孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

コロンビア  ベタンクールさん等を無事救出、6年ぶり

2008-07-03 13:29:23 | 世相

(背景の大きく引きのばれたベタンクールさんの写真は拘束中に撮影されたもので、健康状態が案じられていましたが、今回無事に救出され元気そうです。手前に掲げられた小さな写真も、FARCに拘束されている人々の一部です。“flickr”より By h de c http://www.flickr.com/photos/h_de_c/2317798964/)

【腐敗・汚職に立ち向かう“マダム・コロンビア”】
武装組織による誘拐が世界中で一番多いのが南米、特にコロンビア。そんなコロンビアの誘拐人質でも特に象徴的な存在が、元大統領候補のフランス系コロンビア人女性政治家イングリッド・ベタンクールさん(46歳)。
そのベタンクールさんが解放されたというニュースが今朝報じられました。

彼女の経歴等については3月29日「ベタンクール、FARCに拘束され6年」を参照ください。
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080329
一言で言えば、恵まれた家系、フランス人との結婚などちょっと庶民生活からは浮いた感じもありますが、政治の腐敗・汚職の一掃に頑なに取り組んだ政治家です。
コロンビア革命軍(FARC)に誘拐されたのが2002年2月ですから、すでに6年以上が経過しています。

フランス国籍も持っていることもあって、そのクリーンなイメージの政治姿勢からフランスなど欧米社会での評価が高く、“コロンビアのジャンヌ・ダルク”あるいは“マダム・コロンビア”と称されることも。
フランス・サルコジ大統領もこれまでその救出に動いたこともありましたが、結果が出ていませんでした。

昨日も“欧州連合(EU)議長国となったフランスがベタンクール氏の解放問題をEUの協議事項として取り上げる意向であることを明らかにした。FARCとの取引に消極的なウリベ・コロンビア政権に対し、EUの総意として、仏国籍も持つ同氏の解放交渉を促す狙いがありそうだ。
サルコジ大統領は(ベタンクールさんの夫・娘に)電話で、フランスとスイスが共同で交渉に向けた特使を派遣する意向を伝えたという。実際、特使は既にコロンビア入りしている模様だ。”との記事がありました。【7月2日 読売】

一方で、5月26日「FARC最高司令官の死で進むか人質解放」でも書いたように、相次ぐ指導者の死亡でFARCが弱体化しており、コロンビアのウリベ大統領のもとには、FARCの複数の幹部から“身柄の自由が保障されるならFARCを脱退し、ベタンクール元大統領候補ら人質を解放する”旨の提案が伝えられているとも報じられていました。
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080526

【“王手作戦”】
今回の救出も、その線かと思ったのですが、(速報段階で、FARC側の事情・背景はわかりませんが)直接的にはコロンビア軍によるハリウッド映画まがいの救出劇だったようです。
上記記事にある、フランス側からの働きかけに呼応した動きだったのでしょうか。

“救出は「王手作戦」と名づけられ、まずFARC内部に国軍スパイを仕立てた。スパイはFARC上官をだまし、3グループに分かれ拘束されていた人質15人を同国南部のジャングルに集結させた。そこへ2日朝、民間機を装った国軍の白いヘリが到着。15人を乗せ、奪還に成功した。”【7月3日 毎日】

“ベタンクール氏によると、救出作戦を行ったのは数人のコロンビア軍特殊部隊の兵士で、兵士たちはキューバ革命の英雄、エルネスト・チェ・ゲバラのTシャツを着るなど、服装も話し方も左翼ゲリラを装っていたという。
 人質たちは夜明けに移動する旨を伝えられ、救出作戦が開始された。15人が救出されたことに気づいたのは、航空機が地上を離れた際、ゲリラに変装した兵士の1人が「われわれはコロンビア軍兵士です。あなた方は解放されました」と大声でさけんだ時だったという。”【7月3日 AFP】
随分鮮やかに成功したものです。

【かなり元気そう】
“B型肝炎などに感染し、重篤な状態”と健康悪化がこれまで報じられており、4月2日にはフランスはスイス、スペインとともに、ベタンクールさんの治療のため首都ボゴタに共同医療チームを派遣しましたが、FARC側の同意が得られず引き返すということもありました。
救出後、首都ボゴタの空軍基地に到着したときの様子が動画で紹介されていますが、しっかりした足取りで随分元気そうです。

今回の救出では、彼女のほか、米国人3人(03年から拘束)、コロンビア国軍兵士11人が解放されたそうです。
今後いろんな情報が伝えられると思いますが、まずは無事の救出、しかも6年ぶり、喜ばしい限りです。
なお、FARCは依然として25人前後の兵士・警官らを政府との交渉のために拘束。また、身代金目的で約700人の民間人を人質にしているとされています。


コメント
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