軍のミサイル駆逐艦「ドナルド・クック」が11、12両日にロシア軍のスホイ24戦闘爆撃機2機から繰り返し異常接近を受けたと発表した。

アーネスト大統領報道官は「公海、公空で近接して行動する軍の規範を完全に外れたものだ」と批判し、露軍が異常接近を繰り返していると懸念を表明した。
 
欧州軍によると、駆逐艦が11日、共同訓練の一環でポーランド軍のヘリコプターと着艦訓練を行っていた時、2機が駆逐艦の周りを低空で何回も飛行した。12日にはロシア軍のKA27ヘリコプター1機が作戦行動していた駆逐艦の周りを低空で計7回旋回。約40分後に再び爆撃機2機が現れ、駆逐艦の周りを11回低空飛行した。
 
欧州軍によると、爆撃機は「攻撃時のような飛行態勢」を取った。同軍が公表した写真には、駆逐艦をかすめるように低空で飛ぶ爆撃機が写っている。

米軍は無線を通じ英語とロシア語で繰り返し注意を呼びかけたが、応答はなかった。欧州軍は「緊張を不必要に高め深刻な負傷や死亡につながる計算違いや事故という結果をもたらし得る」と非難した。
 
米露関係は、ロシアが2014年にウクライナ南部クリミア半島を編入したことで悪化。米国は対露警戒感を強めるポーランドやバルト3国との合同軍事演習を強化するなどしてロシアを抑止しようとしている。

これに反発するロシアは、核軍備増強計画を発表し米軍機や米軍の艦船に異常接近するなどして米国をけん制している。【4月14日 毎日】
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14日にもロシア軍戦闘機スホーイ27によるアメリカ軍の偵察機への危険な接近がありました。
理事会後も、同様のロシア軍機による牽制行動が続いています。

****ロシア戦闘機 米偵察機に再び危険な接近****
アメリカ国防総省は、バルト海の上空でアメリカ軍の偵察機が再びロシアの戦闘機に危険な接近を受けたことを明らかにし、アメリカ軍の航空機や艦艇に対して危険な行為を繰り返すロシア側の対応を改めて批判しました。

アメリカ国防総省は、バルト海の上空で29日、国際空域を飛行していたアメリカ軍の偵察機RC135が、ロシア軍の戦闘機スホーイ27から危険な接近を受けたことを明らかにしました。(中略)

国防総省は、去年からロシア軍機によるアメリカ軍の航空機や艦艇に対する危険な行為が相次いでいるとして強い懸念を示したうえで「二国間の緊張を不必要に高めるおそれがある」としてロシア側の対応を改めて批判しました。【4月30日 NHK】
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もっとも、危険行動ではないにしても、牽制行動はロシア側だけでなくアメリカ側も実施しています。

****米軍のF22、ルーマニアに初着陸 ロシアの軍拡牽制か****
米軍は25日、世界最先端の戦闘機とされる「F22ラプター」2機をルーマニアに初めて着陸させた。

F22は音速の2倍というスピードや高いステルス性能で知られる。ルーマニアへの派遣は北大西洋条約機構(NATO)の演習の一環として、米戦闘機の即応性を実演するのが公式の目的とされた。同時に、ロシアの軍備拡張が目立つ黒海周辺で、NATO加盟国に米軍の力を示す狙いもあった。

2機のF22はイングランド東部のレイクンヒース英空軍基地を飛び立ち、ルーマニアの都市コンスタンツァ近郊のミハイルコガルニチャヌ空港に到着。米国のクレム駐ルーマニア大使の出迎えを受け、数時間後には英国へ引き返した。

コンスタンツァはウクライナ国境やクリミア半島、ロシア海軍黒海艦隊の拠点セバストポリに近い黒海沿岸の都市。ロシアはウクライナ領だったクリミア半島を2014年に併合した。

ルーマニア空軍の参謀総長は、このところロシアによる上空での活動や作戦、訓練がますます盛んになっていると話す。クレム大使は記者団に「ロシアはこの2~3年間、当地域の不安定化をもたらしてきた」と語った。

