
(農園主の妻 襲撃者によって地面に投げつけられ肩を破損 火のついた小枝を口に置かれたとか・・・TIA(This is Africa) “flickr”より By Sokwanele - Zimbabwe
http://www.flickr.com/photos/sokwanele/2625296770/)
【初の直接会談】
大統領選挙後の“混乱”で国際的批判が集中しているジンバブエのムガベ大統領ですが、ようやく事態収拾に向けて重い腰をあげたような報道がされています。
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大統領選挙の結果をめぐって政治的混乱が続いていたジンバブエで21日、ムガベ大統領と野党・民主変革運動(MDC)のツァンギライ議長が事態打開に向けて本格的な協議を開始することで合意した。
首都ハラレで行われた式典では、長らく仲介役を務めてきた南アフリカのムベキ大統領が見守る中、ムガベ大統領とツァンギライ氏が握手を交わし、ジンバブエは歴史上最もつらい時期を経験したが、今は協力していく時だと語った。
ツァンギライ氏はまた、今は「苦々しい思い」を忘れ、過去のライバルと協力して事態の解決を目指していくと語った。両者が交わした覚書きはこれまでのところ公表されていないが、ムベキ大統領によると、すべての当事者は事態の早急な解決を図りたい構えだという。
一方、ムガベ大統領は「憲法はさまざまな点で改正すべきだということで意見が一致した」と語り、ツァンギライ氏との間で憲法改正でも合意したと発言した。この発言を受け、大統領選に端を発した暴動解決のために首相職を新設して解決を図ったケニアと同様の合意がなされたのではないかとの憶測が流れている。
ムガベ大統領とツァンギライ氏の直接会談は、1999年にツァンギライ氏がMDCを結成させて以来初めて。【7月22日 AFP】
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“今は協力していく時だと語った。”の主語がはっきりしませんが、南アのムベキ大統領でしょうか?
ムガベ大統領が語ったのなら意味がありますが・・・。
“両者が交わした覚書き”については、下記報道があります。
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文書は暴力を非難し「新政府」の樹立や「再建への決意」をうたうものの、大統領派による野党弾圧の反省や、与野党和解への具体策はなく、今後の協議の難航が予想される。
合意文書はA4判5枚。「対立に終止符を打ち、暴力や腐敗のない自由な社会の再建への決意」が語られ「新政府」の樹立がうたわれている。また、「暴力を回避」して「市民生活の安全を保証」するため、声明を早急に発表するとしている。
しかし、大統領派による野党弾圧への検証や、拘束した野党支持者の解放などについては触れていない。また白人農場主の農地を強制収用し、黒人に分配する政策が欧米から非難されているが、改善への具体的な言及はなかった。さらに「外国の干渉や制裁」が議題としてあげられるなど、欧米に対して挑戦的な大統領の姿勢は維持されている。【7月23日 毎日】
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【欧州系企業の現地化】
遅まきながら実質的な仲介にたった南アのムベキ大統領は、首相ポストを新設してツァンギライ議長をこれにあて、権力分担をはかる「ケニア方式」を考えているようですが、ムガベ大統領が応じるか・・・難しそうな感じもします。
ムガベ大統領による選挙戦“混乱”の根底には、白人農園の強制収用等による生産低下、年率220万%に及ぶハイパーインフレーション進行による経済崩壊などの長年の“失政”がありますが、政権側は今のところ政策を改めることは考えていないようです。
*****欧州系企業を接収か=外国の圧力に反発、現地化促進目指す****
ジンバブエ政府は20日、接収の可能性がある対象として欧州系企業数百社を会計検査していると発表した。ムガベ政権に対する外国の圧力に反発する動きと伝えられている。
ジンバブエではこのほど、企業の地元所有権を強化して現地化を目指す法律が発効した。国営メディアによれば、大国によるムガベ政権への国連制裁の呼び掛けに賛同する企業は接収されるという。
サンデー・ニュース紙は政府筋の話として、欧米の反発が高まる中で、政府は友好国の企業にこれら企業を引き受けるよう要請する方針だとし、友好的とみなされる国、とりわけ極東の国の投資家がジンバブエの経済安定化プロセスを促進するため列挙されるだろうと報じた。【7月21日 時事】
