孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

囁かれるイラン核施設爆撃、ホルムズ海峡有事

2008-07-14 14:48:11 | 国際情勢

(イラン発表の写真に合成があったそうですが、この写真ももちろん合成です。
“flickr”より By cowicide
http://www.flickr.com/photos/49403380@N00/2658316482/)

【オバマ就任前か?】
イスラエルによるイラン核施設攻撃の噂が、既成事実であるかのように囁かれています。
イスラエルのイラン爆撃を想定したと言われる大規模軍事演習、9日、10日に行われたイスラエルの動きに対抗するイランのミサイル発射実験(イスラエルも射程圏内に含む中距離弾道ミサイル「シャハブ3」も含む)。
時期については、アメリカでオバマ候補が大統領に就任する前に、つまり、アメリカの支援が見込める共和党主導の体制の間に行うのでは・・・との憶測も。

「軍事攻撃の深刻な脅威と3回の制裁にもかかわらず、イランが核拡散防止条約(NPT)の規制の下での核エネルギー生産の合法的権利と考えるレベルを撤回するつもりがないのは明らかだ。したがって、行動を起こす側であり、ブッシュ大統領の任期も間もなく終了する今、米国政府とイスラエル政府が、中東の伝統的な影の実力者サウジアラビアに代わりイランが中東の新たなドラマの監督の席に座るのを、何もしないで見ているはずはない」
(ドバイの英字新聞「カリージ・タイムズ」紙)

【イスラエル シリアへのゴラン高原返還交渉】
イスラエルは最近イラン周辺国・組織との関係改善に動いているようにも思えますが、これも“イラン攻撃に踏み切った際の戦線拡大防止のためとか、あるいは、イラン攻撃のときの上空通過を容認させるため云々と言われています。

先ず、その“上空通過”とも、また、ヒズボラやハマスとの関係にも関連するシリア。
昨年9月にはシリア自身の核施設をイスラエルが空爆したばかりですが、長年のシリアの要求であるゴラン高原返還に向けた交渉が、トルコを仲介として進められてきています。

地中海周辺諸国とEU加盟国の43か国は13日、パリで初めての首脳会議を開き、地中海連合を正式に発足させました。
この地中海連合には、アラブ諸国やイスラエルも参加しており、中東和平へ向けた弾みとなることが期待されています。
これまで国際舞台に姿を現わすことが少なかったシリアのアサド大統領も出席し、イスラエルのオルメルト首相と同席しました。

何かと自己主張の強いフランスですが、さすがに外交上の存在感は“姿が見えない”日本の比ではありません。
サルコジ大統領は12日、シリアとレバノンが双方の首都に大使館を設置し、独立以来初めて正式に外交関係を樹立することで合意したと発表、会議の成果が一定に示されています。

上記ドバイ「カリージ・タイムズ」紙は6月中旬に“オルメルトとシリアのバッシャール・アル・アサド大統領が来月パリで直接顔を合わせるときに多くが明らかになるものと思われる。”と書いていましたが、そのパリでオルメルト・イスラエル首相が、アサド・シリア大統領と会談したトルコのエルドアン首相と会う形で、間接的な交渉を行ったことが報道されています。
エルドアン首相はアサド大統領との会談後、「われわれの期待は大きい。断固とした決意があり、取り組みを続ける構えだ」と記者団に語っています。

もっとも、アサド大統領は、イスラエルとシリアの和平合意調印には「双方が真剣な直接交渉を行った場合、半年から最高で2年かかる」と語り、慎重な姿勢を見せています。

なお、「イスラエルが、1967年の悪名高い6日間戦争以来避けてきた問題である、占領した(ゴラン)高原を返還する意思があるということは、その思惑がどれほど真剣であるかを物語っている」とは、上記ドバイ「カリージ・タイムズ」の記事です。

【パレスチナ、レバノンでの動き】
地中海連合首脳会議のパリでは12日、オルメルト・イスラエル首相とアッバス・パレスチナ自治政府議長、そしてサルコジ仏大統領の3者会談も開かれました。
オルメルト首相は記者会見で、パレスチナ和平交渉の現状を「かつてないほど合意達成の可能性が近づいている」と強調。アッバス議長に対し、イスラエルの刑務所に収監するパレスチナ人囚人のさらなる釈放を約束したそうです。

ガザでは10日、境界フェンスを越えてイスラエルに侵入しようとしたパレスチナ人男性をイスラエル軍が射殺する事件がありました。
イスラエル軍によると、イスラエル兵が警告射撃をしたが、男性は無視してフェンスを越えたとのことで、武器は携帯していませんでした。
(時期も、事件の内容も北朝鮮の金剛山・韓国女性射殺事件によく似ています。)
イスラエル放送によると、男性死亡後、ガザからイスラエル領内に複数のロケット弾が撃ち込まれたそうですが、大規模な衝突に至ったとの報道は見聞きしていません。

イラン爆撃を控えての関係修復の意図があるのかどうかは別として、国際世論的にもガザの状況を改善したいイスラエル、経済封鎖に対するガザ住民不満をなんと緩和したいハマス、双方の思惑があって神経戦が続いているようです。

また、イスラエル政府は6月29日、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラが06年7月に拉致したイスラエル兵2人と、イスラエルが拘束中のレバノン人ゲリラ5人の身柄を交換することを政府決定しましたが、このヒズボラ捕虜を今月16日に釈放することが13日発表されました。

【ホルムズ海峡封鎖】
総じて、イスラエルのシリア、パレスチナ、レバノンでの動きが感じられますが、イラン核施設をにらんだ動きなのかどうか?
正確なところは誰も知らないし、イスラエル・イランの当事者も“状況を見ながら・・・”といったところでしょう。

日本にとっては、核施設空爆やミサイル攻撃について“勝手にすれば”と言いたいところなのですが、イラン革命防衛隊の司令官は先月下旬、“イランが攻撃を受ければペルシャ湾とホルムズ海峡を支配下に置く”と発言しています。
10日のミサイル実験でも、ペルシャ湾で、革命防衛隊が「世界最速の水中ミサイル」と強調する「フート(クジラ)」を含むミサイルの試射を実施したと伝えられています。

もし、そういった“ホルムズ海峡有事”の事態となれば、すでに高騰している原油価格に壊滅的な打撃を与え、中東原油に多くを頼る日本経済・社会に激震をもたらすことになります。
日常生活が恐ろしく脆弱な基盤の上に成り立っていること、自分達の力が及ばないところで危機が進行していることを改めて感じさせる話題です。
日本政府も、せめてアメリカには釘をさしておいてもらいたいところですが。

コメント
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