孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

スーダン  最近の南部情勢は? 軍事費を支える日本の石油輸入

2008-07-01 17:58:52 | 国際情勢

(北部の“主人”により虐待を受けていた南部の“奴隷”女性 国際人権団体によって解放されたそうです。 “flickr”より By creepysleepy
http://www.flickr.com/photos/creepysleepy/2352130221/)

【自衛官派遣】
福田首相は来日した国連の潘基文事務総長と会談し、スーダン南部に展開する国連平和維持活動(PKO)の国連スーダン派遣団(UNMIS)司令部へ自衛官を派遣する方針を伝えました。
北海道洞爺湖サミット主要議題となっているアフリカ支援に関して、議長国として積極姿勢を示すのが狙いと報じられています。

首都ハルツームに置かれたUNMISには、69カ国の部隊、警察、軍事監視要員計9924人が参加しています。政府は自衛官2人程度を派遣する方向で、派遣自衛官は各国間の調整などに当たります。
スーダンへの派遣をめぐって政府は道路の復旧や地雷除去などを行う陸自部隊の派遣も検討しましたが、当面は司令部要員の派遣だけにとどめるようです。

一方で、ガーナ、ケニア、エジプト3カ国にあるPKOセンターに自衛官を講師として初めて派遣することも検討されています。
なお、スーダンと並行して検討されたアフガニスタンへの陸上自衛隊派遣については、高村外相は24日の会見で、国内の政治情勢と照らし合わせると困難だとの見解を表明しました。
根拠法成立の目処がたたないことがあるようです。危険すぎるということもあるでしょう。

【PKO参加】
PKO活動への自衛隊参加についてはいろんな立場があるところですが、個人的には最近、国内に閉じこもって平和をひとり楽しむのではなく、世界で協力できる分野・地域があれば積極的に協力する方向がいいのでは・・・と思うことが多くなっています。
もちろん、誰が何のためにおこした紛争なのかということも問題になりますが。

ただ、紛争が収まりきっていない地域に出る場合、衝突が発生して地元民に危害がせまり、保護を求めてきた場合どうするのか・・・という問題についての決断が必要かとも思います。
隊員の安全確保を優先し見捨てて撤収するのか、玉砕覚悟で保護・応戦するのか。
95年、ボスニア・ヘルツェゴビナの街スレブレニツァでの虐殺事件でオランダ軍が遭遇したような場面もありえます。(兵力で圧倒的に勝るセルビア人勢力の要求に応じて、オランダ軍は保護下の地元民を引き渡しました。引き渡された男性8000人がセルビア人に虐殺されたとも言われています。)
そのためには、持ち込む装備は・・・、交戦規則は・・・と話は厄介になってきます。

【スーダン南部の状況】
西部ダルフールやチャドとの関係は相変わらず紛争の真っ只中ですが、スーダンの南北間で行われた内戦については、2005年7月9日、北部現政権のバシールを大統領、南部反政府勢力SPLAのガラン最高司令官(直後に事故死)を第一副大統領とする暫定政府が発足しました。
暫定政府が6年間の統治を行なったうえで南部で住民投票を実施し、北部のイスラム教徒系政権と南部政府の連邦を形成するか、南部が独立するかを決めることになっていますが、石油利権が絡んでいますので・・・。

スーダン南部の状態が現在落ち着いているのかどうなのか、よくわかりません。
スーダン問題担当の国連事務総長特別代表アシュラフ・カジ氏は5月7日、「時々、衝突や犯罪はあるが、改善に向かっている」と話しています。
一方、スーダン南部の政治組織、スーダン人民解放運動(SPLAの政治組織)のナンバー2、パガン・アムム氏は同じ5月26日、「スーダンは内戦の瀬戸際にある」と警告、国連の平和維持の役割を拡大するよう求めています。
昨年末から、南北境界にあって石油埋蔵地でもあり、また貴重な牧草地でもあるアビエイで衝突が起こり、5月20日の戦闘では、SPLAは戦車と重火器で北部政府軍のアビエイの宿営を攻撃し10人が死亡し町の中心部が焼失するという事態も生じています。

【アビエイでの衝突】
このアビエイでの衝突についてのリポートがありました。

“国連は、この戦闘で、現在暫定的に南北の境界線と定められているキイル川を渡り約5万の人々が南へ逃れていると予測している。
避難民の1人、ニャンデン・アコトさんは4人の子供を連れて着のみ着のままで逃げてきたが、子供は皆餓えており、もっと食糧が必要だと。・・・彼女が逃げ込んで来た市場は、多数の兵士や数百人の難民で溢れかえっている。道路の反対側の木の下にはロケット砲ランチャーやカモフラージュのために泥を塗られた4輪駆動車が並んでいる。アコトさんを含む数千人の避難民の生活および和平取り決めの存続は、今後数週間の動きにかかっている。“