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ますます経済は混乱しそうです。
“(友好国とみなされる)極東の国の投資家”とは中国のことなのでしょうが、中国もそこまで欧米各国と事を構えるようなことをするでしょうか?。
【白人農園への襲撃】
白人農園に対する襲撃の実態を伝える記事がありました。
*****「白人はジンバブエを出ろ」…3度目の襲撃****
午後3時半。銃を持った退役軍人ら約50人が「土地を明け渡せ。白人はジンバブエに住むべきでない」などと口走りながら、農場内の自宅に押し入った。
(農場主の)キャンベルさんは激しく殴打された。殴られた(妻の)アンジェラさんは両手を重ね、助けを懇願したが、結婚指輪が奪われ、銃身が振り下ろされた。左腕の骨を2カ所折られた。「殺してやる」。(娘婿の)フリースさんも銃身で殴られ、左頭部から顔面にかけ長さ約15センチの深い傷を負った。時折、男たちは壁に発砲した。
キャンベルさんら白人農場主約80人は、暴力や農場からの強制退去など、これまで受けた230件以上の人権侵害を「南部アフリカ開発共同体」(SADC)に確認するよう求める文書を提出していた。武装集団が要求したのは、この文書の取り下げだ。男たちは持参した書面へのサインを要求したが、キャンベルさんは拒否。男は指2本の骨をへし折った。銃を突き付けられアンジェラさんはやむを得ずサインした。
その後、3人は約15キロ離れた金鉱山で、ため池に突き落とされた。「祈るしかなかった。恐怖と寒さで震えが止まらなかった」
池から引き上げられた後、南西約50キロの町で路上に放り出された。3人を救うため追跡したキャンベルさんの息子の車には約40発の銃弾が浴びせられた。
暴行中、携帯電話や財布が奪われた。自宅からは家財が持ち去られ、飼い犬も撃ち殺された。解放されたのは8時間以上がたった午後11時45分ごろだった。
一家の農場は1713年から続く。襲われたのは00年、03年に続き3度目だ。ハラレ市内で入院中の同夫妻は「ジンバブエの農業生産に長く貢献してきたのになぜなのか。悲劇だ」と話す。
手術を終えたばかりで右目が充血し、腫れもひいていないフリースさんは語る。「それでもジンバブエは人も気候も土地もすばらしい。人種も民族もなく共に農業を営みたい。平和な国になるよう祈り続けるだけだ」
ジンバブエでは、00年にムガベ大統領が「白人からの完全な独立」を宣言。白人農場主所有の農場を強制収用し、黒人農家などに分配する政策を打ち出した。以後、白人の農場が退役軍人らに襲われ、奪われる事件が続発。今回の大統領選が始まった3月以降、襲撃は激化した。かつて約4600人いた白人農場主は今、400人足らずに減っている。【7月24日 毎日】
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いまだ400人残っているのが不思議なくらいですが、こうした実力行使による白人農場の“強制収用”によって経済失政に対する国民の不満をそらす狙いがあるようです。
しかし、生産ノウハウを持たない黒人農家への無計画な分配は、結果的に生産激減を招いているとも言われています。
【これまでの政策を変えるのか?】
確かに、白人農園を否定する、これを収用して黒人のものへ転換する考え方はあろうかと思います。
“人種も民族もなく共に農業を営みたい。平和な国になるよう祈り続けるだけだ”と白人農場主は言っていますが、これまで植民地時代、そして悪名高き人種差別社会のローデシア時代をとおして、膨大な利益を得てきたのは一握りの白人達であったのは事実ですから、その清算を黒人側が要求する考え方は当然にあると思います。
“今まで同様に平和に農場が営める”と考えるのは、今まで収奪された側からすれば手前勝手とも思われます。
ジンバブエ・ムガベ大統領は、政権当初“白人農園の市場価格での買い取り”という穏便な方法を選択して、“脱アパルトヘイト”のモデルケースとも目されましたが、諸般の経緯で資金的に破綻、宗主国のイギリスとの対立が激化し、近年の“襲撃”による強制収用に至っています。
日本の農地改革を含め、世の中には“革命”的な社会変革もありえますので、一概に強制収用を否定できませんが、少なくとも上記記事のような“襲撃”という剥き出しの暴力を是認したくはありません。
(法律に基づいて粛々と進められる“拘束”のような“暴力”ならいいのか?という問題にはなりますが・・・)
また、結果として生産現場が破壊されて国民経済が疲弊しており、ジンバブエの場合、政策的な失敗であるとも言えます。
こうした状況を見ると、これまでの政治の総括が必要であり、単にふたりを組み合わせて「ケニア方式」で・・・というのはやはり難しいようにも思えます。
仮にスタートしても無理がすぐに出るのでは。
それしか途がなければ止むを得ませんが。