孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン  イラクを上回る犠牲者、軋むパキスタンとの関係

2008-07-08 14:18:15 | 国際情勢

(カブール郊外 闘鶏を楽しむアフガンの人々 タリバン支配のもとでは闘鶏も禁じられていました。 “flickr”より By Afghan LORDّ
http://www.flickr.com/photos/sohrab_kabuli/2314063143/)

【イラクを上回る犠牲者数】
アフガニスタンでの6月の米兵死者数が28人となり、01年10月の対テロ戦争開始以来、最悪の数字を記録しました。
また、米軍と北大西洋条約機構(NATO)軍の合計も過去最悪の46人を記録。2カ月連続でイラクでの死者数を上回っています。
いろんな問題・火種を抱えつつも、少なくとも表面的には落ち着いているイラクに対し、アフガニスタンでは旧支配勢力タリバンの攻撃が激化し、治安悪化が深刻化しています。

【増加する民間人被害、離反する民心】
犠牲者が増えているのは兵士だけでなく、民間人の犠牲者も増加しています。
今年1月から6月までに米軍空爆や武装勢力の自爆攻撃などに巻き込まれて死亡した民間人は、過去最悪だった前年同期を6割超上回る698人でした。
うち255人が米軍空爆などが原因で、残る443人がタリバンの自爆攻撃などが原因だそうです。

今月4日には、東部ヌリスタン州で米軍のヘリコプターが走行中の車両2台を空爆、女性や子どもを含む民間人22人が死亡したと州当局者が明らかにしました。
しかし、米軍当局者は、国際治安支援部隊(ISAF)の施設が砲撃された後、その場にいた車両を空爆したと主張し、車に乗っていたのは武装勢力だとしています。
カルザイ大統領は6日、事件の真相を調査するよう情報当局に命じました。

その当日、また事件が発生。
東部ナンガルハル州で6日、結婚式出席のため集まっていた民間人22人が米軍の空爆で死亡したと、州当局者が明らかにしました。死亡者のうち19人が女性と子どもと言われています。
一方、多国籍軍は空爆で複数の戦闘員を殺害したと発表しています。

民間人の犠牲者が出たとの情報が後に事実でないことが判明したりする事例も起きていますので、今回の2件も真相はよくわかりません。
よくわかりませんが、“米軍の攻撃で民間人が犠牲になっている”という意識が住民に定着しており、それが米軍等に対する地元アフガニスタン人の反発を高め、ひいてはタリバンへの参加者を大量に供給する背景になっているように見えます。
米軍、ISAFの攻撃で大量の被害を出しながら、タリバン勢力は減るどころか急増しています。

【米軍の対応】
これに対し、米海兵隊は3日、アフガニスタンに駐留する隊員2200人の派遣期限を当初予定していた7か月から1か月延長し、11月までとすることを発表しました。
また、米政府は11月の次期大統領選の結果にかかわらず、2009年にイラク駐留米軍の規模を大幅削減する方針だだそうで、イラクからアフガニスタンへさらに多くの部隊を移転させるべきだとの声が高まっています。
ただ、ミューレン米軍統合参謀本部議長は、“アフガニスタンへの派兵を増やしたい意向はあるものの、イラク駐留部隊を拙速に移動させることによってイラクにおける成果を犠牲にはしたくない”と語っています。

タリバンをカブールから追い出す軍事作戦と、その後の統治作戦は全くの別ものでしょう。
カブール侵攻はアメリカの軍事力を持ってすれば容易でしたが、統治作戦を遂行するためには地元を味方にすることが絶対必要です。
無差別な住民殺戮が許されるような時代・環境なら別ですが。
現代では、民間人犠牲は国際的に立場を悪化させます。
国際世論・ジャーナリズムもアフガニスタンでの民間人犠牲に注目しており、かつてセルビアが“悪者”イメージを押し付けられたように、米軍、ISAFは情報戦でも苦戦しているように見えます。

【軋むパキスタンとの関係】
隣国パキスタンでギラニ政権がパキスタン国内でのテロ圧力を抑えるため北西部イスラム武装勢力との対話路線を導入して以来、アフガニスタンでの自爆テロの発生件数は増加し、被害規模も拡大しました。
パキスタン領内でのパキスタン政府への対応が必要でなくなった分、アフガニスタンでの活動が活発化したことが窺われ、アフガニスタンとパキスタンの対立が鋭くなりました。

その後、パキスタン・ギラニ政権の対武装組織宥和策は破綻し、パキスタン政府軍が武力討伐を再開していますので、パキスタンとの関係も落ち着くか・・・とも思われましたが、いろいろとまだあるようです。

首都カブール市内中心部で7日、爆発物を満載した車がインド大使館入り口の門に衝突して爆発、41人が死亡。
アフガニスタンでタリバンの武装闘争が始まって以来、死傷者数は最大規模となりました。
このテロに関し、アフガニスタンのカルザイ政権は「事件の背後に外国の工作活動がある」とパキスタン軍情報機関の関与を暗に指摘しています。

“パキスタン軍情報機関”と言えば、パキスタン三軍統合情報部(ISI)のことになります。
パキスタンとは元来宿敵の関係にあるインドマスコミでは、ISIの名を挙げて騒ぎになっているとか。

“パキスタンはインドの侵攻を防ぐため、後背地のアフガンに親パキスタン政権を作ることを戦略目標としてきた。このため01年の米同時多発テロまではタリバン政権を支援し、ISIはタリバン発足にも関与したとされている。
 一方のインドは、パキスタンを挟み撃ちにしておくため、タリバン政権と対立した軍閥集団「北部同盟」を支援。北部同盟が中心となったカルザイ政権を支援している。アフガン政府の今回のパキスタン非難には、こうした確執を踏まえ、パキスタン側に責任を押し付けようという思惑も透けて見える。”【7月8日 毎日】

アフガニスタン情報機関は、4月に起きたカルザイ大統領暗殺未遂事件でもISIが関与していたと発表しています。
このあたりになると全くの藪の中です。


コメント
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