一方でロシア側は、緊張を高めているのは同国でなくNATOのほうだと主張している。【4月26日 CNN】
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お互い“向こうが先に威圧してきたので、こちらも対抗上・・・”というところでしょう。

現在の国際状況を考えると、アメリカ・NATOとロシアの間で一定の緊張があるのはやむを得ないところではありますが、一線を越えた状況にならないよう、また、不測の事態を引き起こす危険が高まらないよう、20日に開催された会合のような話し合いの場を今後も用意していく必要があります。

日ロ首脳会談でロシア包囲網解体を狙うロシア・プーチン大統領
アメリカはロシア包囲網を維持するために、同盟国がロシアと二国間で交渉することには慎重な姿勢ですが、そうしたアメリカの制止を振り切る形で、安倍首相はロシア・プーチン大統領の会談に臨みます。

日本・安倍首相の狙いとしては、‟ウクライナ情勢などの影響を受けて、北方領土問題を含む平和条約交渉が停滞していることを踏まえ、交渉の加速化を改めて確認し、繰り返し延期されているプーチン大統領の年内の日本訪問に道筋をつけたい考えです”【4月30日 NHK】とのことで、要するに、北方領土問題交渉の土俵にプーチン大統領を引っ張り出したいというところでしょう。

一方のロシア・プーチン大統領側の思惑は・・・・

****プーチン大統領に思惑=G7包囲網解体へ―日ロ首脳会談****
ロシアのプーチン大統領が、5月6日のロシア南部ソチへの安倍晋三首相の非公式訪問を早くも歓迎している。

背景には、北方領土交渉の用意があることを示唆して日本に独自外交を促し、ウクライナ危機に伴う先進7カ国(G7)の対ロシア包囲網をなし崩しにしようとする思惑もあるとみられる。
 
日ロ首脳会談の日程は4月20日、プーチン大統領自ら各国大使の信任状奉呈式の場で明らかにした。異例の公表で「サプライズ」(外交筋)と受け止められている。
 
「米国からの圧力にもかかわらず、日本の友人たちは(日ロ)関係を維持しようとしている」。プーチン大統領は14日のテレビ特番終了後、記者団の前で、米国の反対を押し切って訪ロを決断した格好の安倍首相を高く評価した。このところロシア側に目立つのは、制裁の中で久しく見られなかった「友好ムード」だ。
 
中国は「友人」で日本は「パートナー」の位置付けだったが、ラブロフ外相は外国メディアとのインタビューで「(日本は)友人」と連呼。岸田文雄外相と15日に東京で会談後の共同記者会見でも、従来の「第2次大戦の結果、北方領土はロシア領になった」といったストレートな強硬論を封印し、交渉に応じる姿勢をアピールした。
 
ロシアとしては、クリミア半島編入の現状をまず固定化したい。中断する日本との外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)再開などを見据え、クリミアには触れないまま、日ロの2国間関係を「通常モード」(観測筋)に少しずつ近づけたい狙いがある。
 
ロシアは、ウクライナ東部の停戦合意についても「履行する意思がないのはポロシェンコ政権だけだ」と開き直っている。同様に現状を固定化したまま、欧米との緊張緩和を図りたいところで、日本はその突破口の一つとなる。
 
プーチン大統領の目標は、年内の公式訪日の実現だ。日本とは15日の外相会談で、安全保障に関する協議の場を設けることでも合意し、日ロ間の交流は息を吹き返してきている。
 
日本だけではない。プーチン大統領は10月、フランスを訪問する方向で話を進めている。ウクライナ危機を受けた対ロシア包囲網は、着々と解体に向けて進みつつある。【4月29日 時事】
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ロシア側は北方領土問題の“エサ”で日本を引っ張り込んで・・・というところのようです。

アメリカの立場とは別に、日本には日本の事情がります。いつまでも棚ぼたが落ちてくるのを口を開けて待つだけはなく、その“エサ”次第では食いついてもいいのでしょうが、疑似餌でなければいいのですが。

国内統制を強めるロシア 中国と同じ路線
ロシアは国内的には、NGOなどへのアメリカ等の外国勢力の影響を排除する方向を強めていますが、発表されたロシア国内の国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の活動拠点を閉鎖する方針も、そういう路線の延長上にあるようです。