“南北の緊張と相互不信は、05年の包括和平合意後も続いた。両者は、主要合意項目を守っていないと互いに相手を責め、南部閣僚は10月に、南部からの政府部隊撤退および石油収入の分配透明化の約束不履行、またアビエイの最終取扱いを不満として連合政府を脱退。それ以来、南部軍と北部民兵の間で衝突が続いており、南部のキイル大統領がこれをハルツーム政府の扇動としたことから、関係は更に悪化している。”【6月30日 IPS 現地報告は6月23日】

「ああ、やっぱり南部も危ないのかね・・・」と思ったのですが、中村公政氏からこの記事に削除を求める厳しい反論がありました。
***デマに近い古いニュース*****
アビェイについては、ロードマップに南北スーダン指導者が署名し、国際調停に委ねることがすでに決まっている。それ以降、特別な南北情勢不安はなく、来年2009年の選挙法への合意や、兵員の復員に関するプログラムなど、CPA(包括和平合意)の履行は、少なからず進行している。
このような情報を隠して危機を煽るやり口はニュースとして作法を欠いている。できるならば削除願いたい。
*******

中村氏はダルフールの人々の平和と保護を求める“ジャパニーズ・フォー・ダルフール”を主宰されている方のようです。(http://japanesefordarfur.org/index.php
スーダンの現状は・・・わかりません。

【06年 日本が最大の石油輸入国】
その“ジャパニーズ・フォー・ダルフール”のホームページに掲載された声明ですが、「へーえ、そうだったの・・・」と思いました。

****共同声明: ジャパニーズ・フォー・ダルフールは紛争国スーダン石油輸入の停止を求める(抜粋)****
日本は中国と並びスーダン原油の最大の輸入国である。1999年から急増した石油収益はスーダン予算の約60%を占めるといわれる。その予算における軍事費の割合は非常に高く、2004年の軍事費は1997年の3倍となった。
石油に依存した軍事費が、南北スーダン内戦と共に、世界最大の人道危機を招いた進行中のダルフール紛争に投じられた。2004年スーダンに対する石油部門への制裁をも考慮した安保理決議や欧米諸国の経済制裁にもかかわらず、日本は段階的に輸入を増やし、ついに2006年中国を抜き世界最大の輸入国となった。
日本はスーダン石油輸入停止への努力に取り組むと共に、ダルフールの和平にリーダーシップを発揮しなければならない。
日本国民の光熱費が、結果的にダルフールにおける人々の苦しみに使われてきた。日本がどれだけ人道援助をダルフールの民間人のために提供したとしても、石油の購入代金が政府軍と同盟民兵ジャンジャウィードを武装する資金に使われることで効果は相殺される。
日本政府は、世界のどの国ももはや黙ってはおらず、紛争を直ちに終結しなければないというメッセージを送らなければならない」。
***********************
(全文についてはhttp://japanesefordarfur.org/jfd22Feb2008.pdf

なお、上記声明によれば、関西電力と九州電力の2社は、大量殺人に資金を提供するため石油収益が使用されることに関して懸念を示してスーダン石油輸入を中止すると発表しましたが、他の7つの地域電力会社スーダン石油購入を続けると発表したそうです。
また、07年日本のスーダン石油輸入量は前年より若干減少しましたが、中国は倍増し、07年については、スーダン石油最大の輸入国は日本ではなく中国になったそうです。

【日本の選択】
スーダンへの支援・経済関係では常に中国が槍玉にあがります。
もちろんそれはそれなりの関係があってのことですが、なんのことはない、日本もその意味では“目くそ、鼻くそ”の類だったようです。

日本人が支払う石油代金でスーダンは武器を購入、ダルフールで使用する・・・ということで、PKO云々以前に考えるべき問題です。
もちろん日本も石油はのどから手が出るほど欲しいのは言うまでもないことです。
日本が購入しなければその分は中国など他国が購入するだけ・・・それもそうでしょう。
しかし、だからと言って日本の石油購入で購われた武器がダルフールで使用されることを正当化することにはなりません。

世の中、“やせ我慢”しても筋を通すべきこともあります。
もっと言うなら、いずれにしても石油産出国は紛争地域が多い訳で供給も不安定ですし、スーダンのような問題も伴います。
そのことや環境問題を正面から捉えて、代替エネルギーの利用促進に国家の命運をかけるような真剣さで取り組むべきでしょう。

そのうえで国民一人ひとりに“汚れた、環境に負担がきついエネルギーではあるが、これまでどおり安くて便利な生活を求めるのか”、“多少、高くて制約は増えても、エネルギーの切り替えを図るのか”、問いかけることが求められます。
それで国民が“今のままでいい、安くて便利な生活がいい、他国の事情のために自分達の生活を犠牲にする必要はない”と判断するのであれば・・・。
そのときは、少なくとも他国の批判などは一切やめて、海外を旅行するときは隅っこをそっと歩くような、そんなところでしょう。


コメント
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