****ロシア、人権活動へ圧力 国連機関拠点を閉鎖方針 NGOに続き****
ロシアがこのほど、国内の国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の活動拠点を閉鎖する方針を打ち出し、国連が懸念を強めている。

露側は国内の人権状況の改善を理由にしているが、国連は実態と違うと主張。政府に批判的な人権分野の非政府組織(NGO)などへの圧力を強めるロシアが、国連機関の活動にも制限を加え始めた格好だ。
 
OHCHRは重大な人権侵害事案に対し、政府や他の国連機関と連携して調査を実施し、是正を勧告する機関。旧ソ連地域を含む世界各地に拠点を持ち、ロシアでは2008年から本格的な活動を開始。大学や政府機関と連携し人権意識の啓蒙活動を行ったり、人権侵害が懸念される法律の是正勧告などを行ってきた。
 
しかしロシアのボロダフキン・ジュネーブ国際機関政府代表部大使は3月、OHCHRによるロシアの人権機関への支援はすでに十分に行われたとし、その拠点を閉鎖する方針を表明。

ロシアには「人権アドバイザー」と呼ばれるOHCHRの担当官が常駐しているが、ボロダフキン氏は「国連安全保障理事会の常任理事国で、このような国連の役人がいるのはロシアだけだ」とも述べ、ロシアの人権問題に対する国連の取り組みに不満をにじませた。
 
ジュネーブのOHCHR筋は産経新聞の取材に対し、「ロシアではまだ多くのなすべき仕事が残っている」と指摘し、露側の見解に疑問を示す一方、当該国政府の政治的な判断で拠点が閉鎖されることは極めてまれだとの見方を示した。
 
同筋は今回の事態が、人権擁護活動などに携わり、政府に批判的なNGOへの締め付けを強化する露当局の動きと「当然、一致している」と見ている。

ロシアでは近年、国外から援助を受け、「政治活動」に携わるNGOをスパイと同義の「外国の代理人」とする法律や、外国のNGOの活動を禁止できる法律が相次ぎ発効し、NGOの活動が極めて困難になっている。

OHCHR自身もこれまで、露当局による集会やインターネット上の表現の自由の規制などの動きに強い反対を表明してきた。
 
難民支援などで国際的に知られるロシアの人権活動家、スベトラーナ・ガヌシキナさんは、政府によるOHCHR拠点の閉鎖方針について「誰からも(人権問題で)指図を受けたくないという露政府の意思の表れだ」と指摘した。【4月17日 産経】
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中国もロシア同様、海外とつながるNGOが中国の体制を脅かすという政権の警戒感を強く抱いており、全国人民代表大会(全人代)常務委員会は4月28日、「海外NGO国内活動管理法」を成立させています。

一方、ロシアの有力治安機関、連邦捜査委員会のバストルイキン委員長が、中国にならったインターネット規制の導入すべしとの考えを発表しています。

“第3次プーチン政権は比較的自由な言論が許容されていたネットの統制に力を入れており、ネット上の発言を「過激主義」の取り締まり対象とする新法を施行するなどしている。
軍と特務機関、大手通信会社は14年7月、ロシアのネットを外界から遮断する演習を行っており、「有事」のネット隔離も視野にある。
今年9月の下院選や18年春の大統領選に向け、政権がいっそうの言論統制を狙っているとの見方は強い。”【4月25日 産経】

ロシアと中国、国内統制強化で似たような国情にあるようです。

なお、中国、ロシア両国は29日、弾道ミサイル発射を繰り返し新たな核実験強行への動きなども見せる北朝鮮への対抗策としてアメリカ、韓国が検討する高高度迎撃ミサイルシステム「THAAD(サード)」の韓国配備への懸念を改めて表明しています。

「THAAD(サード)」の韓国配備は、中国とロシアの戦略的な安全保障に直接的な脅威となるものであり、朝鮮半島の核問題の解決に寄与せず、既に高度の緊張関係にある現状をさらに煽り、地域の戦略バランスを崩すとも主張しています。【4月30日 時事より】
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